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北部同盟カブール制圧:治安維持と人道・人権が火急の課題

11月13日、カブールに入る北部同盟軍。 Keystone

13日反タリバン勢力の北部同盟が首都カブールを制圧したことから、多民族国家アフガニスタンの治安維持が緊急の課題となっている。

予想外の北部同盟の単独首都進撃で、アフガニスタンの人道危機は最悪の事態を回避できたのではないか、また国外へ撤収した援助職員らは冬の到来前にアフガニスタンに戻り活動を再開できるのではないかと楽観視する向きもあるが、援助機関は非現実的な期待を抱かないよう警戒している。赤十字国際委員会(ICRC)のマカレナ・アグイラーさんは、swissinfoのインタビューに「我々は援助活動の必須条件となる安全保障を得るため、北部同盟司令官らとの対話の開始に全力を注いでいるところだ。」と答え、援助活動に関して語るのは時期尚早だとした。

タリバンの撤退した地域では治安が悪化しているとの報告がある。マザリシャリスでは世界食糧機関(WFP)の貯蔵庫から90トンの食糧が奪われた。赤十字の外国人職員らは2ヵ月前にアフガニスタン国外に撤去したが、米軍空爆中もアフガン人職員ら1000人が祖国に踏み止まり活動を続けた。彼等の活動で重要なものの一つは、伝染病予防のためのタリバン兵士の遺体埋葬だ。ICRC外国人職員らはパキスタン、イラン、トルクメニスタンに暫く留まる計画だが、北部同盟支配地域に入っていた1人が北部同盟と一緒にカブール入りした。また、援助物資輸送隊と救援チームが国境で待機しており、安全保障が得られ次第現地入りする。

各援助機関は、治安面が保障され次第アフガニスタン入りするため準備を整えている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のジェニファー・クラーク報道官は、「国連安全保障コーディネーターの判断によるが、数日中にアフガニスタンに戻りたいと思っている。」と語った。また、クラーク報道官は、帰国を希望するアフガン難民らをどのように帰還させるか検討しているという。さらに、現在のところ北部同盟の首都制圧により大勢の避難民の動きがあるとの報告はないとしながらも、「我々は今後も国外に逃れようとしている難民受け入れのための準備もしている。」と語った。UNHCRはパシュトゥン人居住地域を占拠したタジク人、ウズベク人、ハザラ人で構成される北部同盟に対し、自制の姿勢を見せるよう要請している。旧ソ連軍撤退後カブールを制圧したムジャヒディンらが犯した残虐行為の記憶は、タリバンが去った喜びよりも今後のカブールの治安に新たな不安の影を投げかけている。

メアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官は、北部同盟司令官の多くは過去に人権を侵害した経歴があるとし、米英に対し人権侵害は許されない旨を北部同盟に明確に説明するよう要請した。ロビンソン人権高等弁務官は、「アフガニスタンの免責の風潮」を終らせる時が来たという。アフガニスタンは20年以上続く戦乱で支配者が変わる度に一般国民の虐殺、レイプなど人権侵害が犯されて来た。9日に北部同盟が陥落したマザリシャリフでは、タリバンの少年兵100人が処刑されたとの情報もある。「タリバンだけが人権を侵害しているのではない。北部同盟が政権についていた時は、北部同盟も犯罪を犯していた。」と、人権のための国際サービス(ジュネーブ)のアドリアン=クロード・ゾッラーさんはいう。ゾッラーさんは、当面の最重要課題は治安維持で国際人道・人権法ではないことから、国際機関が北部同盟の統治にどれだけ介入できるのかは疑問だとしている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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