グランコンプリカシオンがお手の物
最高級クラスのスイス時計の設計をしている日本人がいる。下関出身の浜口尚大(はまぐちたかひろ)さん(29歳)だ。表面をサテン仕上げにしたりして、光の当たり具合でコントラストを出す。機能とは別の、見た目にこだわるスイス時計に魅せられた。5年かかる時計技師養成学校は4年で終了し、2年半前オーデュマピゲの傘下で機械部分を作る会社に入社した。
日本で高校卒業後、早速、スイスに時計の勉強に来た。フランス語を取得すればすぐにでも入れるかと思った職業学校は、外国人は入学できないと断られた。ジュー渓谷にあるその学校は、スイスでもレベルが最高。是非その学校で勉強したいと思い、連絡を取り続け、試験を受けさせてもらうまでになったという。
試験の準備もあまりせず受けたが、1度で受かった。小さいときからプラモデルを作っていたこともあって、手先は器用。1年生のときにやるべき実技は半年で終わってしまい、飛び級するほどだった。市販の時計を修理する資格と、古い時計を作られた当時の技術を尊重しながら、外見も直して新しい状態に近づける技術を持つ修復師の資格の国家試験もパスした。
1000万円以下のものは作らないという、複雑時計(コンプリカシオン)ではトップクラスの会社で現在、機械の設計をしている。今年ジュネーブの時計サロンで発表された浜口さんの第2作目は、イタリア車のマゼラティをイメージし、地板をカーボンファイバー製にした「ミレネリーMC12」。ブルーやゴールド、シルバーの部品の組み合わせがモダンな設計になっている。ちなみに値段は2800万円。
「日本には高級時計を作るという歴史も基盤もない。自分の職業を生かせるのはスイスだけ」と、今のところスイスに骨を埋めるつもりで「今は、与えられた課題をコツコツとやっていく」と言う。
swissinfo、 聞き手 佐藤夕美(さとう ゆうみ)
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