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博物館&カフェ天国、バーゼル探訪

バーゼル市内に四つある歴史博物館のうち、バーフュッサー広場(Barfüsserplatz)に建つバーフュッサー教会館。この広場は、第二・第四水曜日は蚤の市、秋は収穫祭市、年末はクリスマス市で賑わう swissinfo.ch

バーゼル市内・郊外には数多くの博物館・美術館がある。年に何度かある特別展も入れて考えると、一年中どこかで興味深い展示が見られるということになる。先日、久しぶりにバーゼル市に行った。目的は日本語学校時代の友達に会うためだったが、せっかく往復二時間かけて行くのだから、何か面白い催しはないだろうかとインターネット検索をしてみた。結果、バーゼル歴史博物館(Historisches Museum Basel)で特別展「有罪~罪と罰~」という展示をしていることが分かり、そこに行くことに決めた。バーゼル歴史博物館は建物が4カ所にあり、本館は、この特別展示があるバーフュッサー教会館(Barfüsserkirche)である。

 バーゼル歴史博物館は、キルシュガルテンの館(Haus zum Kirschgarten)、馬車博物館(Kutschenmuseum)、音楽博物館(Musikmuseum)の三つが別館。そして今回行った本館は、13世紀末から14世紀始めにかけて建てられたコルドリエ会(昔のフランシスコ会の別称)の教会を修復・改築したもので、建物を丸ごと博物館にしている。四つの館の中では、最も大規模かつ展示内容も種類が豊富である。

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 入口を入ってやや左手にある受付で入館チケットが買える。これは一日券となっており、閉館時間まで自由に出入りすることができる。火曜日から日曜日まで10時~17時開館なので、例えば、午前中に特別展を見学、その後どこかでお昼を済ませてから再入場して常設展を見学することも可能である。常設展はバーゼルの歴史、教会関係、15世紀の絨毯コレクション、貨幣コレクション、古代出土品など、他分野に渡っており、特別展と合わせてじっくり全部見て回るには、かなりの時間が必要である。一階には軽食が取れるカフェもある。

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 今回の特別展は、テーマがテーマだけに、おそらく、繊細な方、そして小さい子供には向かないかも知れない。展示会場がある地下に階段で下りていくと、階段脇に、何やら書物やテレビなどで見たことがあるものが・・・ギロチンであった。目の前で見るのは初めてだったので、圧倒されてしまった。1939年にフランスで執行された、ギロチンによる最後の処刑を無許可で撮影した映像も、館内で流れている。(箱状になっていてすぐには見えない場所にあるのでご安心を)

 ギロチン(guillotine)は、フランスの医者で政治家のジョゼフ=イニャス・ギヨタン(Joseph -Ignace Guillotin)が、王政当時の残酷な死刑方法を廃止し、苦痛を最小限にとどめる機械を導入するよう求めたことがきっかけとなって発明された処刑器具である。後に彼の名(正確にはギロチンには、ギヨタンの作ったもの又はギヨタンの子、という意味がある)がこの装置につけられたため、いかにも彼が発明者のようだが、ギヨタン博士はギロチン製造計画について一般に公開されている部分、つまり議会への働きかけと法整備を取り仕切っただけだった。計画自体は裏で進められ、実際の設計・製作は別の人間達である。その中には、当時世襲制により代々パリの処刑人として職務に就いていたシャルル=アンリ・サンソン(Charles-Henri Sanson)がいる。

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 館内は照明が控え目、しかもショーケース以外の内装は赤で統一されているので、より不気味な感じがした。拷問を伴う凄まじい処刑方法については、当時の挿絵やドイツ語による説明ボードで見ることができる。基本的にドイツ語のみの案内であるが、フランス語と英語による説明パンフレットが展示入口に少数だが置いてあるので、それを持って見て回ることもできる。

 他には、古今の独房の再現、解剖学、かつてバーゼルで行われた凶悪事件などの説明展示もある。この特別展の宣伝に使われている二つの首は、ただの人形だと思っていたが、実は1934年に実際にバーゼルであった殺人事件の犠牲となった二人の男性のデスマスクで、一階の片隅に置かれている。

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 人類の罪の歴史とは言え、身の毛もよだつような展示鑑賞の後、心落ち着く常設展を回った。今回は友人との約束があったので長くは居られなかったが、非常に内容が充実しているので、常設展だけでも最低1時間は取っておきたいところである。

 昼食は、初めて入った中華レストラン「シャオルーズ」(Xiao-Lu’s)でいただいた。ここでは、平日にビュッフェランチ(中華・タイ料理・寿司など)がある。店内は広々としていて、内装も新しく綺麗で、居心地が良かった。

 昼食後は場所を変えておしゃべりに花を咲かせた。バーゼル市内のカフェは一体何軒あるのか見当もつかないほど多いが、店に詳しい友達のお蔭で、エッシェンプラッツ(Aeschenplatz)からそれほど遠くない、素敵なカフェバー「パネ・コン・カルネ」(Pane con Carne)に案内してもらった。コーヒー・紅茶の他に、ワインの種類も豊富で、パン類、惣菜もたくさんあった。観光地や大通りに位置しない、こうした穴場的カフェは、やはり地元の人の紹介や口コミで見つけるに限る。

 帰りの電車に乗る前に、バーゼル中央駅の隣にあるアジア食品店「亞洲兄弟貿易公司」(A-Chau trading AG)にて買い物。品揃えが良く、バーゼルに行くとよく利用している。

 こうして、丸一日バーゼルを満喫し、帰途についた。バーゼル市はスイスの北西 の端だが、チューリヒからもベルンからも急行で約一時間と、アクセスは良く、日帰りでも十分楽しめる。興味深い展示やイベントがあれば、食事やショッピングと組み合わせて計画を立て、時間をたっぷり取って出向いてみてはいかがだろうか。ちなみに今回ご紹介した特別展「有罪~罪と罰~」は、既に去年から始まり、今年4月7日まで開催されている。

マルキ明子

大阪生まれ。イギリス語学留学を経て1993年よりスイス・ジュラ州ポラントリュイ市に在住。スイス人の夫と二人の娘の、四人家族。ポラントリュイガイド協会所属。2003年以降、「ラ・ヴィ・アン・ローズ」など、ジュラを舞台にした小説三作を発表し、執筆活動を始める。趣味は読書、音楽鑑賞。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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