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WHO、新型肺炎=SARSの渡航自粛勧告をさらに拡大

台湾の桃園空港で看護婦が搭乗客をチェック。台湾では新型肺炎SARSの感染患者がさらに増えている。 Keystone

これまで世界保健機関(WHO)は新型肺炎の拡大感染防止のために不急の旅行は慎むよう、「渡航自粛勧告」を香港と中国の広東省、北京、山西省へ出していたが、さらに、台湾の台北、中国の天津、内モンゴル自治区の3地域を加えることを8日、ジュネーブの記者会見で発表した。

感染症対策部長のヘイマン博士は「香港、シンガポールやトロントではSARSはピークを越えたようだが、これらの地域はまだ感染が拡大しているのでリストに加えた」と述べた。SARS発生以来、世界の感染者数は7000人弱、死亡者は500人に迫っており、世界29カ国に及んでいる。

新たな地域追加

 新たに加わった台湾では新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)感染者125人、うち死亡者11人(7日、WHO報告/8日、台湾衛生当局は感染者数を131人と発表)を記録しており、WHOは感染ルートが特定できる3次、4次感染が広がっている「中度」の感染段階に指定していた。ヘイマン博士は「台湾から国外へ感染が拡大したケースはないものの、毎日5人以上感染者が増えていることと、全体の感染の大きさから決断した」と説明。また、「中国は未だに懸念の中心である」とともに、中国で感染拡大が収まらない理由を問われて、「中国政府は多大な努力をしているものの、中央政府と地方政府の連絡などに問題があり、まだ完璧な国内システムが確立していない」ことなどを理由に挙げた。なお、WHOの感染地域の段階表で中国・内モンゴル自治区と天津の感染規模は「不明」とされていた。

 日本外務省は7日夜、すでに台湾への渡航に関して注意喚起の水準を「渡航の是非を検討」に引き上げていた。

SARSピークを超える ?

 ヘイマン博士は「香港、シンガポールとカナダのトロントでは感染者数が減少しており、SARSはピークを超えたようだ」と述べ、20日以来、新たな感染報告がなく、感染が収まったと思われる国にブラジル、クエート、アイルランド、ルーマニア、南ア、スペイン、スイス、イギリスとアジアではタイとベトナムを上げた。

WHO総会への勧告

5月に毎年行われる総会(19-28日)に関して、WHOは各国にSARS患者やSARS患者のいる病院と10日以内に接触のあった代表者は参加しないように求める手紙を送った。また、この総会で新型肺炎SARSの対応などについても話し合われる予定。

死亡率上方修正について

 WHOは7日に当初(3月から4月頃)は3〜4%と見られていたSARSの死亡率を14〜15%へ修正した。この死亡率上昇の理由についてヘイマン博士は「第一に、現在は感染発生当初より多くの情報を得ていること。第二に、最初は医療関係者への感染が多く、つまり健康で働き盛りの年齢層に感染が多かったのに関して、感染が拡大するにつれて様々な年齢層に移ったので変化した」と説明する。死亡率を年齢別にみると、24歳以下は1%、25〜44歳までは6%、45歳〜64歳までは15%、そして65歳以上は50%以上と報告されている。


スイス国際放送、A.Y.

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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