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WHOの総会開幕 焦点は感染症防止対策

鳥インフルエンザの後、世界的なインフルエンザが流行しないか多くの人々が恐れている Keystone

世界保健機関(WHO)の全加盟国192カ国がジュネーブに集まり、毎年5月に開催される世界保健総会(World Health Assembly)が16日から開幕。保健衛生の面での国際協力が2週間に渡り話し合われる。

今年はSARSや鳥インフルエンザの流行などからの教訓を得て、感染症に関する取り決めである国際保健規則(International Health Regulations)を36年ぶりに改正するのが焦点になりそうだ。

議題はこの他、保管されている天然痘のウイルスを廃棄するかどうか、ポリオ退治の進展、自然災害時における感染症の防止、エイズ(HIV/AIDS)予防と治療、薬の浪費問題などといった様々な医療に関する問題が取り扱われる予定だ。 

 最近、禁煙の場所が増え我々の日常にも影響するようになった「たばこ規制枠組み条約」もWHO総会で2003年5月に採択されたものだ。(今年の2月に発効)

今年の焦点

 WHOによると近年に発生した鳥インフルエンザは1986年の世界的なインフルエンザ流行に近い広がりを見せた。このような世界的な感染を防ぐには1960年代から書き換えられていない国際保健規則の改正が必要だ。現行の規定ではペスト、コレラと黄熱病の通報義務を定められているだけだからだ。 

 スイスの厚生省のパスカル・クシュパン大臣も「今後、この国際保健規則が国際的な感染症を防ぐ良い効果的な手段、予防対策になることを望んでいる」と語った。国際保健規則ではSARSや鳥インフルエンザなどの感染症が発生した場合に、どの段階で国際的な脅威と捉えるかといった情報収集や通告義務を強化するのが目的。また、一時的に旅行勧告などを発効する緊急委員会の創設など含まれる。国際保健規則は今週中に採択される予定だ。

今年も台湾の参加問題浮上

 台湾は1997年以来、WHO総会へのオブザーバー参加を求めてきた。今年も初日に台湾問題を総会の議題に取り上げるかどうか、総務委員会が検討したが、中国の反対が強く、参加を見送ることになった。  

 なお、16日に中国の高強衛生相はジュネーブで中国とWHO間で台湾に関する覚書を交わしたと発表。この覚書によって「WHOと台湾の間での技術協力が可能になる」と同氏は総会で発言している。しかし、この覚書について台湾当局は知らされていない。台湾の衛生当局はこれに対して17日、会見を行い、この覚書に関して「秘密の合意であり、中国の代表団として出席することができるといった内容は到底受け入れられない」と抗議した。


swissinfo  屋山明乃(ややまあけの)

-毎年、5月に行われる世界保健機関の総会はジュネーブで16日から25日まで開催され、世界192カ国が参加する。

-これまでも、WHO総会は「たばこ規制枠組み条約」などといった重要な国際的政策を打ち出してきた。

-国際保健規則が改正されると感染症が発生した場合の通告義務があるのは天然痘、ポリオに加えて新たに重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザが変異した新型インフルエンザなど。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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