The Swiss voice in the world since 1935

職業訓練生受け入れ、スイス企業にメリット

painter apprentices
塗装工の職業訓練にかかるコストは、ITスペシャリストのものと比べると安価だ Keystone / Steffen Schmidt

スイスの企業は、職業訓練生を雇い、自社で育成すると年間1人当たり3千フラン(約33万円)超の利益を得られるかもしれないという調査結果が出た。

スイス連邦職業教育訓練所外部リンクの4回目の「費用対効果研究外部リンク」によると、見習いプログラムを持つほとんどの企業が、外部から新たに人を雇うより、自社で労働者を訓練した方が安上がりだったと答えた。

>>スイスの職業訓練ってどんなシステム?

スイスの職業訓練は、学校での教育と受入先企業での実習を組み合わせた「二重システム」制度で、多くの国で参考にされている。毎年、日本の小・中学校に相当する義務教育を修了した15〜16歳のうち、3分の2が職業訓練に進む。

このため政府は、社内トレーニングの重要性を促進することに注力する。

>>14歳でキャリアを選択するのは早すぎ?

しかし、企業が職業訓練プログラムを提供するか否かは、費用対効果が大きなカギを握る。調査を委託したスイス連邦教育研究革事務局(SERI)は、職業訓練提供の余地がある企業のうち、実際に実施しているのは全体の約40%外部リンクにとどまると試算。中小企業にとっては負担がより大きいと指摘する(例えば、適切な研修指導者を見つけることなど)。

訓練制度のある5700社超とそうでない4千社超が、調査に協力した。対象は、2016~17年度の連邦職業教育・訓練資格取得コース(VET、3~4年)のほか、今回初めて2年間の連邦VET履修コースも含んだ(より学力の低い生徒向けの、求められるスキルが比較的低い職業)。

費用は業種による

職業訓練1人にかかる費用総額は年間平均2万8070フランだった。これには給与(一般的に低い)のほか、採用・人件費、設備・材料費を含む。

企業の純利益は、年間平均3万1240フランだった。企業の3分の2が純利益があったと報告したが、残りは純利益よりも職業訓練に多くの時間を費やしたと答えた。

これは、一部の職業訓練は他の分野よりもコストが高いため。例えば左官・内装は、IT専門家や「ポリメカニクス外部リンク」技術者といったハイテク、精密機械業界よりも訓練コストは安い。ITやハイテク業界ではいずれも追加の職業訓練が必要だと、調査付随の記事は指摘する。しかし、訓練生はそのまま企業に雇い入れられるため、企業にとってコストをかける価値はあるとしている。

(英語からの翻訳・宇田薫)

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

スマートフォンの画面とそれを操作する手

おすすめの記事

スイス・ニトヴァルデン準州の小学校、スマホ禁止へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス中部ニトヴァルデン準州は5日、スマートフォンをはじめとするIT機器の小学校での使用禁止を発表した。授業目的や緊急時などを除き、全面的に学校でスマホが使えなくなる。

もっと読む スイス・ニトヴァルデン準州の小学校、スマホ禁止へ
バーゼルの路面電車

おすすめの記事

バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ

このコンテンツが公開されたのは、 5月11~17日の欧州国別対抗の音楽祭「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(ESC)」開催中、バーゼルでは「カラオケ・トラム(路面電車)」が運行する。ビンテージ車両で90分間かけて街を走る間、乗客は無料で歌い踊ることができる。

もっと読む バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
大阪・関西万博

おすすめの記事

スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール

このコンテンツが公開されたのは、 日本を公式訪問中のスイスのイグナツィオ・カシス外相は22日、2025年大阪・関西万博のスイス・ナショナルデーのオープニングセレモニーに出席し、結束と対話を呼びかけた。

もっと読む スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
クラウス・シュワブ氏

おすすめの記事

WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任

このコンテンツが公開されたのは、 世界経済フォーラム(WEF)は21日、創設者で会長のクラウス・シュワブ氏が同日付で辞任したと発表した。

もっと読む WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
コーデリア・ベール

おすすめの記事

TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出

このコンテンツが公開されたのは、 米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。

もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部