スイスの視点を10言語で

全仏オープン開幕、ワウリンカに注目集中

EQ Images

今年初めから好成績が続くスイス人プロテニス選手スタニスラス・ワウリンカが世界ランキングでトップ10に入った。

これまでに世界トップ10入りという偉業を達成したスイス人選手は、ヤコブ・ラセク、マルク・ロセ、そしてロジャー・フェデラーの3人のみだ。ワウリンカは、5月25日に開幕した全仏オープンに、世界ランク10位として初めて出場する。

 過去4年の間、もしフェデラーが世界首位の座を保ち続けていなかったら、ワウリンカの名がメディアのヘッドラインを飾っていたはずだ。
「これが異例であることをスイス人が気づいているとよいのですが。ここ数年の間に、フェデラーは実質的にすべてのタイトルを取りました。それと比較したら世界トップ10に入ることはとても簡単に見えるでしょう」
 と、世界第10位にランクされてまだ2週間弱のワウリンカは語った。

ヒンギスとシュニーダー

 ナダルとフェレールが活躍するスペイン、そしてロディックとブレークのアメリカに次いで、フェデラーとワウリンカという世界トップ10に入る2選手を誇るスイスは、世界第3位のテニス大国となった。35年前にATP ( 男子プロテニス協会 ) ランキングが導入されて以来、プロテニスの男子部門の世界ランキングのトップ10にスイス人選手が2人も名を連ねるのは初めてのことだ。

 2008年の春、23歳のワウリンカは絶好調だった。そして5月25日に開幕した全仏オープンでも、「スタン」の活躍が期待される。アメリカのアンディ・ロディックの欠場によって、ワウリンカが2つめのグランドスラム大会である全仏オープンに第9シードで出場する。

 マルチナ・ヒンギスとパティ・シュニーダーが世界トップ10入りした2006年のように、スイス人男子選手も大健闘中だ。

 今年の初めから、ワウリンカはすでにATPマスターズ・シリーズの2試合で決勝戦まで勝ち残った。1月のドーハ ( Doha ) でのカタール・オープンの決勝ではアンドルー・マリーに、5月中旬のローマ・マスターズの決勝では、ノヴァーク・ジョコビッチ ( 世界第3位で2008年の世界ベストプレイヤー ) にその台頭を阻まれた。

 そこに至るまでの間にワウリンカは、マラト・サフィン、ファン・カルロス・フェレーロ、アンディ・ロディックと、元世界チャンピオンの3選手とも対戦してきた。

子ども時代の夢

 「いまだに信じられません。子ども時代の夢がかないました。目を開けたら、これまでの長い訓練がついに実を結んだことがわかりました」
 とワウリンカは語った。1月には36位、5月初旬には24位とワウリンカは急上昇してきた。
「精神力、体力そして技術のすべての面で以前より向上しました」
 と説明した。バルセロナ・オープンでは準決勝まで、アメリカのインディアンウェルズ ( Indian Wells ) でのマスターシリーズでは準々決勝まで進出し、たて続けに強豪選手を打ち負かすことができることを証明した。

 しかしワウリンカは、すべてが一瞬のうちに崩れ落ちる可能性を承知しており、決して油断はしていない。2007年の春に起きた深刻な膝のけがはまだ記憶に新しい。このあと数週間は普通にプレーできたが、同年8月には屈辱的な敗北に苦しんだ。自分のリズムを取り戻すことができたのはその後しばらくしてからだった。
「不安と真剣に立ち向かわなければならなかった時期でしたが、それによって自分が強くなったと今では思っています」
 とワウリンカは語った。

将来のゴール

 現在のところ、ワウリンカにとって次のゴールは、ローランギャロスで良い成績を修めることだ。それ以外は、まだはっきりしたゴールを設定しておらず、このまま勝ち続けることだと言う。
「ランクが上昇したせいでプレッシャーをもっと感じています」
 と彼は打ち明けた。しかし赤土のクレーコートを得意とするワウリンカにとって、ローランギャロスでの全仏オープンは好きなトーナメントだ。

 ワウリンカの快進撃は必然的にスイスのテニス界に影響が出る。ロジャー・フェデラーは、2009年のデビスカップに第1回戦から復帰するかもしれない。世界首位のフェデラーは、銀色のトロフィーを持ち帰るために、デビスカップへの復帰を真剣に考えていると常に語ってきた。そしてその日は近いようだ。

swissinfo、ジョナサン・ヒルシュ 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳

1985年3月23日ローザンヌに生まれる。身長183センチ、体重78キロ。
2003年にプロテニスプレイヤーとしてデビュー。2004年にデビスカップに出場。2006年にはクロアチア・オープンでプロとして初優勝。
2007年2月に膝を故障したが、その後復帰し、シュトゥツガルト ( Stuttgart ) でのメルセデスカップとウィーンでのトーナメントで決勝戦まで勝ち進んだ。2008年、年明けから快進撃を続け、カタール・オープンとローマ・マスターズでそれぞれ準優勝し、世界第10位となった。

スタニスラス・ワウリンカは、世界トップ10にランクされた4人目のスイス人選手。
1988年11月21日にヤコブ・ラセク ( 当時23歳 ) がトップ10に入った ( 世界第8位 ) 。ラセクは、1989年10月9日までその座に1年弱とどまった後、1週間だけ世界第7位にランクされていた。
ジュネーブ出身のマルク・ロセは1995年7月9日にトップ10入り(10位)。当時24歳のロセは、1995年9月11日に第9位となったが、トップ10にとどまったのは3カ月間。
ロジャー・フェデラーが初めてトップ10に入ったのは2002年5月20日。第8位にランクされた。その後数週間でトップ10から退却したが、同年10月14日に戻って以来、その座を維持している。

ニュース

ビクトリノックスのアーミーナイフ製造現場

おすすめの記事

ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発

このコンテンツが公開されたのは、 スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。

もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
管制室

おすすめの記事

スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。

もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
裁判所のドア

おすすめの記事

「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。

もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
財布からお金を取り出す人

おすすめの記事

スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。

もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
対空防衛システム

おすすめの記事

米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触

このコンテンツが公開されたのは、 米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。

もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
UBSの看板

おすすめの記事

スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。

もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部