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スイスメディア、ウクライナ復興会議の成果を高く評価

スイスメディアはウクライナ復興会議を主催したイグナツィオ・カシス外相を絶賛した
スイスメディアはウクライナ復興会議を主催したイグナツィオ・カシス外相を絶賛した © Keystone/Alessandro Della Valle

ルガーノで5日閉幕したウクライナ復興会議について、スイスの国内紙はおおむね好意的な評価だった。

ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーなどタメディアグループ傘下の新聞は6日付の社説で、4~5日に開催された復興会議はつつましい成果に終わったものの、正しい方向への一歩となったと位置づけた。

主催したイグナツィオ・カシス外相がスタートの口火を切り、今後は他の国々がウクライナの再建を主導していくことになる。同紙は「スイスは自国の役割を果たした。それ以上でもそれ以下でもない」とした。

同紙はスイスが2014年、欧州安全保障協力機構(OSCE)の議長国を務めた際に果たした「信頼できる仲裁者」としての地位に言及。そのような地位を再び固めるためには行うべきことがもっとあると指摘した。

ドイツ語圏の大手日刊紙NZZも会議開幕前の4日付紙面で同様に指摘していた。

NZZは会議が小規模でも、ウクライナの人々に希望を与えることは重要な要素だと強調。長年ウクライナに開発協力をしてきた中立国スイスには「アイデアを提供し、現場で仲裁者として行動する」機会があると記した。

リスクと成功

ルガーノでの会議が成功に終わったのかどうか、ドイツ語圏のメディアでは盛んに論じられた。

アールガウ新聞などCHメディアグループの新聞は、カシス氏が事前に掲げた目標は非現実的だったと批判しつつ、好意的に評価。「ウクライナが先々の展望を必要とするなか、再建の計画づくりを始めるのには適切な時期だった」とした。

会議では、西側諸国の参加者がウクライナに対し、再建資金を受け取る前に国内を整備し汚職と戦うことを望んでいたことは明らかだったと指摘した。

大衆紙ブリックも成果を高く評価した。カシス氏とスイスはかなりのリスクを冒したが、関係者全員が報われたと述べた。「ウクライナは世界に悲惨な状況を見せ、支持を得ることができた。西側は再建の条件として改革実行を課し、スイスはホスト国としての存在感を示すことに成功した」

多言語を駆使

フランス語圏やイタリア語圏のメディアの一部は、ルガーノ出身のカシス氏に焦点を当てた。外務大臣としての経歴や輪番制の大統領職に注目が集まった。

ルガーノの地域紙コリエール・デル・ティチーノ紙は、多くの困難を乗り越えて会議を主催した点で「スイス大統領に敬意を表する。ルガーノはキーウの復活の確固たる基盤を築いた」と称えた。

仏語圏のル・タンやトリビューン・ド・ジュネーブとその姉妹紙24時間新聞は、カシス氏と外務省の組織力を絶賛した。カシス氏が母国語のイタリア語からドイツ語、フランス語、英語の4言語を自在に操ったことを称えた。

24時間新聞の政治担当記者は、会議が歴史に残る可能性は低いとしても、カシス氏の大統領イヤーのハイライトになったことは間違いないとみる。

ル・タンは「カシス氏は賢明に行動し、ホストとしての役割もうまく果たした」と評価。所属する急進民主党が閣僚ポストの1つを手放す可能性に触れ、「来年の閣僚選挙で、カシス氏にとって有利な実績となるだろう」と主張した。

ロシア資産

復興イベントの国際的な報道はそれほど広範ではなかった。ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)はルガーノ会議を、西側からロシアのウラジーミル・プーチン大統領に送られたもう1つの重要な信号であり、ウクライナ国民への励ましだと位置づけた。

一方、同紙と有力紙ディー・ヴェルトは、そのような国際会議が実際に何を達成できるのか、政治家が自身の夢と「現実と幻想の取り違え」を披露する舞台でしかないのでは、と疑問を投げかけた。

英国のメディアは、ルガーノ会議にあまり関心を示さなかった。英紙デイリーメールとガーディアンはともに、スイスの銀行が凍結したロシア資産と、その凍結資産をウクライナ再建に充てる案に対しスイスが消極的であることに焦点を当てていた。

日本メディアは資金源に踏み込まなかったことに失望感を示した。読売新聞は「多額に上るとみられる資金の確保については、難航が予想されることから積極的な発言や提案はなかった」と指摘した。

英語からの翻訳・ムートゥ朋子

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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