スイスのイグナツィオ・カシス外相は5日、南部ルガーノ市で開催中のウクライナ復興会議で、2023年末までにウクライナへの支援金を1億フラン(約140億円)に倍増させると表明した。
このコンテンツが公開されたのは、
また、ウクライナの経済のデジタル化支援として1500万フランを拠出する。2022年の輪番制大統領を兼任するカシス氏は、「(復興を)主導するのはウクライナだが、我々はそれを支えなければならない」と強調した。
スイスは二国間支援の他、国際機関によるウクライナ支援にも引き続き参加する。カシス氏は多国間の努力は「武力行使に対する解毒剤になる」と訴えた。
スイスが引き続き調停役を務める方針も示した。ウクライナにあるロシア権益やロシアにあるウクライナ権益をどの国が代表するか、ロシアは回答を保留している。カシス氏は、スイスは「然るべき時に戦争を終結させるため」の会談を取り持つ準備が整っていると語った。
復興資金にオリガルヒ資産を
ウクライナのデニス・シュミハリ首相は4日ルガーノで講演し、ウクライナは「ジェノサイド(大量虐殺)」の犠牲者だと改めて訴えた。国際社会からの支援にも再度感謝を示した。
ロシアの侵略により、ウクライナの再建には7500億ドル(約101兆円)かかる可能性があり、ロシア人富裕層が負担するべきだと主張した。
「復興の資金源は、ロシアとロシアのオリガルヒ(新興財閥)から没収した資産であるべきだ」と述べ、これまでに凍結された資産は3千億~5千億ドルに上ると推定した。
「この血塗られた戦争を始めたのはロシア当局だ。この莫大な破壊行為を引き起こしたのは彼らであり、その責任を問われるべきだ」
おすすめの記事
おすすめの記事
オリガルヒ資産の没収案 スイス金融業界にダメージ?
このコンテンツが公開されたのは、
米欧で、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を没収してウクライナの復興に充てるよう法整備に乗り出している。中立国を看板に世界の富裕層から資産を預かっているスイスの金融業界には新たな火種となりそうだ。
もっと読む オリガルヒ資産の没収案 スイス金融業界にダメージ?
シュミハリ氏はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)とのインタビューで、復興に当たっては法の支配や汚職との戦いが「優先順位が最も高い」と述べた。将来、欧州連合(EU)に加盟するためは改革が不可欠だとして、戦後改めて改革を進める方針も示した。ウクライナの政治腐敗はなお深刻で、支援国の間では援助した復興資金が必要なところに届かないのではとの懸念が強い。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
おすすめの記事
ウクライナの復興には何が必要だと思いますか?
ウクライナが良い未来を迎えるために、重要なこと、絶対的に優先すべきことは何だと思いますか?
議論を表示する
おすすめの記事
「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦裁判所(最高裁)は先月26日、チューリヒ地方裁判所の判事の1人に対し、気候活動家に関する裁判への関与を禁じる判決を下した。この判事が過去の裁判で活動家への団結心を見せたとして、考え方に偏りがあると結論付けた。
もっと読む 「気候活動家への団結心」見せた判事、類似事件への関与禁止 スイス最高裁
おすすめの記事
スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は25日、2023年の名目賃金は1.7%上昇したと発表した。インフレ(年平均2.1%)に相殺され、実質賃金は0.4%低下した。
もっと読む スイス、2023年の実質賃金は0.4%低下
おすすめの記事
製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの大手製薬ノバルティスは22日、2025年で任期満了となるヨルク・ラインハルト取締役会長の後任に、ジョバンニ・カフォリオ氏を選出すると発表した。
もっと読む 製薬大手ノバルティス、次期会長候補に米製薬BMS出身者選出
おすすめの記事
スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
このコンテンツが公開されたのは、
エジプト考古省は21日、約30年前に盗まれ国外に流出したラムセス2世像の頭部破片が同国に到着したと発表した。
もっと読む スイスで見つかったラムセス2世像破片、エジプトに到着
おすすめの記事
スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
もっと読む スイス議会、G7のロシア資産追及チームへの参加を否決
おすすめの記事
米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
このコンテンツが公開されたのは、
米政府高官は14日、イランによるイスラエル攻撃の前後に、米国は利益代表国であるスイスを通じてイランと接触していたと述べた。
もっと読む 米・イラン、攻撃前に「スイスを通じて」接触
おすすめの記事
チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒの春祭り「セクセロイテン」が15日開かれた。巨大な「雪男」を燃やして夏の天気を占う恒例行事は強風により中止となった。
もっと読む チューリヒ春祭りの雪男、強風で燃えず 歴史上初
おすすめの記事
スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス政府は10日、「大きすぎて潰せない(TBTF)」銀行に関する規制改革案を発表した。UBSと他の「システム上重要な銀行」3行は、破綻時のスイス経済への影響を抑えるためにより厳しい資本要件を課される必要があると述べた。
もっと読む スイス政府、銀行規制の改革案を発表 UBSの資本要件強化へ
おすすめの記事
新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州の約2億4200万年前の地層から新種のイカの化石が見つかり、「Chuchichäschtli(クッヒカーシュトリ、スイスドイツ語で『食器棚』)」と名付けられた。
もっと読む 新種のイカの化石、名前は発音が難しいスイスドイツ語に
おすすめの記事
スイスのサマータイム廃止はいつ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで夏時間(サマータイム)が始まった。3月31日午前2時にすべての時計の針が1時間ジャンプし、午前3時を指した。だが夏時間制はとうの昔に廃止されるはずではなかったのか?
もっと読む スイスのサマータイム廃止はいつ?
続きを読む
おすすめの記事
スイス、民間企業の汚職率6% 公共部門は対策不足の指摘も
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは汚職や贈収賄事件が他国に比べて少ないことが国際的な調査でわかった。一方で公共部門については、スイス連邦当局が政府機関を十分に監視していないことが憂慮されている。
もっと読む スイス、民間企業の汚職率6% 公共部門は対策不足の指摘も
おすすめの記事
ウクライナ復興に向けた「ルガーノ・プラン」
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ルガーノで今日からウクライナ復興会議が開かれる。戦争で荒廃したウクライナをどうやって復興するのか?復興計画を通じてスイスは何を成し遂げたいのか?
もっと読む ウクライナ復興に向けた「ルガーノ・プラン」
おすすめの記事
「スイスとは、腐敗したロシア人が真っ先に向かうところ」
このコンテンツが公開されたのは、
ロシアの反政権指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は、汚職を執拗に追跡し、プーチン大統領を激しく批判する。「ロシア政府の立場を後押しするロビーグループがスイスに存在するのは確かな事実であり、汚れたお金に対する関心も見逃せない」と語る。
もっと読む 「スイスとは、腐敗したロシア人が真っ先に向かうところ」
おすすめの記事
資産隠しの重大スキャンダル スイスの過去と現在
このコンテンツが公開されたのは、
長年にわたり、スイスは独裁者たちが秘密特権を享受する資産隠しの安全地帯だった。2016年になってようやく不正取得資産の凍結・返還に関する法律が公布され、今やスイスは権力者たちの汚れた金と戦うリーダーだ。
もっと読む 資産隠しの重大スキャンダル スイスの過去と現在
おすすめの記事
「誤った戦争に正しいビジネスなどない」
このコンテンツが公開されたのは、
欧米企業は、ロシアとのビジネスに終止符を打つべきだ。なぜなら、行動を通して平和を促進することは、企業の責任であり道義的責務だからだ――。スイスの経済倫理学者はそう訴える。
もっと読む 「誤った戦争に正しいビジネスなどない」
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。