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プレスレビュー 世界最長の鉄道トンネル、スイスで開通 世界のメディアが大きく取り上げる

世界最長の鉄道トンネル「ゴッタルドベーストンネル」の開会式が行われた1日、世界のメディアがこれを大きく取り上げた。スイスの誇る技術とプロフェッショナリズムが賞賛される一方、難民問題によって各国の内向性が進む「欧州分裂」のような時代に、欧州を結ぶこのアルプスの鉄道トンネル開通の意味を問いかけている。

ゴッタルドベーストンネルでは、今年12月から一般客の利用が始まるという

ゴッタルドベーストンネルでは、今年12月から一般客の利用が始まるという

(Reuters)


スイスのプロフェッショナリズム

 ドイツの新聞ウェルトは、自国とスイスとの比較においてスイスのプロフェッショナリズムを称えている。「小国スイスが、計画通りに巨大な作品を完成させた。ところが、ベルリンでは、ほぼ同時期に始めた国際空港の建設がほとんど進んでいない。スイスはまた再び、この国の持つプロフェッショナリズムで欧州の他の国に『恥ずかしさ』を感じさせることになった」

 ドイツの国際放送ドイチェ・ヴェレのスペイン語放送は、このようなスーパープロジェクトを計画通りに完成させるために詳細に組まれた工事計画に言及しながら、「どうやったらこんなに大型のプロジェクトが日程通りに、終わるのだろうか?」と感嘆している。

 一方でウェルトは、このトンネルの完成は、単に技術のたまものというだけではなく、スイスの民主的な政治システムのお陰であり、市民に主権があるということが生み出した成果でもあると続けた。

 スイスのもう一つの隣国イタリアの イル・ソーレ・24オーレ紙 は、この世紀のトンネルが欧州の交通に重要な貢献をすると称えながらも「本当の意味で欧州の交通がうまくいくのは、アルプスの北と南でのインフラが整備されてからだ」とコメントした。

スイスが誇る世界最長のトンネル ついに開通、ゴッタルドベーストンネル 全情報をあなたに

17年の歳月をかけついに完成した、世界最長のゴッタルドベーストンネル。その開通式が今日6月1日、ドイツのメルケル首相やイタリアのレンツィ首相を含む1000人以上の来賓を迎え行われた。スイスインフォでは、このトンネルに関する「全ての情報」をビデオでお届けする。(文・里信邦子 制作・Carlo ...


欧州が一つになる…?

 南米コロンビアの日刊紙El Espectadorは、スイスのシュナイダー・アマン大統領が開通式のスピーチで使った言葉「トンネルは欧州の経済と人を一つに結ぶ」を持ち出して、欧州が現在大量の難民問題と英国の欧州連合(EU)からの離脱問題を抱えている中で、この「一つに結ばれること」を疑問視している。

 米経済紙ウォールストリート・ジャーナルも、「トンネルの完成は、現在中東の混乱や戦火を逃れてヨーロッパに流入する大量の難民問題に直面するスイスも含む欧州が、国境のコントロールの強化を呼びかけるポピュリズムの動きに、相反する側面がある」とコメントしている。

オランド仏大統領、英国のEU離脱問題に言及

 フランスのメディアも、世界最長のトンネルについて多くの記事を載せた。特に技術面などでの数字の記録更新を強調し、例えばフィガロ紙は、「ゴッタルドベーストンネルはあらゆる記録を更新した」と書き、七つの新記録と題して長い記事を載せた。 

 当然ながらフランスのメディアは、開通式に列席したオランド仏大統領の演説にも注目した。オランド氏は今回のアルプス縦断トンネルの完成を、英仏海峡トンネルに結びつけながら、英国のEU離脱について次のように述べた。「20年以上前、英国と欧州大陸は英仏海峡トンネルによって一つに結ばれた。それ以前には決してなかったように両者は一体となった。そして私は、EU離脱の国民投票の日に、英国人たちがその結びつきを思い出してくれることを強く願っている」

「スイスの工事が無事に終わってほっとした」

 このように注目を浴びている英国だが、英国の新聞やBBCもさまざまな数字などを引き合いにしながら、大々的にトンネル完成を報道した。

 ただ、タブロイド紙のデイリー・メールがレポートした開通式の様子が、もっとも興奮を掻き立てたかもしれない。

 「天使のような羽のある半裸のダンサーや頭に鳥の巣を載せた男性が登場した。世界最長の鉄道トンネルの開通式になんという、『パフォーマンス』を採用したのだろう。歴史に残るセレモニーの中でも、最も奇妙なものの一つが今回のトンネルの開通式だろう」

 ところが、米ニューヨークタイムズは「スイス人は、トンネルを作ってアルプスを征服することにある種の『執着』を持っているように見える」と書いた。こうしたコメントに反応するかのように、スイスのブリック紙はこう言う。「いくら進んでも何の変化もない57キロメートルのトンネルを通過しながら抱く感情について、スイス人は合理的に説明はできない。それは、自分で実際に体験して感じてもらうことだ」

 ニューヨークタイムズのこうした少し皮肉っぽいコメントとは対照的に、日本のNHKは、青函トンネル記念館の工藤幸治館長の「よく掘ったと」いう真っ直ぐな温かさに満ちた言葉を載せた。「(青函トンネルは世界最長という栄冠の座をスイスのトンネルに譲り渡すことになったので)残念な気持ちと、スイスの工事が無事に終わってほっとした気持ちとが半々です。青函トンネルも難工事でしたが、今回、長大なトンネルをよく掘ったなと思います」


(仏語からの翻訳・編集 里信邦子)

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