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ティチーノの秋:栗三昧

緑色のいがの中には栗が実っている swissinfo.ch

前回のきのこ狩りに続き、今回も自然を満喫しながら味わえる食をテーマに、ティチーノの代表的な秋の味覚「栗」をお届けしたい。夏が終わりに近づくにつれ、気温の変化や辺りの山肌の色の変化に、秋の訪れを感じ始める。森の保護活動などのおかげもあり、ティチーノ州は「栗の州」と言っても過言ではない程、今でも栗の木が多く自生しており、栗の生産量も多い。

 栗の木は初夏にクリーム色の花を咲かせる。ティチーノ州では、栗の花の開花時期に車でハイウェイを走っていると、栗の森が太陽の光を浴びて白く輝いているのに思わず目が釘付けになる。その花が散り、初秋の今、茶色くなる前の新鮮な緑色のいがの中に栗が実っている。

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 スイスには2種類の栗があり、イタリア語では「カスターニャ(Castagna)」と「マローネ(Marrone)」と呼ばれる。一般的に日本で知られる、いがに2〜3粒の実が成り片側の側面が平な栗をカスターニャ、そしていがに1粒しか実がならず大粒で丸い形をしている栗をマローネという。

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 マローネの方が渋皮を剥きやすく甘みが強いとされ、マロングラッセを始めとする 栗菓子に使用されることが多い。ティチーノ州でも、大粒のマローネを使用したマロングラッセが名物で観光客のお土産物には欠かせない。その他、トウモロコシやジャガイモなどの他に栗を主食としていた伝統的な食文化が今でも守り続けられており、秋になると各地で栗祭りが開催されるなど、ティチーノの人達にとって栗は欠かせない存在だ。

 現在、栗の消費の仕方は実に様々で、焼き栗のように栗を皮ごと焼いただけで栗そのものの味を楽しむものもあれば、栗の粉を使用したパン、パスタ、ケーキ、そして栗のジャムや蜂蜜など本当に栗を多様に楽しめる。また、日本ではあまり聞かないが、栗のヨーグルトや栗のビールなども生産されており、ヨーグルトに関しては秋から冬にかけての季節限定でスイス全国のスーパーで購入することが出来る。ヨーグルト自体の色は薄茶色で中に細かく砕いた栗の実が入っておりなかなかおすすめだ。

 一方、ビールは麦芽と栗の微妙な比率が栗の香りをうまく引き出しており、ティチーノ州産の栗を使用していることもあり、是非試してもらいたい。

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 個人的には栗粉を使ったパンやパスタで栗を楽しむよりも、ケーキやマロングラッセなど甘い栗菓子方が好きだ。特に、定番の「モンブラン(Mont blanc)」は、甘さも控えめなので良く食べる。この「モンブラン」の名前の由来だが、フランス語で「白い山」という意味で、その形が山に似ていることや砂糖を上から振りかけた姿が白いことから来ているようだ。イタリアやイタリア語圏では、「モンテ・ビアンコ(Monte bianco)」と呼ばれ、一般的に日本で知られる黄色いモンブランとは違い、茶色く長い間人々に愛され続けている。

 甘党の私は、最近マロンパイを作ってみる事にした。栗を煮てペースト状にし、牛乳やバターなどを加えたものにティチーノ産のマロングラッセのバラ(形が崩れ商品にならないもの)を入れパイ生地で包み焼いた簡単なものだ。自慢ではないが、このマロンパイ、パティスリーやカフェなどで出したら以外に人気が出るのではないかと勘違いする位の出来映えだった。

 さて、ティチーノもこれから秋本番、先に挙げた栗を使用した食べ物以外に、レストランやグロットなどで季節限定の栗料理が出始める。栗のリゾットや肉料理のソースや付け合わせなど、また別の栗の楽しみ方がある。オールシーズン味わえるものではなく、この季節しか出会えないティチーノの秋の味を是非楽しんで頂きたい。時期が合えば、秋の栗祭りも楽しむことが出来るかも知れない。

リッソーネ光子

マリンスポーツ界でアスリートやレポーターとして世界中を飛び回り、1998年にロケで訪れたイタリアに魅せられそのままミラノに移住。その後、縁がありスイスイタリア語圏のルガーノへ移り住んで11年。社会人としてルガーノ大学を卒業後、同大学の大学院でメディアマネージメントを専攻。現在、イタリア語の通訳・翻訳者としてメディアやスポーツ業界の他、多方面で活躍中。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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