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武器とスポーツ 厳しい審査、でも増える会員数 スイス人は「射撃に夢中」

銃を構える男性2人

「スイスは射撃が盛んな国」と言うと少しおおげさかもしれない。しかしスポーツ射撃に関しては、地方に限らずスイス全国で根強い人気がある。スイスの銃規制法の厳格化が問われる19日の国民投票を目前に、ジュネーブにある二つの射撃クラブを訪れた。

今月19日の国民投票で、欧州連合(EU)の銃規制法をスイスも踏襲するかが有権者に問われる。EUはダブリン協定の安全保障に関する項目で、半自動銃の取り扱いをより厳密に規制したことから、スイスは昨年9月、連邦議会でEUの新しい銃規制にならった改正法案を可決。しかし「スイス射撃利益団体他のサイトへ」が見直しを求めるレファレンダムを成立させ、同案は国民投票に持ち込まれることになった。

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射撃センターの入り口は少し分かりにくい場所にあった。「スイス射撃センター他のサイトへ」がある建物は現代的なつくりだ。地下に開設された射撃場の中ではスイスで最大規模。入口にはフィットネスセンターと自転車店の看板が大きく掲げられている。その横で「スイス射撃センター」の文字は控え目な印象を受けた。

建物に足を一歩踏み込むやいなや、同センターの基本原則を実感した。一言で言えば「安全第一」。身元不明者は入場できないうえ、2千平方メートルの射撃場では、1センチたりとも監視ビデオの目を逃れることはできない。射撃場へのドアは防弾仕様で、ドアを開くには暗唱番号付きのカードが必要だ。ドアは自動的にロックされる。

ジュネーブにあるスイス射撃センターの経営者ミシェル・ボンオムさん

(Thomas Kern/swissinfo.ch)

「警察のような警備体制を整えるつもりは毛頭ない。単に事故を避け、ここに来る人の安全を確保したいだけだ。武器はいい加減に扱うものではないから」。射撃場の経営者、ミシェル・ボンオムさんは我々を案内しながらそう話す。

「5つ星スパ」並みの充実した設備

この射撃場で練習するには、まず会員になる必要がある。新規会員登録には法的に必要な書類を揃え、規則を熟読した上で署名が必要だ。また、30分程度のコーチング時間を設けて、入会者が単独で射撃できるかどうかを確認しなくてはならい。

「(単独で射撃)できない場合、講習を受けて足りない知識を補う必要がある」とボンオムさん。十分な訓練を受けていない人は、結局は自分自身を危険にさらすことになるからだ。

Reportage from Swiss Gun Center in Geneva

ここでは単独、あるいは他の人と一緒に色々な射撃練習ができる他にも、さまざまなコースが開設されている。興味のある人は「探検コース」にも参加できる。また、武器を使わない逮捕術を学べる道場や、トレーナー付きのフィットネスルームも整っている。

スイスオリンピック委員会が行ったスイスのスポーツ連盟の分類では、射撃クラブはその数で2位(2943団体)、会員の数で5位(13万1325人)だった(2016年の最新データ)。

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同射撃センターでは、武器の販売、レンタル、オーバーホール(分解・修理)、メンテナンスも行っている。兵器庫を備え、様々な装飾品の販売も行っている。

また、武器を常に持ち歩かなくてもよいように、武器の保管用に暗証番号付きのロッカーも借りられる。ボンオムさんによれば、会員の7~8割がこのサービスを利用しているという。

スイス射撃センターは今年1月8日にオープンした。オープンまでに要した歳月は10年。センターは完全防音で、壁、床、天井に跳弾防止を施してある。最先端の建築資材と技術を駆使して作られた。

では、建設には一体いくらかかったのか?ボンオムさんは、「数百万フラン(数億円)」と言い、詳しい金額は伏せた。ただ、射撃センターへの投資は正しかったことは確かだと話し、「スイス人は射撃に夢中だから」という。また、「こういった施設への需要が大きい割には、供給が不足している」と現状を説明した。

ターゲットは都市部と女性

射撃センターの需要は、とりわけ人口が集中する都市部にあるとボンオムさんは言う。「現代人は今、近場で射撃の練習ができる場所を望んでいる。来場者は、休憩時間や仕事帰りにスポーツをしに射撃場に来る。フィットネスセンターに行ったり他のスポーツをしたりする人たちと全く同じ感覚だ」

スイス射撃センターはジュネーブの国際機関が集中する地区にある。最寄りの路面電車の駅から歩いて5分の場所だ。セキュリティの専門家からスポーツ射撃のトレーニングをする人、趣味で射撃を楽しむ一般市民まで、老若男女を問わず射撃場を訪れる。

「まだオープンから日が浅いが、会員は右上がりに増えている。毎月約100人の新規登録がある」と言うボンオムさん。とりわけ女性が数を伸ばしているという。女性の間では口コミで情報が広がるようだ。「現時点で、女性の会員はほぼ4割を占める」

ジュネーブの射撃クラブ「アルケビューズ銃の演習と操作」のアンドレ・モーリー会長

(swissinfo.ch)

「射撃は女性の間でのトレンド」と言うのはジュネーブの射撃クラブ「アルケビューズ銃の演習と操作(EAN)他のサイトへ」のアンドレ・モーリー会長だ。スイスで最も古い射撃クラブの一つで、そのルーツは中世にまでさかのぼる。女性の会員は全体的に増えてきているという。そして「女性会員は増加傾向にある上、女性の方がよく命中する」とモーリー会長は言う。

500年以上の歴史

スイス射撃センターを見学した後、射撃クラブEANの本部があるアルケビューズホテルでモーリー会長と落ち合った。同ホテルは1900年にジュネーブ市の中心部に開業。この場所には1895年まで射撃場があったが、当時ジュネーブ郊外にあるプティ・ランシーのサン・ジョルジュに新しい射撃場が作られた。

この二つの射撃クラブに共通するモットーは、スイスにおける射撃の伝統への絆を強め、武器の所持という市民が持つ自由の権利を謳歌することだ。ただ、両クラブの特徴は大きく異なる。

ジュネーブのEANは、愛国精神にあふれる歴史をたどって来た。既に1474年の公式文書にはクラブの存在を証明する記録が残されている。同胞精神を重んじる風潮は今日まで引き継がれ、サン・ジョルジュの射撃場へ行くのは練習のためだけではなく、射撃仲間との交流を維持するためでもあるとモーリー会長は言う。

アルケビューズホテルは同クラブの本部として、財団理事会の会議やミーティングが行われる他にも、家族連れがレジャーを楽しむ憩いの場所でもある。親睦を深める活動の一例として、アルケビューズ吹奏楽団が挙げられる。

アルケビューズホテル近辺のイラスト

ジュネーブのアルケビューズホテル界隈は、今では活気あふれる場所になった。ホテルには絵画や武器、トロフィーのコレクションが飾られ、訪れた人を昔ながらの射撃界へといざなう

(notreHistoire.ch)

大切なのは射撃に対する情熱

会員になるには他のサイトへ、一回きりの入会費300フラン(約3万2700円)が必要。だが入会費を払えば誰でも会員になれるわけではない。

まず、入会の動機が書かれた書類を提出し、短銃、長銃の安全な取扱いに関する講習を受けなければならない。これは単独で射撃ができることを証明するためだ。また、既に同クラブに所属する会員2人が保証人になる必要がある。しかも一定の条件を満たさなければ保証人として認められない規則になっている。

これだけハードルが高くても、このクラブは「スイスで最大の射撃クラブの一つ」だと会長は言う。現在、クラブの会員は2500人。その内750人は射撃免許、つまり射撃大会の参加資格保持者だ。

近年、小規模のクラブの会員数は減少傾向にあったが、同クラブは増加したという。「毎年50~60人の新規登録がある」(モーリー会長)

EANには現在、約60人の青年男女(15~21歳)が所属する。青年は保証人が不要だが、入会審査は厳正に行われる。「入会を断る人は毎年250人に上る」と言うモーリー会長は、「規律を守らない若者には退会してもらう」と手厳しい。

今後も増えると予想される会員数に対応するため、EANは現在、サン・ジョルジュ射撃場を拡大中だ。「そうしなければ、もうすぐここはキャパシティーが限界に達する」

ボンオムさんもモーリー会長も、今、スイスの射撃スポーツ人気がかつてないほど高まっていると実感している。銃規制法改正案には「スイス射撃センター」「EAN射撃クラブ」とも反対だ。この改正法案は、スイスの射撃団体が見直しを求めるレファレンダムを成立させたため、19日の国民投票で民意を問われることになった。

2019年5月19日の国民投票 銃所持にこだわるスイス人 EUの銃規制に伴う法改正案に集中砲火

2019年5月19日の国民投票で、EUの銃規制法を非加盟国のスイスでも採用すべきかが有権者に問われる。スイス連邦議会は昨年9月、EUの新しい銃規制に適応した法改正案を可決したが、見直しを求めるレファレンダムが成立。シェンゲン協定の存続のために立法の修正を迫られるスイス政府は窮地に立たされれた。


(独語からの翻訳・シュミット一恵)

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