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COP16に向けジュネーブで会合

今年8月、スイスとドイツのチームがキリマンジャロの上空で気候変動のテストを行った HANDOUT/Universitaet Fribourg/Gabriela Kindler

ジュネーブで9月2日、3日の2日間、気候変動の交渉をスムーズに進め、特に資金問題解決に焦点を当てたスイス主催による45カ国の「対話の会議」が開催される。

これはコペンハーゲン会議 ( COP 15 ) に続き、今年11月から12月にかけメキシコのカンクンで開かれる「気候変動枠組み条約第16回締約国会議 ( COP 16 ) 」に向け、「交渉団間の信頼性を高め、資金問題解決を一歩進める」会合だ。

資金問題解決への最初のステップ

 「今回の会合が成功すれば、メキシコのカンクンで行われるCOP16は資金問題解決への最初のステップになり、ひいては包括的な合意に向けての道を開いてくれることになる」
 とスイスの連邦環境省環境局 ( BAFU/OFEV ) の国際課長フランツ・ペレ氏は、ジュネーブで9月1日外国人記者団に向け語った。

 コペンハーゲン会議は「失敗と思われる部分も多かったが、少なくとも温室効果ガスの削減の全体的合意と、先進国が温暖化対策や途上国支援などのための基金を創設する合意がなされた」。そのためカンクンでのCOP16に向け、資金面で準備会合を開催することが、COP16 を成功に導くために役立つとの観点から、スイス政府が音頭を取り今回のジュネーブでの会議を開催した。

 その背景には、スイスがCOP16主催国のメキシコと同じ交渉グループ「環境の完全性を求めるグループ ( Environment Integrity Group ) 」に属しているということがある。

1000億ドルの基金

 コペンハーゲン会議 での資金面での合意は、2010年から2012年にかけ300億ドル ( 約2兆5000億円 ) の拠出を先進国間で行い、その後2020年までに1000億ドル( 約8兆5000億円 ) の基金を作成し、毎年この1000億ドルを温暖化対策や途上国支援などに使用していくことだ。

現在、第1段階の資金300億ドルはほぼ集まる見通しが立っている。しかし、残りの700億ドル ( 約5兆9000億円 ) を誰がどう負担するのか、どのような方法で集金するのか、たとえば新しい税制度を設けるのか。さらに、どこの国が優先的に基金を利用するのか、誰が管理するのかといった具体的な問題がある。そして企業などプライベートセクターがこの基金にいかに貢献していくかなど、話し合いの課題は山積みされている。

 だが、参加45カ国にはアフリカ7カ国、アメリカ、日本、中国、インド、ブラジルなど気候変動に関する主要国が含まれ、さらに20カ国は閣僚レベルの交渉団を送っており
 「ブレインスト―ミングなどを行い、今までにあった会議とは違う創造的なものにし、交渉過程において信頼関係が生まれれば、ジュネーブでの会議は成功するだろう」
 とペレ氏は述べた。

1 億4000万フラン ( 約115億円 )

 一方スイス政府は、第1段階の基金の300億ドルに対し、その0.45%に当たる1 億4000万フラン ( 約115億円 ) を連邦議会にかけ、拠出する予定にしている。

 これは世界的な温室効果ガスの排出量に占めるスイスの排出量の割合に従って計算された額に、さらに4分の1を上乗せしたもので、スイスの積極的な姿勢を示すと同時に、経済的に拠出できる国の責任として行ったという。

 また、スイスは「温室効果ガスを排出する汚染者側の国が責任を取ってその量に見合った資金を拠出する」という原則を支持している。この論理に従えば、最も汚染を引き起こす国が、一番多く拠出するのが当たり前だが
 「中国、ブラジルといった新興大国でも、基金に参加してくれればそれは大いに歓迎される」
 とペレ氏は言う。

 ジュネーブの会議では2日後に、公式の決定が出されるわけではない。あくまで交渉プロセスに刺激を与え、カンクンでのCOP16 の基礎作りを目指す。また194カ国は、COP16前の10月に中国で全体会合も持つ。
 
里信邦子( さとのぶ くにこ) 、swissinfo.ch

ジュネーブで9月2日、3日の2日間、45カ国の交渉団が集まり開催される。
主債者側のスイスからはモリッツ・ロイエンベルガー環境相、メキシコからはパトリシア・エスピノザ外相が出席する。
コペンハーゲン会議 ( COP 15 ) で行われた「コペンハーゲン合意」の一部に資金面での合意がある。中でも2020年までに1000億ドル( 約8兆5000億円 ) の基金を作成し、これを温暖化対策や途上国支援などに使用していく計画がある。同会議はそれを具体化していくための、ブレインスト―ミング形式の会合。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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