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海底に眠る原始生命

先カンブリア時代の後、殻や骨格を持った生物が出現し始めた Keystone

原生代の生物の大量絶滅は、海洋中の化学物質の変化が原因だったとスイスの研究チームが発表した。

このコンテンツは 2008/06/17 15:25

約5億4000万年前ごろ隆盛していたエディアカラ生物群は、「カンブリア爆発」によって一掃され、多様な新種の生命体が取って代った。エディアカラ生物群は、現在知られている生命体の中で最古の多細胞生命体だ。エディアカラ生物群が出現し始めたのは、地球が氷期を脱した約6億万年前だが、カンブリア紀が始まる直前に突然消滅した。

海層逆転

「先カンブリア時代とカンブリア紀の間に何が起きたのかはっきりと分かっていません。カンブリア紀には、先カンブリア時代には見られなかったような多様な新種が大量に出現しています」
とベルン大学地質学部のトーマス・ネグラー教授は語った。

この謎を解くために、ネグラー氏は同僚の研究者と共に、中国とオマーンから取り寄せた黒い頁岩 ( けつがん ) サンプルの中に含まれる、モリブデンの同位元素の量と種類を分析した。
「同位元素は指紋のようなもので、何が絶滅したのかを解明するのに役立ちます」
とネグラー氏は説明した。

一体、何が起きたのだろうか? ネグラー氏によると、先カンブリア時代の生命体の絶滅は、「海層逆転」という現象によって説明することができる。

その当時、地球のほぼ全体を覆っていた海洋の中には水層が形成されており、モリブデンの同位元素が上部層に多く含まれていた。そして下部層には、硫化水素 ( H2S ) が含まれていた可能性がある。

何らかの理由で海流が変化し、硫化水素を上部層に押し上げ、その上部層にもともと自然に溶け込んでいた金属の元素との化学反応が起きたと考えられている。ほとんどすべての生物にとって、硫化水素は低濃度でも有害だ。この化学反応が、海底に沈殿した堆積物を作り出し、そしてそれがこの頁岩サンプルとなった。
「今日私たちが見ることができるモリブデンの同位元素の特性は、硫化水素の上昇によってできたはずです。このような結果を大量に作り出せた唯一の化学作用は硫化水素の上昇しかありません」
とネグラー氏は付け加えた。

これらの頁岩サンプルの分析は、何らかの変動があったことを示しており、コンピュータによる分析でも、そうした結果を生み出すには特定の状況が必要だったことが確認されている。

原因不明

ネグラー氏は分析結果の正当性を確信しており、エディアカラ生物群の消滅にまつわるミステリーの解明は英科学誌ネイチャーの最新号に掲載された。
「当時の進化について知られていることと、われわれのデータの組み合わせが、既存の仮説の一つにうまく合致しました。われわれの分析結果は、なぜエディアカラ生物群が死に絶えたのかを示しています。従って今度は、なぜ海流が変化したのかを解明することが必要です」
とネグラー教授は語った。

ネグラー氏は地質学の専門家のため、それについては説明できないと認める。しかし海流の変化には多々の理由が考えられ、大陸移動もその1つだ。
「大陸は常に動いています。パナマ海峡のように閉じてしまい、海流を全く変えた例もあります」
とネグラー氏は説明した。

また気候変動も原因と考えることができる。
「われわれは今日、主に気温の変化によって海流が変化することを知っています。もし気候を変えることができるなら、海流を変えることも可能です」
とネグラー氏は述べた。

最後の容疑者は地球自身ということになる。
「そのころ大きな磁場の変動があり、おそらく地軸も移動したことが分かっています。これもまた海流に影響を与えたと思われます」
と地質学の専門家であるネグラー氏は補足した。

swissinfo、スコット・カッパー 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳

行くもの、来るもの

エディアカラ生物群は現在知られている最古の多細胞組織体。地球が氷期のクリオジェニアン紀を脱した直後に出現し、「カンブリア爆発」として知られる多種多様な生命体の爆発的な出現の直前にほぼ絶滅した。

カンブリア紀には、現在の生物の原始的な形態を成す多細胞動物が出現した。

エディアカラ紀の生命体は、約5億8000万年前に出現して以来、約5億4000万年前までの間に隆盛していたことが化石資料の研究によって判明している。

エディアカラ生物群の消滅を説明する仮説は、環境変動、捕食生物の出現、ほかの生命体との競争など数多く発表されている。

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