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CERNの新型荷電粒子加速器、予算オーバー

ジュネーブの欧州原子核研究機構(CERN)に建設中の世界最大の荷電粒子加速器、LHC(大型ハドロン加速器)の予算は、1996年当時の見積もりの約3割り増しになりそうだ。

LHC(大型ハドロン加速器)は、素粒子の基本構造を解明し宇宙の起源の謎に迫るため、荷電粒子を光速に近い速度にまで加速し、高密度の陽子ビームを今までにないエネルギーで正面衝突させるもの。CERNでヒッグス粒子研究に11年間使用された先代加速器LEP(大型電子陽電子衝突型加速器)は昨年11月に止められ、現在瑞仏国境に位置するCERNの地下100mでは、LHCの2006年稼動開始を目指して建設が進んでいる。

ところが、そのLHCの予算は当初の試算を大きく上回ることになりそうだ。当初26億スイスフランで予算が組まれていたが、大幅に超過し少なくとも34億5000万スイスフランにのぼる見込みだ。CERN役員会は12月に予算会議を開き、この建設費をどう工面するかを討議する。CERNは、銀行からの借入、他のリサーチプロジェクト予算の削減、CERN加盟国での超過分の分担などを検討している。役員会では、以上3つの手段の全部を採択することになりそうだが、交渉の難航は必至で、CERNにとっては辛い年になりそうだとネイル・カルダーCERNスポークスマンはいう。

予算オーバーになったのは、最新テクノロジーが予想以上に高価だったことだ。1236の超伝導マグネットと冷却システムの建設費は、当初の予想を大きく上回った。2ケルビン(=ー271℃)で稼動する超伝導マグネットの購入に先立つリサーチ費用も、予算を超えた。world wide web(www)の次世代GRIDのデザインに必要な、LHCからの情報プロセスも1億2000万スイスフランかかるという。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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