スイスで人種差別の報告件数が増加している。人種差別被害者カウンセリングセンターがまとめた年次報告書によると、2022年に報告された人種差別は708件で、前年に比べ78件増加した。
このコンテンツが公開されたのは、
連邦内務省人種差別対策委員会(FCR)と人権団体「humanrights.ch」が23日発表した。カウンセリングセンターに寄せられた報告によると、差別を受けた場所は前年と同様、職場(133件)と教育施設(116件)が最も多かった。また、地方行政(96件)、近隣・地区(82件)、民間企業(67件)でも目立った。
報告書によると、報告件数の増加は差別への意識の高まりが背景にある。特に教育施設ではその傾向が顕著で、生徒やその家族が積極的に報告するようになった。カウンセリングセンターの代表を務めるジーナ・ベガ氏は、教育機関が人種差別に対してより注意を払うようになり、学校の校長など運営側からの報告が増えたことも寄与していると話す。
差別の理由としては、黒人差別(276件)と外国人嫌悪(275件)が最も多かった。国連の作業部会は昨年「スイスにおける人種差別の蔓延とアフリカ系住民の人権状況について」懸念を表明した。差別の内容は、不平等な扱いや誹謗中傷が多い。
しかしベガ氏は、その他の人種差別も同様に撤廃に向けた議論が行われる必要性があると訴える。例えばアラブ系への人種差別は47件、イスラム系へは44件、アジア系へは40件の報告が寄せられている。報告書は、被害を訴えない人の多さを考慮すると、報告書にある数字は「氷山の一角」に過ぎないと警告している。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
おすすめの記事
スイス公共放送協会、次期会長に初の女性トップ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス公共放送協会(SRG SSR)は25日に開いた総会で、次期会長にドイツ語圏スイス公共放送(SRF)で文化部長を務めるジャーナリストのスザンネ・ヴィレ氏(50)を選出した。女性のトップ就任は初めて。
もっと読む スイス公共放送協会、次期会長に初の女性トップ
おすすめの記事
スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス下院委員会は連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)の留学生の学費をスイス人学生の3倍に引き上げる案を可決した。27日に始まる夏期本会議で審議する。
もっと読む スイス、国立大留学生の学費を3倍に引き上げへ 下院委員会が可決
おすすめの記事
FIFA、脱スイスに向け定款改正
このコンテンツが公開されたのは、
国際サッカー連盟(FIFA)は17日、本部をスイス・チューリヒ以外に移せるよう定款を改正した。
もっと読む FIFA、脱スイスに向け定款改正
おすすめの記事
ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
このコンテンツが公開されたのは、
6月15~16日に開催されるウクライナ平和サミットの舞台として、ルツェルン湖を望むホテル「ビュルゲンシュトック・リゾート」が注目を浴びている。かつては庶民も受け入れられる高級リゾートして地元に愛されていたが、近年は事情が違うようだ。
もっと読む ウクライナ平和サミットの舞台スイス・ビュルゲンシュトック 地元住民は離心
おすすめの記事
スイスで花粉症増加 気候変動・大気汚染が背景に
このコンテンツが公開されたのは、
気候変動の影響で、スイスで花粉症患者が増加している。有症率は2割で、経済損失は最大で年間6900億円に上る。
もっと読む スイスで花粉症増加 気候変動・大気汚染が背景に
おすすめの記事
ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
このコンテンツが公開されたのは、
欧州国別対抗の音楽祭「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」の決勝が11日、スウェーデン南部マルメで行われ、「ノンバイナリー」を自認するスイス代表のNemo(24)が優勝した。会場周辺ではイスラエル参加に対する大規模な抗議活動も行われた。
もっと読む ユーロビジョン、「ノンバイナリー」自認のスイス代表優勝 イスラエル参加に抗議も
おすすめの記事
スイス北東部でオーロラ観測
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北東部のゼンティス山頂で6日未明、オーロラが観測された。
もっと読む スイス北東部でオーロラ観測
おすすめの記事
ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアーミーナイフの製造で知られるビクトリノックス社は、世界で広まるナイフ規制強化の波に対応するため、刃のないモデルの開発に取り組んでいる。カール・エルズナー最高経営責任者(CEO)がスイス紙のインタビューで明かした。
もっと読む ビクトリノックス、刃のないアーミーナイフを開発
おすすめの記事
スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦運輸省民間航空局(BAZL/OFAC)が3日発表した2023年の航空安全報告書によると、民間・小型航空機の事故件数は9995件と、前年から24%増加した。
もっと読む スイス飛行機事故、24%増 紛争地上空ではGPS妨害も
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
続きを読む
おすすめの記事
スイスがもっと人種差別と闘うべき理由
このコンテンツが公開されたのは、
国連は最新の審査報告書で、スイスには人種差別に対処できる明確な法律が存在しておらず、被害者が訴えることのできる手段が不足していると指摘した。活動家は訴訟費用が法外に高いと話す。
もっと読む スイスがもっと人種差別と闘うべき理由
おすすめの記事
スイスで受けたアジア人差別
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ルツェルン大学に留学中の台湾人女性は、新型コロナウイルスの感染が広がる欧州で、アジア人であることでさまざまな差別的言動を受けた。
もっと読む スイスで受けたアジア人差別
おすすめの記事
5人の若者が語るスイスの人種差別
このコンテンツが公開されたのは、
世界中で異なる人種に対する姿勢を見直す動きが広がっている。スイスで肌の色が違う人々は、どんな扱いを受けているのだろうか。
もっと読む 5人の若者が語るスイスの人種差別
おすすめの記事
「肩肘張って生きてる」 スイスで暮らすアフリカ系黒人の場合
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで暮らすアフリカ系黒人のレスさん(27歳)。スイスにはまだ黒人を見ると条件反射的に怖がる人がいることに触れ、「子供の頃の僕のことは可愛いと言っていた人が、18や19歳に成長した僕の姿を見た途端、持っているカバンをきつく握り締める」と話す。
もっと読む 「肩肘張って生きてる」 スイスで暮らすアフリカ系黒人の場合
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。