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太陽エネルギーで料理する 森を乱伐から守る

小さい箱がマダガスカルの森を乱伐から守る。 adesolaire.org

マダガスカルの森林乱伐をストップさせようと、スイス人のレグラ・オクスナー氏は太陽エネルギーで料理をする方法を考案した。

調理の際、薪を使わず太陽の熱を使えば、自然保護になる。これを可能にするコンロを現地で製造しており、一つの産業として確立されれば、新しい労働市場も作られるという。

レグラ・オクスナー氏は30年前、開発途上国援助の活動の一環に従事するためマダガスカル南部に住んでいた。この間、女性の生活や労働について援助する活動を通して、現地の人たちと親しくなり、マダガスカルを深く知るようになった。 
オクスナー氏はマダガスカルを数年前に再訪したが、自然破壊の深刻さに驚き、どうにかしなくてはならないと思った。「森全体が一つ、消えていたのです。巨木のバオバブが生い茂っていたところも、木は跡形もなく消え去っていました」。
オクスナー氏がマダガスカルを後にしてからいままでの30年足らずの間に、マダガスカルの森林の9割が伐採で消滅した。森林が消滅したため、自然界の摂理にも悪影響が顕著で、「動物や植物の種類が減少し、カメ、キツネザル、カメレオンがいなくなった」とオクスナー氏の心は痛んでいる。

太陽エネルギーのコンロの人気

 伐採された木はほとんどが薪として使われる。薪は料理するためなどに使われるが、薪の代わりになるものはないのか。祖国スイスで、太陽エネルギーを使って料理をする技術を開発したエドアルド・プロブスト氏に出会い、「マダガスカル・スイス太陽エネルギー開発協会(ADES)」のプロジェクトがスタートした。

 コンロは断熱剤で囲われた簡単な箱である。箱の上には、ガラスが2枚付いている。ガラスを通して太陽の熱が箱に溜まるようになっており、曇りの日でも短時間で箱の中は100度まで温度が上がる。

 太陽エネルギーコンロは、マダガスカルの秘書や運転手の1ヶ月の給料に相当する60フラン(約5,000円)である。高価な商品であるにもかかわらず、2001年から販売を始めてすでに、650台を売りさばいた。このコンロがあれば、薪を求めて森を何時間も歩き回る必要がない、煙に撒かれながら料理する必要もないというメリットが人気になった理由とオクスナー氏は見る。

 コンロの導入に伴い、太陽エネルギーを利用しようとする村が出始め、電球やラジオを太陽エネルギーで賄うところも出てきた。こうした村では、電気代も大幅に節約されているという。

現地で生産

 太陽エネルギーのコンロはマダガスカル国内で作られている。工場と販売所が併設されており、マダガスカル人の責任者の下、7人の従業員が働いている。もちろん工場や店で必要な光熱源は太陽と風のエネルギーを利用。材料にはスイスから運ばれたリサイクル素材も活用されている。

 コンロの利用をさらに広げるため、学校や病院でもこのコンロを使ってもらうよう働きかけたところ、地方自治体からの問い合わせもあった。需要はまだまだ増えると見込まれ、すでに生産拠点をもう一つ増やす予定だ。

スイス国際放送 クリスティアン・ラーフラウブ (佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)

マダガスカルの9割の森林は伐採されてしまっている。
伐採された木材の8割は薪に使われる。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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