スイスの視点を10言語で

80万の大人が読解困難

読解力に支障をきたす人は、地域に溶け込むのも難しい Keystone

スイス連邦統計局 ( BFS/OFS ) の報告書によると、スイス人の6人に1人が地域言語の読解が困難で、12人に1人が地域言語で会話するのが難しい。

また、新しい移民は昔の移民に比べ、教育程度が高く、スイス人と変わらない。

 この程『読み書き能力と生活能力調査 ( ALL ) 』と題された、2005年の国際的な調査結果を基に、スイス連邦統計局が報告書をまとめた。それによると、スイスに住むかなりの人の基本的言語能力に問題がある。しかし90年代に比べると、僅かながら向上している。

基本的言語能力の欠如

 同報告書によると、16~65才の成人の16%に当たる80万人が、簡単な文章の読解力に欠け、8%に当たる40万人が、住んでいる地域の言語で会話するのが難しい。要するに、スイスに住むかなりの割合の人が基本的な言語能力に欠けている。原因は、教育程度、年齢、性別、スイス生まれか否か、両親の教育程度など多様である。

 同じ教育程度だと、読解力に男女の差はないが、計算能力においては男性の方が多少、女性より上。

スイスドイツ語圏に多少の向上

 90年代にも、IALSという大人の読解力を測る調査がスイスと他のおよそ20カ国で行われた。今回2005年のALLの調査にも参加したこれらの国では、2つの調査間に差は殆ど見られなかった。ただスイスにおいては、多少の向上が見られた。

 特に、スイスドイツ語圏に向上が見られた。またスイス全体において、文盲に近いひどい状態の人は減少した。理由は、90年代は今より教育方法が良くなかったという一言に尽きる。

新しい移民

 スイスは大人の人口の26%が移民によって占められている。移民は一般に、地域文化、地域の言語習得において、その地域で生まれた人より劣っている。しかし、ここ5年間の新しい移民は、基礎的教育しか受けていない過去の移民に比べ、質が高い。

 過去の移民に関しては、スイスのフランス語圏、イタリア語圏では会話はできても、読解力に支障をきたす人が多く、ドイツ語圏ではスイスドイツ語の方言の難しさが読解困難の主要因であった。

 ところが、スイス全土において新しい移民は質が高く、同じ言語を話す人の場合(フランス人やドイツ人を指す)、スイス生まれの人となんら変わりがない。それどころか、語彙力ではスイス人より、優れていたりする。

読書量とコミュニケーション手段

 連邦調査局によると、基本的な会話、読解の能力は大切で、こうした能力のある人は一般に給料の高い職に就けるし、また解雇なども受けにくい。 基本的言語能力を持つ人は、読書量が多く、共同体の活動や公共の利益につながる活動に参加していることが多い。

 当然ながら、こうした人はパソコンや携帯など他のコミュニケーション手段も多く利用しているし、健康面でも、よりよいコンディションを保っている。

swissinfo、外電 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

– 『読み書き能力と生活能力調査(ALL)』は幾つかの国と機関との緊密な協力で行われた。

– 同調査はスイス以外に以下の国で2003年に行われた。ノルウェー、イタリア、アメリカ、カナダ等。2006年はオランダ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、ハンガリーで行われる。

– スイスではスイス連邦調査局が同調査を担当した。幾つかの分野での大人の能力を測ったものである。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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