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WHOは北京以外の渡航自粛勧告を解除

WHOのヘイマン感染症対策部長の中国訪問により、渡航自粛勧告が見直された。 Keystone

世界保健機関(WHO)は13日、ジュネーブでの記者会見で新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)の感染拡大防止のための渡航自粛勧告(渡航延期勧告)について中国の河北省、山西省、天津市、内モンゴル自治区の4地域を解除したと発表。さらに、17日、WHOは台湾への渡航自粛勧告も解除し、勧告が残るのは世界で中国の北京だけになった。

新型肺炎の流行地域については、中国で指定されていた10地域のうち、北京を除いた9地域である広東省、河北省、湖北省、内モンゴル自治区、吉林省、江蘇省、山西省、陜西省、天津市が除外される。指定地域に残るのはカナダのトロント、中国の北京、香港と台湾になった。

台湾と北京はまだ?

 渡航自粛勧告の解除はWHO、ヘイマン感染症対策部長の中国訪問(11日、12日)の結果である。これまで、中国政府の新規感染者に関する報告の信憑性が問われていたが、WHOイアン・シンプソン報道官は「中国で新しい膨大な量のデータを入手した」ことと「感染者リストやコンタクト、治療に関する詳しいデータがやっと報告された」ことで「中国の報告は信用できる」と述べた。しかし、北京が残ったのは「感染がまだ完全にコントロールされていないため」という。解除された中国の4地域では新たな感染が20日間、つまり、潜伏期間の2倍が過ぎたため、WHOはSARS感染が制圧されつつあると見ている。

 台湾が解除されなかった理由については、第一に、新しい感染ルートの分からない患者が出たこと、以前として患者数が200人以上いること、台湾からブラジルへの感染者が拡大したケースが出ていることなどを挙げた。

トロントは「重度」に格上げ

 新たな感染者が4人出たカナダのトロント(これまでの患者数は243人)だが、渡航自粛が再度勧告されることはなかったものの、感染指定地域として「中度」から「重度」へ格上げされた。「重度」はSARS感染者との接触がなかったと思われるのに感染が起こる(感染ルートが明らかでない)場合に指定される。トロントから米国に旅行した感染可能性のある患者がトロントのSARSのないと思われていた病院訪問で感染したと見られることによる。

今後中国に望むのは ?

 WHO報道官は「中国は大変、改善した」と評価したうえで、「データの分析がまだ遅く、もっと完全な監視制度が必要だ」と述べ、さらに、「これは中国だけでは技術的、財政的に難しいので国際社会の助けが必要だ」と説明した。中国には現在、約25人のWHOスタッフがおり、ここ2ヶ月間、各省を視察し、新型肺炎の感染状況を監視している。

世界SARS状況

 16日のWHO報告によると世界の新たな感染者は8人(台湾が6人、カナダが1人、米国1人)出ており、これまでの感染者数は8460人、死亡者は799人となっている。死亡患者がもっとも多かったのは中国の346人、続いて香港の295人、台湾の83人。


スイス国際放送、A.Y.

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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