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スイスはどれくらい中立なのか?

他国が伝統的中立に別れを告げる一方、スイスは自身の特別な役割に強くこだわる。だがそのスイスもまた、伝統的中立の概念から遠ざかってしまった。そして新たな課題に直面している。

このコンテンツは 2021/04/04 08:00
Philip Schaufelberger (Illustration)

ウィーン会議(1815年)の戦勝国がスイスに永続的な中立を認めたときの取り決めはこうだった。スイスは紛争に参加せず、傭兵も提供しないが、領土内での戦争はこれ以上行わない。

20世紀、極めて狭義に形どられた中立の法則によって、自主的な中立政策が目立つようになる。中立国は中立を維持し、戦時においてもその立場を維持する――。中立国は、他国からそうみなされるような外交政策を取った。

ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、ノルウェーなど、これまで中立をうたっていた多くの欧州諸国が、軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。伝統的中立の法則に鑑みれば、許されない行為だ。

スウェーデンは冷戦終結後、中立に別れを告げ、欧州連合(EU)に加盟した。現在、スウェーデンは自らを「非同盟国」と呼ぶ。スウェーデン外務省はswissinfo.chの取材に「この政策はうまく機能し、周辺の安全と安定に寄与している」と回答している。スウェーデンにとってはもはや、NATO加盟でさえタブーではない。同外務省によると、スウェーデンは他国と協働して安全を構築している。連帯はスウェーデンの安全保障政策の土台なのだという。

スイスもまた、伝統的中立の概念から離れ、国際社会に目を向けた。スイスは2002年に国連に加盟。それ以来、スイスは国連の制裁に従わなければならなかった。

スイスは、国連安全保障理事会の軍事作戦参加は、自国の中立性と相反しないという。その理由は、安保理が最終的に求めるものは「世界平和の回復」だからだ。スイスの国連加盟が正当だとする根拠はそこにあるのだという。一方、オーストリアの国際法専門家ペーター・ヒルポルド・インスブルック大教授は「伝統的な概念での中立性は、国連加盟とほぼ相いれない。EU加盟となればなおさらだ」と話す。

スイスは安保理の非常任理事国入りを目指す。政府は、国連は非軍事同盟であり、安保理の強制措置が国家間戦争に影響を与えることはほぼないため、自国の中立性と整合性が取れるという。

元スイス閣僚・外相ミシュリン・カルミ・レ氏は自著で、非常任理事国入りが中立性と両立する理由を語っている。

ドイツ国際政治安全保障研究所の国際弁護士エリザベス・ホフベルガー・ピパン氏によると、EUや国連に加盟すれば、それと同時に中立性がある種希薄化してしまうことを、国民は時として気づいていない。

オーストリアはEUに加盟する際、憲法を改正し、伝統的に理解されている自国の中立性に反していても、共通外交・安全保障政策の枠組み上の措置を実行できる土壌を整えなければならなかった。「第2次湾岸戦争時、安保理が武力行使を承認したため、オーストリアは領空上の飛行を許可した」

オーストリアとスイスがNATOの平和のためのパートナーシップに参加していることも、ほとんど知られていない。オーストリアの中立性には基本的に相いれるという。

チューリヒ大学のステファニー・ヴァルター教授(国際関係学・政治経済学)は「スイスは明らかに中立ではなかった」と話す。「例えば冷戦時、スイスは暗黙のうちに西側に与していた。人権に関しても一定の態度表明をしている」

国民議会外務委員のイヴェッテ・エスターマン議員は、人権侵害の場合であっても、自国の態度を表明していないときにしか仲介・調停役を担うことはできないと強調する。

ヒルポルド氏によれば、中立国は21世紀において、その中立性を盾に、自国を特別扱いしてもらいたいと思っている。その理由の1つは「スイスが人道分野や紛争仲介の中で行っているように、中立性と合わせて国際社会に特別なサービスを届けている」からだ。

ヴァルター氏はまた、仲介者として行動できるのは中立国の強みだと言う。スイスはこの点で特別な役割を果たしている。「アイルランド、オーストリア、スウェーデンとは対照的に、スイスは欧州連合に加盟しないことを決定めた」。これが、スイスがより中立国だとみなされる理由の1つだという。

ヒルポルド氏も「スイスはEUに属していないため、この国は極めて特別な役割を持つ」と説明する。スイスは、個々の概念やニーズに応じ、多様な方法で中立性を形作ってきた。「国際社会はこれらの概念と、それに伴ってスイスが国際舞台で果たす特別な役割を、少なくとも暗黙のうちに受け入れている」

スイスは今、新たな課題に直面している。国家間戦争は珍しくなったが、サイバー戦争は増加した。スイスの中立性は基本的にサイバースペースにも適用される。しかし、多くの疑問はまだ明確な答えが得られていない。

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