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邦人イラク人質事件におけるスイスの反応

解放された邦人にスイスメディアも安堵。 Keystone

イラクで武装集団が邦人5人を人質にし、日本政府に自衛隊撤退を迫った事件はスイスでも大きくニュースとなった。スイス外務省はイラクへの渡航を思いとどまるよう厳しく勧告している。イラクには、スイス−イラクの二重国籍者なども含め23人のスイス人の存在が把握されている。

このコンテンツは 2004/04/21 16:31

1年前、サハラ砂漠を旅行していたスイス人がイスラム原理主義者と見られるグループに誘拐された。その際、スイスでも「自己責任」とコスト負担の問題が浮上した。

人質となった邦人3人を映したビデオが放映されたのは、4月8日夜9時50分から始まるスイス放送協会のドイツ語のテレビニュースだった。大きな刃物を首に突きつけられて怯える3人の映像は音声の修正もなかったため、臨場感がありその場の緊張が伝わってきた。
事件が解決した後の新聞などでは、日本政府の対応を評価する報道が目立った。

新しい日本を評価するスイスのメディア

4月13日付けのドイツ語の日刊紙「ターゲスアンツァイガー」は東京発で、人質の犯人が要求する自衛隊撤退を断固拒んだ日本政府を「世界舞台で担う新しい日本の役割」が強調できたと評価している。日本政府は、「人質の犯人の政治的要求に応じることは、(諸外国から)誤解されることがあることを理解した」と人質の要求にこたえて600万ドルの身代金を支払った77年の赤軍による日航ハイジャック事件と比較した。さらに、「小泉首相は、米国との友好関係をイラクでアピールし、国際社会からの評価を得、国連の常任理事国のメンバーになる足がかりを作ろうとしている。日本は小切手帳外交から抜け出した」と書いた。

保守のノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング紙も東京発の19日付けの紙面で、「日本政府にとっては、イラク人質事件は5人の救助と平行し、政府のこれまでにない積極的な安全政策に対する国民の信頼を失わないことが課題だった」と状況を説明。人質の要求に応じない政府の姿勢を支持した日本国民の中に「国民の犠牲を払っても、日本が世界の舞台で、経済規模に見合った責任を負う必要を感じ始めた」と日本国民は政府を支持していると分析し、10月の選挙への影響にも言及した。

「自己責任」スイスの場合

昨年2月から3月にかけ、サハラ砂漠を旅行していたスイス人4人を含む欧米人32人が、イスラム原理主義者とみられるグループに誘拐された。5月から8月までに段階的に人質は解放されたが、ドイツ人の女性は疲労のため病死した。この際、身代金として500万ユーロが支払われたと言われる。犯人との交渉などにかかった費用の一部は、旅行保険会社が負った。総額は6万5,500フラン(およそ5億5,700万円)。外務省が渡航危険地域として旅行を避けるよう呼びかけていたサハラでの人質事件だったこともあり、旅行会社や保険会社などの間では、「自己責任問題」が浮上した。被害者は経費を支払うことはなかった。

外務省のカリン・カレー広報担当官は「渡航は自己責任での判断である。渡航の際の情報提供や、すでに危険地域に住む人たちに対しての状況説明などをして、政府としては国民の身の安全を守ることを助けている」と政府の姿勢を説明。人質になった人に経費の一部を負担させるかは「ケースバイケース」だと語った。

一方、旅行オンブズマンのニコラス・エッテルリ氏は自己責任で渡航しているのだから、「全経費が税金で支払われることには、国民のほとんどが反対しているようだ」と、業界内外のヒヤリングで集めた「国民一般の考え」を明らかにした。人質解放にかかった経費については、「その人の経済状態に応じた範囲で支払うのは、ごく普通のことではないだろうか」言う。

邦人人質事件の被害者はジャーナリストやNGOに所属する人たちで、観光旅行で事件に遭ったスイスの場合とは比較するのは難しい。しかし、自己責任という言葉が流行語となっているいま、スイスで指す自己責任とはなにか、参考にできないだろうか。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

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