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文化財・芸術品取引取り締まり法導入をめぐり、スイス当局とアート界対立

スイスは世界で4番目の文化財・芸術品の取引センターだが、近年違法取引が急増している。そこで、連邦文化局は、文化財・芸術品取引を取り締まる法規制の導入を図る構えだが、ディーラーらは権力の介入の行き過ぎだと抗議し対立している。

スイスには、発掘された考古学史料からモダンアートのオブジェに至るまで、文化財や芸術品の取引を取り締まる国法がない。スイス国内での文化財・芸術品の年間取引総額は不明だが、当局によると、諸外国からの盗難品の返還要請は年々増えているという。盗難品の届け出は、欧州だけでも年間60、000点以上ある。古代墳墓などの遺跡や部族コミュニティーからの盗難品が出回るブラックマーケットを勘定にいれると、その数はもっと増えると思われる。スイスでの取引が増えるにるつれ、盗難品の取引も増えているのは事実だと、連邦文化局のアンドレアス・ロイヒャー国際関係・法規部長はいう。ロイヒャー部長によると、取り締まり法がないために、スイスは盗難品の「ロンダリング」に使われやすい。さらに、国内に持ち込まれた出所不明の芸術品が合法市場に出回るまでの期間は、他国では30年後とされるのに対しスイスでは5年後となっている事も、盗難品のロンダリング地にスイスがしばしば利用される大きな要因となっているとロイヒャ−部長は指摘する。

10月末から政府は、文化財・芸術品の国際取引管理と国際協力促進のガイドラインを制定した「ユネスコ条約1970」の批准について検討している。政府は、ユネスコ条約を国内法の枠組に適応し、文化財・芸術品のスイス国内外への動きの規制強化、国内に持ち込まれた出所不明の文化財・芸術品の合法売買停止期間を現行の5年間から30年間へ延長などの条項を定めた新法を制定する狙いだ。

政府案に対し、スイスのアート・ディーラー、博物館・美術館は、取り締まり規制導入は、アート取引に国家権力の介入を認めることにより、アート市場を刑法の対象とし規制するものだと批判している。国際古代芸術ディーラー協会のデービッド・カーン氏らは、取り締まり法導入は「芸術界への『文化警察』導入」に等しいと抗議、「アート取引の市場とメキャニズムに関し何の知識もない法規で、導入されても何も変わらない」と非難する。また、アート・ディーリングに詳しい弁護士のクリストフ・デーゲン氏は、「政府案は当初の狙いを超えて行き過ぎている。不正行為取り締まりに的をしぼった行動計画ではなく、文化財警察を創設しアート取引とディーラーに国家管理を押し付けるものになっている。」と批判する。ディーラーらは、来年初めまでに、スイスのアート取引、コレクター協会、世界の博物館・美術館の利益において、反取り締まり規制法案をまとめる計画だ。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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