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月は地球の一部?

地球と月は同じ物質でできているらしい Keystone

地球と月は同じ物質から成る。連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) とドイツのケルン大学 の研究者が、12月20日付けの米科学誌ネイチャーに発表した。

この論文では、地球と月は同じ物質で作られていることを証明できるという。これは、月は地球に衝突した天体の破片が集まって形成されたという通常説を覆すものである。

 「まずわれわれは2つの説を想定しています。1つは、ビックバンの際に、地球の1部が離脱し月となったという説です。もう1つは月を形成するほかの天体のマグマが冷却した際、地球の表面にもマグマが積もった。そこで地球の核とマグマに激しい化学反応が起こったという説です。この2つの説のいずれかだと思います」
 とトルステン・クライネ教授は説明する。

指紋が同じ

 地球と月の化学的関係は、同位元素 ( アイソトープ ) を調べれば分かるという。太陽系の天体は、人の指紋がそれぞれ違うように、同じ原子番号を持っている物質でも中性子の数が違う。今回の研究では、タングステン182 ( 陽子74個、中性子108個 ) が測定された。タングステン182は、天体や隕石 ( いんせき ) に多く見られる典型的な元素だ。

 月が地球に衝突した天体の破片の集まりだとすれば、地球の「指紋」と月のそれとは違うはず。ところが、この2つの「指紋」は一致した。 

地球と月の年齢

 タングステン182は、天体の年齢を測定することに使われる。タングステン182はハフニウム182が変化した元素だ。ハフニウム182は、太陽系が誕生した直後には存在していたが、9000万年で半減するペースで時と共にタングステン182に変化し、太陽系のビックバンから6000万年以上たった時点でハフニウムは無くなってしまう。

 タングステン182を正確に測定してみると、月から採取された土のサンプルすべてに、同じ同位元素があった。また、ハフニウム182の量から月は45億年から44億5000万年前に形成されたという結論に至った。さらに、ビックバンにより地球が生まれたとすると、地球と月とは同じ時に生まれたと考えられるという。

swissinfo、ウーリッヒ・ゲッツ 佐藤 夕美 ( さとう ゆうみ) 訳

すでに2年前、連邦工科大学チューリヒ校 ( ETHZ ) の同位元素研究所のトルステン・クラインネ教授とそのチームは、天文学界でセンセーションを巻き起こす研究発表をした。
月の年齢とそれに伴う現在の地球の年齢を確定したという発表だ。クラインネ教授氏らの説は、45億2700万年前、つまり太陽系が誕生して3000万年から5000万年経たった後に火星ほどの大きさの天体と地球が衝突し、地球の衛星が誕生したというもの。この説は2005年秋に米科学誌サイエンスで発表された。
この説が発展したのが今回発表された説。「月の土のサンプルがあまりなかったので、不確定要素もあった」とクライネ氏は言う。その後アメリカの国立航空宇宙局 ( NASA ) から大量のサンプルを受け取り、研究が進んだ。この研究を通して、2年前想定した月と地球の年齢が多少若返り、44億5000万年から45億年であると見られるという。

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