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森林浴でキノコ狩り:スイスアルプス産の高級ポルチーニ!

松の木の下に隠れて生えているポルチーニ茸 swissinfo.ch

毎年、この時期になるとルガーノから約2時間半かけてお隣のグランビュンデン州、ダボス会議で知られるダボス(Davos)までキノコ狩りに出かける。グラウビュンデン州では、東西南北に渡りドイツ語、フランス語、イタリア語、そしてロマンシュ語が話されている。州都はクール、その他リゾート地としても有名なサン・モリッツ(St.Moritz)がある。ルガーノから山道をくねくねと上って行き、標高約1560メートルの場所にあるダボスに到着。冬はスキーリゾート客で大混雑だが、春先から休業するホテルなども多く、夏は冬に比べると観光客は殆ど見ない。

 ダボスのまわりの殆どの森でキノコ狩りが楽しめるが、誰でも勝手に好きな時間に好きなだけ穫っていいという訳ではない。キノコが大量に収穫できる時期は、道路(特に州境の辺り)に警察が待ち構えていて抜き打ちで荷物検査をすることもあり、もし違反した場合は、高い罰金が待ち受けている。ティチーノ州でキノコ狩りをする場合は、朝の7時〜夜の8時までの間で、1人3キロまで。9月7日から13日の間のみキノコ狩りが禁止されている。グラウビュンデン州では、毎月1日〜10日の間はキノコ狩りを禁止、また、家族以外は3人以上で森に入ってはならないのとキノコの収穫量は1人2キロまでという法律が存在する。そんなことからも、キノコや自然を保護するために、州がしっかりと監視しているのがうかがえる。そういう点は、さすがスイスという感じがする。

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 キノコ狩りに行く時は、標高2000メートル以上までの場所に行くこともあるため体力も消耗しやすい。水分・栄養補給などをこまめに行うために万全の態勢を整えなくてはならない。水筒、チョコレート、パワーバーは欠かせない。タオルやポケットティッシュ、それに忘れてはならないのが、キノコ収穫用のナイフ。スイスアーミーナイフかキノコ専用のハケがついたナイフがないと、キノコを傷つけずに生え際から収穫するのも難しいし、土、コケ、松葉を取りはらい、余分な箇所や痛んだ部分を切り落とすこともできない。個人的にもうひとつ忘れてはならないのが、カメラ。大自然の中にポコポコと生えているポルチーニは、本当に神秘的でおとぎ話の世界にでもいるかのような錯覚に陥る。そんな素晴らしい経験を目に焼き付けるだけではもったいな過ぎる。

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 さて、前置きはこれくらいにして、バックパック(殆ど空の状態で、収穫したキノコを入れるためのもの)を背負って、早速森に入ってみよう!

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 ダボスドルフ(Davos Dorf)付近の森を下から頂上(約1800付近)まで歩いて登って行くのだが、今回は、上るのが億劫(おっくう)なので、ケーブルで登りあとは下るだけの楽な場所、リネルホルン(Rinerhorn、標高2528メートル)を選んだ。

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 キノコ狩りの目的は、当然ポルチーニ!ダボス付近のキノコは赤松の下やコケの間に生えていることが多く、上質で超高級品に値する。その他、シャントレル茸(日本名は確かあんず茸)も絶対に外せない。ケーブルでリネルロルンの展望台に到着すると辺り一面アルプスの山々が見渡せる。そこから山を下りながらポルチーニを探す。松の木が沢山立っている間に白い小さいキノコの軍団や、物語に出てくるような赤いキノコがたくさん生えていたらポルチーニの群衆に出会えるチャンス!それに、湿気のあるコケ地帯や放牧されている牛の糞がたくさんある場所も要チェックだ。

 ダボスでポルチーニ探しをして10年。経験上言えることは、ポルチーニは複数で生えていることが殆どだ。「あった〜!」と思ったら「あ、ここにもあった〜!」という具合に二度三度喜びがある。しかし、ポルチーニに姿がそっくりの偽ポルチーニには要注意だ。ポルチーニと違うのは、先ず毒があるという点、色がやや紫がかっている点と、ポルチー二にはひだが無く黄色や白のスポンジ状のものがついているのに対し、偽ポルチーニには傘の裏にひだがある点だ。自然に生えるポルチーニのサイズは様々、人間の頭程の大きさまで育ったポルチーニもあれば、柄が真っ白の生まれたてのポルチーニもある。

 個人的には小さいポルチーニを生のままサラダに入れて食べるのが好きだ。レストランで生のポルチーニをなかなか食せないことを考えるとそれだけで贅沢気分を味わえる。また、大きいものはカットして水分と中に入り込んでいる虫の除去も兼ねて乾燥させ、リゾットなどに使う。キノコ狩りの楽しみは他にもたくさんある。森のど真ん中で美味しい空気を吸いながら寝そべって休憩したり、自然になっているブルーベリーを食べたり、野生の動物に遭遇したりと様々だ。時期によるが、リスはもちろん、鹿やいのしし、きつねにも出会えるかもしれない。

 楽しみの多いキノコ狩りから帰った後もまだ次の楽しみが待っている。穫ってきたキノコの美しさにまずうっとり。カットする前のポルチーニのぽっこりした姿を見て楽しむのもまた悪くない。そして、最高の時は、森での出来事を思い出しながら感謝の気持ちを込めてポルチーニを美味しく頂くこと。そんな楽しいキノコ狩りを是非たくさんの人に体験してもらいたい。キノコ狩りに出かけるならティチーノ州からだとティチーノ州の森が1番近いが、お隣のグラウビュンデン州でハイジの育った山にいるかのような体験も悪くない。自然の偉大さと優しさを体感できる最高のひとときをお楽しみあれ!

リッソーネ光子

マリンスポーツ界でアスリートやレポーターとして世界中を飛び回り、1998年にロケで訪れたイタリアに魅せられそのままミラノに移住。その後、縁がありスイスイタリア語圏のルガーノへ移り住んで11年。社会人としてルガーノ大学を卒業後、同大学の大学院でメディアマネージメントを専攻。現在、イタリア語の通訳・翻訳者としてメディアやスポーツ業界の他、多方面で活躍中。

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