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WHO総会はSARSにかかりき

今年のWHO総会は健康チェックを受けないと参加できない。 Keystone

世界192カ国の加盟国が重要な政策を10日間、話し合う総会の今年の焦点は世界で約8千人以上もの感染者を出した新型肺炎=SARSの対策。SARS対応を総括した報告書が加盟国に提出され今後どのように、監視、連絡などの協力関係を強化するかなどが話し合われる予定。

今年の総会では10日以内に感染者と接触した各国代表の参加は避けるように指令が出されたうえ、会場では代表団以外の記者なども健康チェックを受けないと参加できない。WHOは「混乱を避けるため」と説明している。

SARS退治はなお続く…

 ブルントラント事務局長は開会にあたり「新型肺炎との戦いはまだ終わっていない」と述べ、22日、台北に限定していた渡航延期勧告を台湾全土に拡大、一方、23日、4月2日以来、出されていた香港、中国の広東省への渡航延期勧告は解除した。これを受けて同事務局長は「世界で最初に発生した広東省、隣接する香港でSARSを封じ込められたことを歓迎する」と述べた。

焦点のSARS対策

 WHOだけでも今年から新型肺炎で300〜400万�jを出費した。依然として終息しない中国の感染が世界経済にも影響を与えることから、中国に進出している企業らが基金を提供することを申し出た。WHOは世界経済フォーラム(WEF/本部・ジュネーブ)と協力し、新型肺炎の緊急対策基金を創設することも発表。WHOのキム博士は「9月までに1億ドルを集める見通し」と語った。

台湾参加は?
 
 今年度はSARS被害の大きい台湾(23日の時点で483人感染うち60人死亡)への同情が集まり、オブザーバー参加への期待が高まったが、パキスタンなどに支持された中国の強硬な反対で初日に追加議題にしないことが決まった。台湾は中国が国連に加盟した1972年以来WHOを脱退したが、97年からは毎年WHO総会へのオブザーバー参加を求めてきた。台湾側は「SARS対応が遅れたのは中国のせい。WHOの専門家が派遣されたのも遅すぎた」と主張しているが、WHOの感染対策部長のヘイマン博士は「台湾は現在のステータスから不利益を被っていない」との立場を通している。

新しい事務局長

 21日には、今年の1月に理事会メンバーから次期事務局長に選挙で選ばれた韓国の李鍾郁(イジョンウク/現WHO結核対策部長)氏が加盟国からの承認を得た。李氏は「新型肺炎は新しい感染症に対する世界のもろさを現した」と指摘し、新型感染症に対する監視体制の強化の必要性を訴え、資金の9割を各国のローカルレベルでの監視体制強化に費やす方針を明らかにした。李氏は7月21日に就任し、任期は5年。アジアから選出は中島宏氏(88年〜98年まで)以来2人目。李氏の夫人は日本人で日本語が堪能という。


スイス国際放送、A.Y.

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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