スイスの視点を10言語で

バベルの塔 スイス

「スイス語を話しますか?」(Keystone) Keystone

4つの国語を持つ多言語国家スイス。ドイツ語とフランス語の使用は安定しているが、イタリア語とロマンシュ語は減少傾向にある。

職場では英語を話し、家庭ではもう一つの言語を…といったスイスの複雑な言語状況を分析する研究が連邦統計局から発表された。

これはベルン大学とバーゼル大学が2000年の国勢調査をもとに行った二つの研究。スイスは更なる多言語国家へ向かっているという結論のようだ。

外国人はフランス語が好き

 スイスに住む外国人の3分の2はスイスの国語の一つを「主要言語」としている。これは10年前と比べ16.7%も増えたことになる。他の言語圏から移民してきた二世の外国人ではフランス語圏への同化が最も高く(80%)、次にイタリア語圏(67%)、ドイツ語圏(60%)となる。

 この差は主に母語によることが大きい。つまり、ラテン系言語を母語とする外国人、例えばスペイン人やポルトガル人などは、フランス語やイタリア語の方がドイツ語よりも取り入れ易いからだ。

家庭ではいろんな言語

 家庭で使われる言語は増え続けている。スイス国語でない言語を話す人口は13%から16%になった。昔はポルトガル語やスペイン語が一位を占めていたが、現在ではセルビア語やアルバニア語が最も多い。

仕事は英語

 職場での英語の使用は15.9%から21.7%に増えた。英語使用度はドイツ語圏ではフランス語を追い越し、フランス語圏ではドイツ語を抜いた。 

 しかし、バーゼル大学のジョルジュ・リュディ教授によると英語はスイス国語と張り合っている訳ではなく、さらに加わっていると指摘する。

イタリア語とロマンシュ語は減少方向に

 イタリア語の使用は1990年の7.6%から2000年には6.5%へと落ちた。これはイタリア出身の移民のイタリアへの帰国とイタリア系移民のフランス語圏とドイツ語圏への同化に起因する。

 ロマンシュ語を主要言語とする人口は0.6%から0.5%へとさらなる減少がみられた。研究者は第4の国語であるロマンシュ語の存続の危機に瀕していると警告する。この言語が主に話されているグラウビュンデン地方では他の言語出身者が同化しないのが問題という。

方言の伸び

 研究では他に、学校でのドイツ語方言であるスイスドイツ語の使用の伸びが顕著に現れていると指摘する。1990年にはスイスドイツ語しか話さない生徒が33%から39%に伸びた。 

大学など教育のレベルが高いほど標準ドイツ語の使用が増える。スイス当局が学校へ標準ドイツ語の使用を推進したのにも関わらず、スイスドイツ語が伸びている。外国出身の生徒ほどスイスドイツ語しか話さない傾向が多く、これが外国出身者の就職の大きな壁になっていると指摘された。

 なお、ビエンヌのバイリンガル・フォーラムの責任者、エファ・ロース氏はスイスドイツ語の伸びがスイス人同士の理解の壁になると悔やんでいる。また、ドイツ語圏の責任者にフランス語やイタリア語を差し置いての学校での英語教育の優先を断念するように呼びかけている。


swissinfo 外電、 屋山明乃(ややまあけの)意訳

連邦統計局の発表によると、スイスでドイツ語を話す人口は63.7%、フランス語は20.4%、イタリア語は7.6%でロマンシュ語は0.5%となった。
ハイジャーマン(標準ドイツ語)ではなく、スイスドイツ語をしか話さない生徒が1990年の6%から2000年には39%にも増えた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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