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クリスマスにお正月 スイス人の意外な過ごし方

みんなで祝う大晦日。大騒ぎした後は、誰もが眠りこけて、元旦はいたって静か Keystone

年末になると、どこもかしこもパーティー気分。日ごろは群れることを嫌うスイス人だが、この時期ばかりはグループで楽しむ人が多い。12月初旬からクリスマスイヴ、大晦日に最高潮に達するが、元旦は途端に静かになる。

企業は大々的なクリスマスパーティーを催したり、ホテルはガラディナーを準備し客を呼び込む。そして家庭では「中華フォンデュ(Fondue Chinoise)」なるものが最近人気という。

 大勢が集まるパーティーの企画を請け負うケータリング会社や高級リゾートホテルの年末への準備を通して、クリスマスと大晦日のスイス人の祝い方を探ってみた。

従業員全員で祝うクリスマスパーティー

 高級志向を売り物にするケータリング会社「ガンマ・ケータリング(GAMMA Cartering)」は今年、パーティー会場として素晴らしい場所を新たに発掘した。電車整備工場である。5台の電車が整備中の大きなホールは「電車に乗って将来に向かって躍進するといった会社の発展を象徴することがアピールできて、今年はこの会場を3度も使いました」と社長のペーター・ガンマ氏。

 スイスでは年末、クリスマスパーティーや忘年会として、多くの企業が従業員全員を招待するパーティーを催す。こうした大イベントの企画を担うガンマ社は、年末ともなると毎日のようにパーティーの裏方としてスイス全土にスタッフを送っている。

 電車整備工場でのパーティーには社長から平社員まで370人が参加する予定で、パーティーの当日2日前から、厨房では10人のコックが料理の下ごしらえに勤しんでいる。「品質第一」と語気を強めるガンマ氏。肉の品質は一切れ一切れ手にとって検査。プチトマトの大きさをそろえるなど、厳しいコックの目が光る。

 簡単な立食パーティでさえ最低一人180フラン(約16,200円)は必要。これに、音楽のエンターテイメントやクリスマスツリーといった飾りなどオプションが次々と加えられるのが普通だという。「電車整備工場をクリスマスの市場に見立て、焼き栗のスタンドも設置してみました」とパーティーを準備するマルクス・ブリさん。これもオプションだ。

 パーティーをするのは、国際的に有名なコンサルティング会社。毎年従業員の8割は参加するほど、楽しみにされているという。企画担当のシルヴィア・ビュルギさんは「従業員に感謝を込めて全社員を招待します。社外で仕事をしている人が多いので、従業員同士の交流にも役立っています」と語る。多少の機械油の匂いもなんのその。深夜2時ごろまで、楽しいパーティーが続くという。

高級ホテルでの過ごし方

 スイス有数の温泉地ロイカーバード(Leukerbad)の高級ホテル、ホテル・リントナー(Hotel Lintner)でも、クリスマスと大晦日は最大のイベントを用意して地元の人たちや泊まり客を呼び込もうとしている。1625年に開業したというリントナーでは常連が5割以上。連れ合いに死なれて一人暮らしをする年配の人でも、家族の伝統だからと言って毎年、年末はこのホテルで過ごすという客もいるという。

 大晦日にはアンコウとホタテのスターターや子牛の肉にトリュフのリゾットなど7品の料理が味わえるひとり175フラン(約15,800円 宿泊費別)のディナーを用意。大晦日にはチャップリンの映画とチャップリンに似た俳優が参加者を楽しませる趣向だ。

 広報担当、ダビット・グラッフェン氏によると、クリスマスは子どものいない共稼ぎの夫婦、大晦日は家族全員が楽しむ傾向にあるという。「クリスマスは家族同士で祝いますが、大晦日はホテルではじめて出会った人とも交流して、楽しんでいらっしゃいます」。生演奏は必須。ホテルのホールで、明け方5時まで踊り明かす人もいるという。

家庭では簡単で見栄えのするもの

 スイスではクリスマスや大晦日を家で祝う人も多いが、最近の人気料理は中華フォンデュだ。ブイヨンを鍋で温め、薄切りにした牛肉をしゃぶしゃぶのように湯がき、タルタルソースなどを付けて食べる。フォンデュ用の肉は、10年ほど前から普通のスーパーでも冷凍で売られるようになった。

 大手スーパー「コープ」のイェルク・ビルンシュティール広報担当は、中華フォンデュやスモークドサーモンなどがクリスマスの目玉商品だという。「クリスマスシーズンは人を呼んだり呼ばれたりで、主婦だけではなく、全員がストレス気味」みんながテーブルについてゆっくり食事を味わうためには、フォンデュのような鍋物が良いのだという。しかも、中華フォンデュなら「大皿に並べた肉とソースがテーブルを豪華に飾る役割も果たしてくれる」と人気の理由を挙げた。

swissinfo、 佐藤夕美(さとうゆうみ) 

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