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国際刑事裁判所設立条約発効をにらみ、ボスニア平和部隊任期延長に米が拒否権

戦争犯罪や人道違反を裁く国際刑事裁判所(ICC)設立条約(ローマ条約)が7月1日、発効する。前政権が条約に署名しながら米兵の起訴を警戒するブッシュ政権が署名を撤回した米国は、ボスニア・ヘルツェゴビナの国連平和部隊の半年間の任期延長を求める決議案を採決した30日の国連安全保障理事会で、拒否権を行使した。

国連安全保障理事会は、7月1日で任期が終了する国連ボスニア・ヘルツェゴビナ派遣団(UNMIBH)と北大西洋条約機構(NATO)が指揮する多国籍部隊「平和安定化部隊」(SFOR)の二つの平和維持部隊の6ヵ月の任期延長を求める決議案を採決したが、7月1日の国際刑事裁判所設立条約発効をにらみ自国の要員の刑事訴追除外を求める米国が拒否権を発動したため、否決された。ボスニアにおけるPKOが停止する事態を恐れた安保理では、UNMIBHとSFORの活動を72時間だけ暫定的に延長する決議を米国を含む全会一致で採択した。

ネグロポンテ米国連大使は、「米政府は遺憾ながら拒否権を行使した。が、米兵は、米政府が受け入れを拒否した、政治化された訴追のリスクを決して受け入れない。」と述べた。PKO要員の刑事訴追除外は、ロシアと中国も要請している。

スイス外務省は、米国がボスニア平和部隊任期延長決議で拒否権を行使しても、ICCの設立に影響はないが、ブッシュ政権が将来ローマ条約に再加盟する可能性を残しておくことが大切だとしている。ICC設立条約が採択された98年ローマ会議以来、ICCに携わってきた外務省職員のリンデンマン氏は、「20世紀は人類史上最も残酷な世紀の一つとして上げられよう。第2次大戦後のニュルンベルグと東京、オランダ・ハーグの旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所、タンザニア・アルーシャのルワンダ国際刑事裁判所など、数多くの臨時裁判所が設けられた。これらの裁判所は大変重要な任務を遂行しているが、暫定的な存在な上、裁判所設立が遅すぎ、長期的な解決を生み出せない。恒久な国際刑事裁判所が必要なのは、徐々にだが明白になった。財政的にも、恒久な裁判所の設立が望ましかった。」と語る。

ICCはオランダ・ハーグに設立されるが、オープニング・セレモニーは最終準備セッションが行われるニューヨークで開催され、スイスなど各国の人権問題のNGOら代表が招待されている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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