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2019年5月19日の住民投票 「生活保護費を減らすべきか」がスイスで住民投票になった事情

 デモ

スイス・ベルン州政府の社会保障削減の法改正に対し、抗議デモをする住民ら。2017年6月6日、ベルンで

(© Keystone / Thomas Delley)

スイス社会保障制度の最後のセーフティネットである生活保護費を削減すべきなのか、それとも増やすべきなのか。首都ベルンで19日行われた住民投票は、国内で初めて有権者に問題の是非が問われた。結果は否決だったが、スイスの生活保護費のあり方に大きな問題提起をした。

(以下は、投票前の5月9日にドイツ語版で配信された記事です)

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生活保護費の不正受給や詐欺事件、一部都市で増加する受給者の数、そして特定の受給者に対する過払いー。生活保護のあり方は日本だけでなくここスイスでも激しい議論の的となっている。これまでは、生活保護政策の立法権限を持つ国内26州の州議会で議論されていただけだったが、今回初めて有権者に是非が問われることになった。

スイスの生活保護

  • 生活保護は、経済的に困窮する人々が独立した最低限度の生活を送ることを可能にし、社会統合を促すことを目的とする。
  • 受給資格を得るためには、収入、資産、保険給付、補助金などその他の収入源が全くない状態でなければならない。
  • 大部分の州では、受給者の経済状況が改善した場合、支給額を返還しなければならない。
  • 費用は通常、州と自治体が負担する。
  • スイス国内の受給者の割合は過去10年間、比較的安定している(2017年は3.3%)。
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ベルン州では19日、この生活保護費の減額を盛り込んだ法改正の是非が初めて有権者に問われる。

2019年5月19日の住民投票 生活保護費カット、高額所得者の課税引上げ、世界遺産へのゴンドラ建設 各地の住民投票結果

生活保護費の削減、最高所得者への課税引き上げ、物議を醸す「狩猟特別期間」、世界自然遺産へのゴンドラ建設―。スイスでは19日、国民投票に合わせて各自治体で住民投票が行われた。その重要なポイントと投票結果を紹介する。

同州では、州政府の法改正案ともう一つ、左派緑の党らが出した独自の対案の2つが投票にかけられた。

州政府の生活保護法改正案は、スイス社会保障会議他のサイトへ(SKOS)が規定する生活保護費を8%削減するというもの。 25歳までの若者と暫定的に受け入れが認められた難民申請者は最大15%削減される。さらに就職活動や公用語の習得において努力が足りないとみなされると、最大30%減らされる。

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ぶつかる2つの案

生活保護法改正案は昨年、ベルン州議会で賛成多数で可決された。保守派・国民党(SVP)のピエール・アラン・シュネック州健康福祉局長は「低所得者より生活保護受給者の月収が多いのは普通ではない。法改正で労働への関心を高め、生活保護受給者の社会統合を促したい」と話す。法改正により年間800万〜1900万フランが削減でき、その一部は就職活動促進プロジェクトに充てる。

「最も弱きものを叩いても、国内の低賃金の問題は解決できない」

マウラネ・リーゼン、ベルン州議会自治社会党

引用終了

対する左派は独自の対案を提起した。法律の見直しを求めるレファレンダムの一種で、1万6千人の署名を集めて住民投票に持ち込んだ。対案では、生活保護の基準額はSKOSの規定に準じ、55歳以上で失業保険受給資格を喪失した失業者については、生活保護の代わりに遺族・老齢年金(AHV)や障害者年金(IV)の制度にある補足給付を支給するという内容だった。

ベルン州議会のマウラネ・リーゼン他のサイトへ自治社会党議員は「最も弱きものを叩いても、国内の低賃金の問題は解決できない」と話す。「今表に出てくるのは、悲しい現実を隠すための不正受給と詐欺の話題ばかり。私たちの国の社会格差は広がり続けている」

州の連帯

ピエール・アラン・シュネック州健康福祉局長

(Keystone / Lukas Lehmann)

しかし日曜日に行われる住民投票は、「連帯」と「個人の責任」に対する古典的な左対右の議論にとどまらない。州によって異なる社会福祉をどのように調和していくか、という今後の政策に対する問題提起でもある。

1960年代以来、SKOSの前身である貧困者会議は州・地方自治体のために、社会的援助の制度設計・査定に関する指針を出している。目的は、自治体格差が広がりすぎないようにするため。格差が広がればその分、福祉の充実した自治体に人が流れ込む「ソーシャルツーリズム」が生まれてしまうからだ。

指針はあくまでも勧告で、遵守が義務付けられているわけではない。ベルン州はこの指針に真っ向から歯向かう「タブー破り」に打って出た。SKOSのコリンネ・フートマッハ―・ペレ氏は「すでにいくつかの州議会で、ベルンをお手本にした生活保護費切り下げを求めるイニシアチブ(国民発議)が出ている」と話す。

精神衛生への影響

SKOSの見解では、現状の生活保護費の支給額に疑問を挟む余地はないという。近年、若者と大家族に対する受給額が減額されてきているからだ。

「我々は州の現実に指針を適応させていくだけ。それがスイス連邦主義の本質だ」

ピエール・アラン・シュネック、ベルン州健康福祉局長

引用終了

複数の研究はまた、生活保護費削減が受給者の労働市場統合を促進する可能性が低いことを示している。それどころか、フートマッハー・ペレ氏は 「経済的圧力が増すと人々の精神衛生に悪影響を及ぼし、不安定にする。生活保護受給者の3分の1が子供と青少年であることを忘れてはならない」と話す。

SKOSの指針は、利害関係者が長年の議論の中で合意したコンセンサスだ。ベルン州のふるまいはSKOSの怒りを買わなかったのだろうか?シュネック氏は 「他の州でもSKOSガイドラインについて勝手なふるまいをしてきた。それが大きな問題にならなかっただけ」と話す。「ベルンに住む世帯の平均支出は国内平均より8%低い。だから、我々は州の現実に指針を適用させていくだけ。それがスイス連邦主義の本質だ」

生活保護費はどのように算出される?

生活保護は家賃や健康保険料(スイスでは加入が義務)のほか、最低生活水準(食料、衣服、移動、その他必要なもの)をカバーする金額を支給する。

計算は、連邦統計局が出した10%の最貧困世帯の消費に基づき決める。現在の支給額は個人が986フラン、家族4人が2110フラン。今年初めに発表された調査によると、この支給額でもすでに生活がギリギリのラインだ。

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(独語からの翻訳・宇田薫)

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