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E.T.は存在する

「SFの大ファンだった」とステファン・ウドッリ 氏は話す swissinfo.ch

「宇宙にほかの生命体が存在することは科学者間で確信されている」とジュネーブ大学天文学部教授のステファン・ウドッリ 氏は断言する。

少年の頃SFの熱狂的読者だったウドッリ 氏は、ヴァレー/ヴァリス州の美しい星空を眺めて育った。その後物理学を専攻し、世界で初めて太陽系外惑星第1号を発見したミッシェル・マイヨール教授の研究室に1994年入った。ほかの生命体の存在を確信するウドッリ 氏にインタビューした。

swissinfo.ch : 宇宙にほかの生命体が存在することを確信なさる根拠は何でしょうか。

ウドッリ  : もちろんこの確信に公式な証拠はまだありません。しかし、科学的データに基づいたさまざまな兆候が現れ、それらを統合していくとわれわれは宇宙にほかの生命体が存在すると考えざるを得ません。

生命が誕生し進化できる環境を持つ場所、例えば惑星などを探し続けてきました。そうするうちに、まだ地球のような惑星ではありませんが、地球の10倍以内の大きさの巨大地球型惑星 ( スーパーアース ) で、恒星 ( 太陽系では太陽が恒星 ) により近い、従ってかなり高温の惑星が見つかっています。しかし、傾向としては、やがてわれわれの地球のような 、恒星から適度の距離を保っている惑星が見つかる方向にあります。

これが一つの理由です。もう一つは生命を形成するあらゆる化学物質、炭素、酸素、窒素などは、すべて恒星中で生成されるという事実です。恒星の周りにある惑星は恒星と同時に形成されます。従って恒星が形成されるのと同じプロセスを通して、かなりの時間がかかりますが、惑星や生命を形成する化学物質も形成されていきます。

その結果、もし物理学の法則が宇宙のどこででも同じだとしたら、ほかの惑星で生命が形成できないわけがないのです、なぜ地球だけが生命を形成したといえるのでしょうか。

swissinfo.ch : ほかの生命体の存在を確信していく過程は、徐々に行なわれたのでしょうか、それとも太陽系外惑星の探求者 ( プラネット・ハンター ) として、これも一つの目的だったのでしょうか。

ウドッリ  :  確信は経験からきました。つまり科学的発見の積み重ねから、確信していったのです。しかし、もちろん家族的、社会的環境も無視できません。少年の頃SFの熱狂的読者だったことで、科学的事実が構築される前にほかの生命体の存在を信じたかったという傾向はありますが。

しかし、あくまで科学的事実が次々とテーブルの上に載せられていったからです。今、ようやくほかの生命体の存在を確信できる時期がきたといえるのではないでしょうか。つい30年ぐらい前までは、生命が現れる過程はあまりに複雑なので、恐らく宇宙に存在する人類はわれわれだけだと考えられていました。

しかし天文学の発達のお陰で大転換が起こり、ほかの生命体がどこかに存在すると考えるのが一般的になっています。特に科学者の間では確信されています。一般の人々では、映画やほかのメディアがあまりにもこうした考えを映像にしたため、多くの人が宇宙人の存在を画面上で信じていますが。

いずれにせよ、これはコペルニクス的転回です。今までは地球を宇宙の中心に据え、そこに太陽があり、また人間もいると考えた。しかしこの中心の地球から人間を取り除いてみると、考えは全く変わってきます。

swissinfo.ch : 宇宙人に出会う日を想像したとしたら、それはどのようなものでしょうか。

ウドッリ  : もし宇宙人が存在し地球まで来ることができるとしたら、それは彼らがわれわれ以上のテクノロジーを持っているということです。われわれ地球人は月にやっとたどり着いただけです。またその月にも簡単に戻れるか確かではありません。

従って、もし宇宙人がわれわれの近くにまで来て、もし意地悪なタイプだったとしたら、もう人類はとっくの昔に滅びていたでしょう。つまり彼らはやさしいタイプなのです。わたしは楽観的な見方をすると思いませんか?

swissinfo.ch :  もし、宇宙旅行が実現したら宇宙に旅立つ人はいるでしょうか。またそれはいつになると思いますか。

ウドッリ  : もし大型の宇宙船をチャーターでき、20日間から30日間の宇宙の旅に出られる、しかも家族と共に旅行中生き延びて行くために必要なものすべてを載せ、ペットなども一緒にということになれば、候補者は簡単に見つけられると思います。

いつの時代にも冒険好きな人はいるものです。飛行機が発明された時代や大航海の時代にそうであったように、ちょっとクレージーな人たち、時代を一歩進めるために危険を冒してもかまわない人たちがいます。

しかし現在、技術的には不可能です。だからといってこの宇宙旅行の可能性を考えるなと言っているのではありません。反対に科学的に考えを推し進める人や、また旅行に出た家族が生き抜くにはどうしたらよいかといった宇宙旅行の社会的側面を考える人もいます。そのための実験を行う人もいるくらいです。

つまり、人々はこうしたことを考えるようになっているということです。しかし、実現にはまだ数十年はかかるでしょう。
 
マルク・アンドレ・ミゼレ、swissinfo.ch
( 仏語からの翻訳、里信邦子 )

ジュネーブのステファン・ウドッリ 氏の研究チームは2009年12月16日、フランスとアメリカの天文学研究者の協力を得て、新しく第2回目に発見した巨大地球型惑星のGJ1214b を英科学誌ネイチャーに発表した。

巨大地球型惑星とは地球の10倍以内の大きさの惑星を指す。GJ1214bは、太陽の5分の1の大きさの恒星の周りにあり、地球から40光年の距離にある。また、75%が水と氷、25%が鉄と二酸化ケイ素からできている ( 第1回目に発見された巨大地球型惑星CoRoT-7bは岩石で覆われていた ) 。

GJ1214bは恒星に近いため、200度の高温を持つと予想され、そのためわれわれが想像するような生命体は存在しない。しかしこの発見はウドッリ 氏に「自然は全く違う形の惑星を作ることを教え」、生命体を宿すような惑星の探求は継続する。

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