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高層都市東京、介入観測、富士山に黒幕…スイスのメディアが報じた日本のニュース

河口湖から望む富士山
河口湖に映る富士山の朝焼け(2019年8月撮影)。河口湖町はスイスのツェルマットと友好都市関係にある KEYSTONE/AP PHOTO/Jae C. Hong

スイスの主要報道機関が先週(4月22日〜28日)伝えた日本関連のニュースから、3件をピックアップ。要約して紹介します。

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今回ご紹介するのは①建設資材シーカ、東京・アジアに熱視線②円買い介入に警戒③富士山の写真スポットに黒幕設置、の3本です。

建設資材シーカ、東京に熱視線

スイスの建設資材大手シーカ外部リンク(Sika、本社・ツーク州バール)が麻布台ヒルズ森JPタワー(東京・港)34階のホールで投資家・アナリスト向け説明会を開催。トーマス・ハスラー最高経営責任者(CEO)が語った東京の高層ビル需要やアジア市場の展望について、ドイツ語圏の日刊紙NZZと経済紙フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト(FuW)が報じました。 

シーカのトーマス・ハスラーCEO
シーカのトーマス・ハスラーCEO KEYSTONE/© KEYSTONE / URS FLUEELER

「シーカが日本でこのようなイベントを開催するという事実は、業界に驚きをもたらした」。FuWによると、同社の売上高においてアジアは米欧に劣るものの、ハスラー氏は「世界の主要なメガシティはアジアにあり、中期的にはこの地域が最も重要な柱になる可能性が高い」と説明会に集まった40人の投資家・アナリストに語りました。 

シーカの建設用化学薬品は昨年11月に開業した麻布台ヒルズ森JPタワーのほか、東京の高さ187メートルを超える全ての高層ビルに使われています。昨年5月に独建設化学大手MBCCを買収外部リンクした後、日本の拠点を7カ所から23カ所に増やし、「特に地方での存在感を確立」しました。2021年には横浜ゴムから自動車用のシーリング材や接着剤部門「ハマタイト」を買収し、「ホンダやトヨタ、日産への扉が開かれた」(ハスラー氏)と言います。 

NZZは、東京は政治・経済・文化の中心地として多くの労働世代を惹きつける一方、スーパーやレストラン、病院などが集まる高層ビル群は高齢者の人気も高まっていると解説。外国人投資家も不動産ブームに重要な役割を果たしていると伝えました。 

家賃高騰に給与の伸びが追いつかず、「日本人にとって東京は、ロンドンやシンガポールのような大都市よりも地元住民にとっての物価が高い」と指摘。それでも歴史的な円安のお陰で国際的にみればまだ投資先としての東京の魅力は衰えていません。東京を世界のトップ経営者が住む街にするためには高級マンションの建設は不可欠で、NZZは「建設計画の増加見通しはシーカにとって朗報だ」と締めくくりました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンクNZZ外部リンク/ドイツ語) 

麻布台ヒルズからの眺望
2023年11月に開業した麻布台ヒルズ森JPタワーは日本一高いビルとなった KEYSTONE

円買い介入に警戒

外国為替市場で円安が止まりません。日銀の金融政策決定会合(25~26日)を控えた23日、FuWは相場から日銀にかかる利上げ・介入圧力について解説しました。 

円安はスイスからの観光客にとっては日本での買い物を魅力的なものにしています。世界的なブランド品でも日本ではスイスの3分の1ほど安く買え、スイスのスーパーで売られているおにぎり4.5フランは東京では約1フランで買えてしまいます。 

しかし歴史的な円安は「日本の経済政策担当者の間で懸念の的となっている」。植田和男総裁が18日「円安が、輸入財の国内価格の上昇を通じて基調的な物価上昇に影響を与える可能性はある」とした発言は、インフレ率の上昇を望んでいる国としては逆説的だが、「間違いなくある種の緊急性を示している」と位置付けました。輸入物価が家計の実質所得の増加を妨げれば、日銀の目指す「成功サイクル」(物価と賃金の好循環)が危うくなるからです。 

こうした背景から、市場では政府・日銀による円買い介入への憶測が浮上しています。ただ2022年秋の円買い介入では計9.2兆円を投じたものの効果は限定的で、同年は14%円安・ドル高が進みました。足元の円安も介入では食い止められず、FuWは日銀による利上げか、米国が利下げするまでこの流れは止まらない、との市場関係者の見方を紹介しました。(出典:フィナンツ・ウント・ヴィアトシャフト外部リンク/ドイツ語) 

日銀の植田和男総裁
日銀は26日、政策金利の据え置きを決定。さらなる円売りを呼んだ KEYSTONE

富士山の写真スポットに黒幕設置

山梨県河口湖町にある「ローソン河口湖駅前店」に、長さ20メートル、高さ2.5メートルの黒幕が設置されることになりました。富士山はスイス人にも人気の観光地なだけに、このニュースはドイツ語・フランス語・イタリア語全言語圏で大きく報じられました。なお河口湖町は2015年に、マッターホルン山麓の街ツェルマット(ヴァリス州)と友好都市外部リンク提携を結んでいます。 

市職員の1人は報道に「一部の観光客がルールを守れないため、このような対応をしなければならないのは残念だ」と話しました。安全と住民の静けさを守るため、道路標識や警備員を配置するなど他の措置もとってきたものの効果がなく、「苦渋の判断」だったと報じられています。 

イタリア語圏の地域紙コリエーレ・デル・ティチーノは、観光客から入場料を徴収することに決めた伊ベネチアを引き合いに「オーバーツーリズムを阻止し、脆弱さを増す都市を守る」必要があるのは地球の反対側でも同じだと伝えました。「悪いのは『誤った行動をする外国人旅行者』にある」とし、「観光客が規律正しい行動をとり始めるまで」黒幕は撤去されないだろうとの見方を示しました。(出典:コリエーレ・デル・ティチーノ外部リンク/イタリア語ほか)

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出」(記事/日本語)でした。他に「スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着」(記事/日本語)、「スイス中銀総裁、インフレショックに警告」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は5月7日(月)に掲載予定です。

校閲:大野瑠衣子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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