スイス連邦裁、脱税ほう助告発者は「銀行の秘密保持義務に違反せず」
スイス連邦最高裁判所は先週、プライベートバンクのジュリアス・ベアの脱税関与を告発した元従業員のルドルフ・エルマー氏は、スイスの銀行に課される秘密保持義務に違反していないとの判決を下した。
連邦裁判所の5人の裁判官は、告発者が世界のどこにいても銀行の秘密保持義務は適用されると主張するチューリヒ検察の主張を3対2で退けた。
スイスの通信社Keystone-SDAによると、3人の裁判官は、エルマー氏が告発した時点でスイスの銀行いずれにも雇われていなかったと指摘した。
エルマー氏は2002年に解雇されるまで8年間、スイスのプライベートバンク、ジュリアス・ベアのカリブ海部門の最高執行責任者(COO)を務めていた。
解雇された後、エルマー氏はジュリアス・ベアを脅迫したうえで、顧客データをメディアや連邦・州の税務当局に送りつけた。
有罪と判断した2人の裁判官は、ジュリアス・ベアはエルマー氏が勤めていたケイマン諸島の子会社JBBTに業務を委託していたことを指摘した。裁判官は、スイスの銀行法はスイスの銀行から委託を受けた第三者にも適用されると主張した。
この裁判は、スイスの銀行秘密保持の原則がスイス国外にも適用されるかどうかを示す初の判例として、判決に注目が集まっていた。
銀行の秘密主義
スイス当局の監督下にある銀行は、顧客の秘密を保持するよう法律で義務付けられている。だが最近、脱税を取り締まる外国の税務当局に顧客の口座情報を漏らす告発が相次いでいる。
元銀行専門の弁護士ガンデン・テトン氏はロイター通信の取材に「スイスの銀行秘密法はスイス国外の銀行には適用されないことが裁判所によって明らかになった」と話した。
連邦裁判所は判決の中で、エルマー氏は脅迫や文書偽造の罪を犯したとするチューリヒ地方裁が下した2016年8月の判決内容を認めた。当時、スイスの銀行秘密の原則を打ち破ろうとしたエルマー氏には、14カ月の懲役刑判決が下った。
ジュリアス・ベアは脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)、その他の金融犯罪に関し、内部通報によって複数の事件が取り沙汰された。16年、米国政府に脱税容疑で訴えられ、5億4700万ドル(約620億円)の罰金を命じられた。また提訴を避けるためドイツ政府に和解金5千万ユーロ(約65億円)を支払った。

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