ナビゲーション

ナビゲーションへ

グローバルメニュー

スイス銀行に溢れる「汚い資金」はどこへ?

旧ザイールの独裁者、故モブツ・セセ・セコ元大統領がスイス銀行に貯めた不正資金は未解決のままだ

(Keystone)

最新のボンド映画や小説『ダ・ビンチ・コード』では不正資産が埋まっているのは常にスイス銀行だ。そんなレッテルをはられるのは「不当だ」と反発するのはスイス外務省の国際公共法のポール・セガ所長だ。

スイスは近年、「16億ドルの不正資金を各国政府に返還し、不正資金と闘っている」とセガ所長。「不正資金問題との戦いではモデル国でもある」と主張する。

 スイスでは銀行に口座を開く顧客全員の身元を確認し、資産の出所を確認する新しい銀行法を設け、さらに「マネーロンダリング対策局」、「マネーロンダリング通報局」を設けた。このため近年多くの不正資金の早期発見、凍結に至ることができた。ナイジェリアのサニ・アバチャ元大統領やフィリピンの故マルコス元大統領の不正資金に関して、スイスはそれぞれ7億ドル、6億8400万ドルを既に返還した。

マルコス事件が発端

 不正資金との戦いに関しては、1986年、フィリピンの故マルコス元大統領の失脚にさかのぼる。マルコス元大統領が横領した巨額の資金のうち、大部分がスイス銀行に預けられていたことが判明した。スイス政府は政治的な問題に発展するのを恐れ、予想されるフィリピン当局の要請を受ける以前に、この資金が国外に流れるのを防止するため、即座に凍結に踏み切った。

 マルコス事件の法的手続きがあまりに長引いたことから、司法分野による国家間の協力法が改正され、手続きが簡略化された。「マルコス事件はナイジェリアのサニ・アバチャ元大統領の盗んだお金を返すのに役立ったといえます」とセガ所長。例えば、アバチャ事件ではナイジェリア本国でアバチャ元大統領やその家族に対して判決が出される前に資金返還が可能になった。これはスイス法で資金の犯罪性が証明されたために可能になったという。

不正資金返還の限界

 しかし、凍結したからといって常に返還が上手くいくわけではない。ハイチ共和国のジャン・クロード・デュバリエ元大統領の不正資金が一例だ。デュバリエ元大統領が国外追放された1986年、スイスは500万ドル ( 約6億円 ) を凍結したものの、ハイチ司法当局が不正資金であるという証拠を提出できないままでいるため、今年6月3日には凍結が解除される。

 セガ所長によると「この資金の大部分がハイチの公共部門に使用されるように弁護士と協定ができていたが、デュバリエ一家は協定に同意したくないため隠れている」という。このため、期限が切れれば資金は自動的に家族に返還される運命にある。現在、デュバリエ一家は南仏のどこかで期限が切れるのを待ちながら悠々と暮らしているといわれている。

 ザイール ( 現コンゴ民主共和国 ) の故モブツ・セセ・セコ元大統領の不正資金に関しても同じだ。1997年から800万フラン ( 約7億9000万円 ) の資金が凍結されているが、2008年末には凍結が解除される。「問題は、ハイチやコンゴなど当事国の司法機構が機能しない場合、資金の不正を立証できないのです。スイスは司法国家ですから勝手に取り上げることはできません」という。

 また、返還する資金が新たな横領者の手に流れないように監査システムを設けている。スイスのNGO「アバチャ同盟」のマックス・マダー氏は「国際的な基準と比較するとアバチャで敷かれた監査システムによって資金が透明に流れるようになった」と語る。「しかし、スイスの金融システムがマネーロンダリングの楽園という事実は変わりません」とも指摘した。 

swissinfo、

キーワード

フィリピンの故フェルディナンド・マルコス元大統領は20年にわたる大統領任期中に多額の国家資産を横領したといわれている。スイス政府は2003年に6億8400万ドルをフィリピン政府に返還したがここに至るまで17年間もかかったため利子額が凍結額を上回ったという。

ナイジェリアの独裁者、サニ・アバチャ元大統領の横領した公的資金は2005年に7億ドルが返還された。

ザイール ( 現コンゴ民主共和国 ) の故モブツ・セセ・セコ元大統領のスイスにある不正資金に関しては現在、800万フラン ( 約79億円 ) が凍結されているが、未解決。

ハイチのジャン・クロード・デュバリエ元大統領のスイスにある不正資金に関しては500万ドルが凍結されており、未解決。

日本の暴力団、山口組系旧五菱会の梶山進被告の闇金融事件でスイスに凍結された6100万フラン ( 現在約60億円 ) と利子に関しては、日本に一部が返還される予定だが、現在その「返還額の分配に関して2国間で交渉中」と連邦司法局の広報官、フォルコ・ガリ氏が説明。

インフォボックス終わり

スイスと不正資金

- スイスの銀行守秘義務では銀行の顧客に関する情報を明かしてはいけないことになっている。

- しかし、マネーロンダリングなど不正な資金の疑いが掛かった場合は守秘義務が解除されるだけでなく、マネーロンダリング通報局に報告しなければならない。

- スイスは近年、16億ドル ( 約1兆9000億円 ) の独裁者などの不正資金を各国政府に返還した。

インフォボックス終わり


リンク

×