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サッカーW杯 スイスチームに貢献する「良い移民」

練習中のゴクハン・インレル、ステファン・リヒトシュタイナー、ヨハン・ジュールー。スイス代表23人中15人が外国にルーツを持つ Keystone

サッカーW杯の対ホンジュラス戦で昨日、勝利を収めたスイス。実は、出場国32チームのうち、外国にルーツを持つ選手が一番多いのがこのチームだ。シャキリ、ロドリゲス、シャカといった選手たちの存在は、スイスの移民政策の成功例なのか、それとも単にサッカーをするのは移民が多いという理由からなのだろうか?

このコンテンツは 2014/06/26 11:11

ハリス・セフェロビッチ。このバルカン風の名前は、サポーター全員の心に深く刻まれることになった。W杯第1戦の対エクアドル戦でタイムリーな得点を上げ、スイスを勝利に導いた(2−1)ためだ。また、2009年にナイジェリアで開催されたU−17ワールドカップの決勝戦で唯一のゴールを決めたのもこの選手。このゴールで、スイスのチームが史上初めて世界のトップクラスに躍り出た。 

セフェロビッチは、ボスニアから1980年代末にやってきた両親のもと、スイスで生まれた。スイス代表の23人中、外国にルーツを持つ選手は15人。セフェロビッチはその1人だ。W杯出場選手について、外国とのつながり(本人の生まれた国、両親、祖父母の国籍)を調べ、その数を比較したオーストラリアの情報デザイナーのジェームズ・オファーさんによると、スイス代表は全チームの中で最も「国際的」だった。スイス代表の外国とのつながりは21件、続いてオーストラリア(18件)、アルジェリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、フランスが16件となっている。 

代表メンバーの多くは、両親の少なくとも片方が外国出身の「二世」だ。セルビアとスペイン出身の両親を持つスペイン系スイス人フィリップ・センデロスのように、二重国籍保持者も珍しくない。

「寛容の証」

キャプテンのゴクハン・インレルも二重国籍だ。「トルコ移民のインレルをキャプテンにしたのは、外国にルーツを持つ選手に重要な役割を与えたかったからだ。この多様性は今のスイスをよく表しており、スイスの寛容の証でもある。スイスが外国人の受け入れに成功していることを示しており、それを誇らしく思う」。オットマー・ヒッツフェルト監督は、フランスのテレビ局カナル・プリュス(Canal+)が制作した番組で、最近そう語った。 

スイス代表メンバー23人のルーツ

ゴールキーパー(GK)

ディエゴ・ベナリオ(祖父母がイタリア人)

ロマン・ビュルキ(スイス人)

ヤン・ゾマー(スイス人)

ディフェンダー(DF)

フィリップ・センデロス(両親がセルビア人とスペイン人)

ヨハン・ジュールー(コートジボワール生まれ)

ミヒャエル・ラング(スイス人)

ファビアン・シェア(スイス人)

ステファン・リヒトシュタイナー(スイス人)

スティーブ・フォン・ベルゲン(スイス人)

レト・ツィーグラー(スイス人)

リカルド・ロドリゲス(両親がチリ人)

ミッドフィールダー(MF)

トランクイロ・バルネッタ(イタリア・スイス二重国籍)

ヴァロン・ベーラミ(コソボ生まれ)

ブレリム・ジェマイリ(マケドニア生まれ)

ゲルソン・フェルナンデス(カボベルデ生まれ)

ゴクハン・インレル(両親がトルコ人)

ジェルダン・シャキリ(コソボ生まれ)

アドミール・メーメディ(マケドニア生まれ)

ヴァレンティン・ストッカー(スイス人)

グラニト・シャカ(両親がアルバニア人)

フォワード(FW)

ハリス・セフェロビッチ(両親がボスニア・ヘルツェゴビナ人)

マリオ・ガブラノビッチ(両親がボスニア・ヘルツェゴビナ人)

ヨシプ・ドルミッチ(両親がクロアチア人)

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スイス代表には外国生まれの選手もいる。例えば、スター選手のジェルダン・シャキリはコソボ生まれで、複数のルーツを持つことを進んで明らかにしている。去年アルバニアで行われた予選でゴールを決めたが、出身国への「敬意」を示すため、喜びを露にしなかった。 

このような多様性が見られるようになったのは比較的最近のことだ。20年前にアメリカでW杯が開催されたときには、スイス代表メンバーの中で帰化外国人選手はアルゼンチン出身のネストル・スビアトだけだった。2006年のクーン監督率いるスイス代表チームでは、外国にルーツを持つ選手は8人だった。

スポーツと国民的アイデンティティー

これは、移民政策がスイスでは例外的な成功を収めているからだろうか?スイス・サッカー協会(SFV/ASF)のペーター・ジリエロン会長はそう考えているようだ。「スイスでは、外国人受け入れの道具としてサッカーほど重要な役割を果たしてきたものはない。過去数十年間、移民たちは何よりもこのスポーツをしながら、スイスとスイス人の中に溶け込んでいった」と、ナイジェリアで開催されたU−17ワールドカップ優勝の後、会長は話した。 

ローザンヌ大学のスポーツ社会学者、ファビアン・オールさんの見方はもっと現実的だ。オールさんによると、この現象は、移民の出身階層とスイス特有のスポーツ事情で説明できる。「他の多くの国では、サッカーは飛び抜けて人気のあるスポーツだ。ところがスイスでは、アイスホッケー、アルペンスキー、テニスなどのスポーツと競合する。これらのスポーツはお金がかかるし、スイス人のアイデンティティーに深く関わっている。だから移民には敷居が高い。そこで移民はサッカーに向かう」

  また、オールさんは別の理由も挙げる。移民の青年の多くにとって、サッカーは成功と社会的に認められるための、最高の手段だというのだ。「スター選手は本人や家族が移民であることが多く、それが彼らを一層サッカーへと向かわせる要因になっている」。スイスには選手登録者が25万人以上いるが、その3分の1はスイス国籍を持っていない。 

また移民の選手たちは、野心やお金を稼ぎたい、何が何でもサッカーで成功してみせるといった思いを表に出すのをためらわない。一方、スイスの若者の大半や親たちは、若いうちは勉強や職業見習いに集中する方を好む。

「大量移民」の結果

こうした成功の背景には、二重国籍の選手に責任ある立場を任せるよう推進しているスイス・サッカー協会の存在や、世界に名高い育成システムもある。

  ただ、特に2月9日に移民制限が国民投票で可決されたことを思うと、この代表チームはやはり興味深い。そこに奇妙な矛盾を見て取る識者もいる。「この選手たちが皆、『大量移民』の結果生まれたことを忘れないようにしよう」と、スイスのオンラインメディア「Journal21」は述べている。「選手の親たちは、外国(主にEU加盟国以外の国)の出身で、幸運にも家族を連れて来ることができた。それがなければ、この青年たち(スイス生まれの者もいる)が地元のサッカークラブに入ることもなかった」

  スイス代表の応援のためブラジルを訪れていた、右派国民党のウエリ・マウラー国防・スポーツ相は、ジャーナリストからこの問題について鋭く突っ込まれた。「国民党の広めるステレオタイプ的スイス像からかけ離れた、この多文化的な代表チームについてどう思われますか?」というフランス語圏の日曜紙ル・マタン・ディマンシュの質問に対し、マウラー氏は「国民党は、社会に溶け込みスイスのために働く外国人を批判したことはない」と反論した。

サッカー選手は「良い移民」

前出のオールさんはこのマウラー氏の発言を当然のことだと言う。「サッカー選手は良い移民とみなされている。国の役に立ち、第二の祖国の誇りとなるからだ。逆に、犯罪を犯したり、私たちと同じ文化的慣習を共有しない外国人は嫌われる。一方、特に優れているわけでも脅威でもない普通の外国人は、ほとんど注目を浴びることがない」

  しかし、反動には気をつけた方が良いとも警告する。「多文化的なチームが勝利を収めると、皆『多様性』を誉め称える。しかし、失敗したり成績がぱっとしなかったり論争になったりすれば、『違い』の方が再びクローズアップされる。1998年の優勝で喝采を浴び、2010年の南アの練習でボイコットをして酷評を受けたフランス代表が良い例だ」

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