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Love U 4ever! ~愛の証の日バレンタインデー~

大きさ、色も様々な南京錠。日本で言えば恋愛成就を祈る絵馬のようなものかも。 swissinfo.ch

今日はバレンタインデー。日本では多くの男性がたとえ顔には出さなくても「今年はいくつもらえるかなぁ。」と淡い期待と不安を抱いて過ごす一日に違いない。中高生の男子生徒は「本命チョコ」を期待しつつソワソワと学校に出かけ、30歳代の独身男性は年々着実に減ってく「義理チョコ」に一抹の寂しさを覚え、既婚男性は奥さんや娘から送られた「ファミチョコ」に心安らぐ・・・。“たかがバレンタイン、されどバレンタイン”なのである。

 先日、スイス人の夫に、日本のバレンタインデーには「本命チョコ」「義理チョコ」「友チョコ」「ファミチョコ」「自己チョコ」と色々あって、チョコレートをもらった男性はホワイトデーに何らかのお返しをするのが暗黙の了解になっているのだという話をすると、外国の文化を日本流に発展させて独自の文化として取り入れてしまう典型的な例で、いかにも日本らしいと面白がっていた。

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 ご存じかと思うが、ヨーロッパではプレゼントは男性から女性に贈られるので、何を贈ろうかと悩むのはもっぱら男性である。女性は完全に受け身状態で、ホワイトデーのようなお返しをする日もない。日本にいた頃、職場で誰に義理チョコを送るべきか迷ったことがまるで夢のようである。「あの人に送るなら、この人にも・・・」と数がどんどん増えてしまい、準備が大変になって同僚の女性達と連名で贈ったこともあった。集金したり、買い出ししたり、メッセージを書いたりと、今思えば一苦労だったが、こちらに来てからは気楽にバレンタインデーを楽しんでいる。

 さて、バレンタインと言えばチョコレートの他にも、赤いバラ、香水、シャンペン、アクセサリー等がスイスで人気のプレゼントだが、ここ2、3年前から急に流行りだしたのが、2人の名前を刻んだ南京錠をプレゼントするというもの。これを2人で橋の金網に取り付け、鍵は川に投げ捨ててしまうのだ。当然取り付けた錠前は取り外せなくなってしまうのだが、どうやらそれが2人の愛を分かつことは誰にもできないという堅固な愛のシンボルになっているらしい。

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 実は、我が街エグリザウにもライン川にかかる130m程の橋があるのだが、ここ数年で金網に取り付けられたな南京錠京錠んじょうは100個近くにもなり、住民から景観を損ねるという理由で苦情が出たため、年末に役場職員によってすべて取りはずされた。フックの部分を一つ一つ切断しなければならないので、作業にはかなり時間がかかったはずだが、1ヶ月たった今すでに10数個の南京錠が新たに付いている。今後も“愛のシンボル”と役場のイタチごっこの戦いは続きそうである。

 ところで、バレンタインデーの歴史的背景はご存じだろうか。時代は3世紀のローマ帝国時代まで遡る。当時のローマ皇帝は、結婚が兵士の士気を落とすと考え禁止していたのだが、ある司教(Valentinus)が掟に背いて兵士の結婚に協力したため、西暦269年2月14日に処刑された。それ以来2月14日は彼の名にちなんでValentine’s day 呼ばれ“愛の証の日”として世界中に広まっていったそうである。

 最後に友人の韓国人女性から聞いたこぼれ話を一つ。韓国のバレンタインデーは日本とほぼ同じで、日本から伝わったホワイトデーもあるのだが、独自で面白いのは4月14日に「ブラックデー」があることだ。この日はバレンタインデーにもホワイトデーにも縁の無かった独り者同士が、お互いを慰めあう日だそうだ。その名のごとく、独り者達は全身黒い服装に身を包み、チャジャンミョン(いいもしれない。をで、という黒い麺)を共に食べて励まし合うそうである。この行事をきっかけに新たなカップルが生まれることもあるとか。近々ブラックデーが日本にやってくる日が来るかもしれない。

森竹コットナウ由佳

2004年9月よりチューリヒ州に在住。静岡市出身の元高校英語教師。スイス人の夫と黒猫と共にエグリザウで暮らしている。チューリッヒの言語学校で日本語教師として働くかたわら、自宅を本拠に日本語学校(JPU Zürich) を運営し個人指導にあたる。趣味は旅行、ガーデニング、温泉、フィットネス。好物は赤ワインと柿の種せんべいで、スイスに来てからは家庭菜園で野菜作りに精をだしている。長所は明朗快活で前向きな点。短所はうっかりものでミスが多いこと。現在の夢は北欧をキャンピングカーで周遊することである。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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