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若手確保に悩むスイスの飲食・ホテル業界

スイスの飲食業界は、職業訓練生を含め、スタッフを見つけるのに苦労している。ホテル業界も、長時間かつ不規則な勤務を嫌う若者たちに背を向けられている。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)も、こうした傾向に拍車をかけた。

それは統計にも明らかに表れている。2020年にレストランの接客スペシャリストとしての職業訓練を開始した若者は429人。11年の731人と比べて、40%も減少した。

ヴァレー(ヴァリス)州マルティニのレストラン、ラ・ポルト・ドクトデュールの支配人ヴァレンタン・ゲ・デ・コンブさんは「特にコロナ以降は、非常に難しい状況だ。飲食・ホテル部門での職業訓練を希望する、やる気のある若者を見つけるのはほぼ不可能だ」と独語圏のスイス公共放送(SRF)外部リンクに語った。「若者たちは週末や夜に働くのを嫌がる」

スタッフのマルク・ゲイさんは例外だ。19歳のゲイさんは、3月にレストラン業界が主催した職業訓練生の接客コンテストで優勝した。記事冒頭の動画でも分かるように、仕事に熱い情熱を持っている。

ホテル業界

ホテル業界もまた、志願者不足の影響を受けている。政府統計によると、同業界で職業訓練を始めた若者は11年には379人だったが、20年には252人まで落ち込んだ。

SRFが取材したグラウビュンデン州東部パッスークのホテルスクール(ホテル勤務のプロになるための教育・実習を行う学校)では、不規則な勤務時間を気にしないと答える学生もいる一方で、労働環境の改善策を提案する学生もいた。飲食分野を学ぶマーラー・ブルカンさんは、企業側が決めることだと補足しつつも「週4日勤務制は1つの選択肢だ」と答えた。ブルカンさんは、将来働く際には、雇用主から公正な評価と労働条件が提供されることを期待する。

志願者不足は、今後のホテル業界に影響を及ぼすと予想される。

ヴァレー(ヴァリス)州ホテル経営者協会会長のマルクス・シュミットさんは、例えば業務のデジタル化や、調理に時間がかかるメニューの削減といった対策が必要になるだろうと語った。「ホテル業界にとっては大きな変動、そして近代化を意味する」。しかし、悪いことばかりではない。「私たちが提供するものは今後変わっていくが、悪くなることはない」

(英語からの翻訳・アイヒャー農頭美穂)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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