脱税者のいそうなところを探す、というだけでは、「フランス在住者全員のUBS口座を調査する根拠に乏しい」ようだ。チューリヒのバーンホフ通りにあるUBS支店
Keystone
スイスの連邦行政裁判所は連邦納税事務局に対し、スイスの大手銀行UBSの顧客でフランスに住所を持つ約4万人の口座情報をフランスに提供しないよう命じた。
このコンテンツが公開されたのは、
フランスの税務当局は2016年5月、スイス納税事務局に対し行政上の支援を求めた。フランスに住んでいる、または住んだことのあるUBSの口座保有者について、詳細を知ろうとした。納税事務局は今年2月に支援に応じると合意したが、UBSとその口座保有者がザンクト・ガレンにある連邦行政裁判所に異議を申し立てた。
連邦行政裁判所は今週、納税者が納税義務を怠ったと考える理由をフランス税務当局は説明しておらず、UBSの異議には合理性があるとの判決を下した。
ドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)のシャルロット・ジャックマール記者は1日、「裁判所にとって分かりやすい事案だった。フランスは特定の被疑者がいるわけではないのに、ただ漠然と怪しいところを調べようとした。それではフランス在住者全員のUBS口座を調査する根拠に乏しい」と解説した。
ジャックマール記者によると、「判決はUBSの大勝利だったが、そのためには多大な労力を要した。初審理に備え、事件の当事者として納税事務局の保管する書類を閲覧するのも大変だった」という。「判決は納税事務局を非難する内容だ」(ジャックマール氏)
この事案はスイス連邦裁判所に上告される可能性がある。だがそれは根本的に重要な疑義が生じたか、特に重大な事案である場合に限られ、決定権は連邦裁判所が持つ。
スイスは多くの国々との間で税の自動的情報交換制度を結んでいる。税務当局はこの制度により脱税者を探し出すのが容易になるが、銀行にとっては現在・将来の顧客情報に関わる。
おすすめの記事
ジュネーブ国連職員約500人が予算削減に反対するデモ
このコンテンツが公開されたのは、
メーデーの1日、ジュネーブで国連欧州本部職員500人近くが国連の緊縮財政に反対する異例のデモ活動を実施した。
もっと読む ジュネーブ国連職員約500人が予算削減に反対するデモ
おすすめの記事
バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
このコンテンツが公開されたのは、
5月11~17日の欧州国別対抗の音楽祭「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(ESC)」開催中、バーゼルでは「カラオケ・トラム(路面電車)」が運行する。ビンテージ車両で90分間かけて街を走る間、乗客は無料で歌い踊ることができる。
もっと読む バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
おすすめの記事
ジャッキー・チェンさんに名誉豹賞 ロカルノ映画祭
このコンテンツが公開されたのは、
第78回ロカルノ国際映画祭で、香港出身の俳優ジャッキー・チェンさん(71)に生涯功労賞である「名誉豹賞」が贈られることが決まった。
もっと読む ジャッキー・チェンさんに名誉豹賞 ロカルノ映画祭
おすすめの記事
グミベアが躍る「ロボケーキ」大阪・関西万博スイス館で展示
このコンテンツが公開されたのは、
動くクマのグミ、チョコレート味の電池――大阪・関西万博のスイス館では、ロボット工学者とパティシエ、ホテリエが合作した「ロボケーキ」が展示されている。
もっと読む グミベアが躍る「ロボケーキ」大阪・関西万博スイス館で展示
おすすめの記事
スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
このコンテンツが公開されたのは、
日本を公式訪問中のスイスのイグナツィオ・カシス外相は22日、2025年大阪・関西万博のスイス・ナショナルデーのオープニングセレモニーに出席し、結束と対話を呼びかけた。
もっと読む スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
おすすめの記事
フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、21日死去したローマ教皇フランシスコに哀悼の意を表した。
もっと読む フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
おすすめの記事
WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
このコンテンツが公開されたのは、
世界経済フォーラム(WEF)は21日、創設者で会長のクラウス・シュワブ氏が同日付で辞任したと発表した。
もっと読む WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
おすすめの記事
スイス外相、日本と中国を訪問
このコンテンツが公開されたのは、
イグナツィオ・カシス外相は日本と中国を公式訪問する。
もっと読む スイス外相、日本と中国を訪問
おすすめの記事
TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
このコンテンツが公開されたのは、
米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。
もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
おすすめの記事
ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス小売大手のミグロ(Migros)は14日、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリザウにある1店舗を年中無休化すると発表した。
もっと読む ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
続きを読む
おすすめの記事
銀行口座
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで銀行口座を開設する際の手続きを紹介する。
もっと読む 銀行口座
おすすめの記事
スイスで3.6兆円超の隠し資産が明らかに
このコンテンツが公開されたのは、
過去8年間で計317億フラン(約3兆6455億円)の隠し資産がスイスの税当局に申告された。独語圏の日曜紙NZZ・アム・ゾンタークが報じた。
もっと読む スイスで3.6兆円超の隠し資産が明らかに
おすすめの記事
銀行の秘密保持イニシアチブ、撤回
このコンテンツが公開されたのは、
スイス在住者のために銀行の秘密保持を憲法に明記しようという提案にひとまず決着がついた。国民発議(イニシアチブ)が不発に終わった理由は、政府が脱税者に対し刑法上の罰則を強化する計画を断念したためだ。
もっと読む 銀行の秘密保持イニシアチブ、撤回
おすすめの記事
秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
このコンテンツが公開されたのは、
海外に秘密口座を持つスイス人は自主申告したほうがよい。事情によっては処罰を免れるためだ。連邦納税事務局の説明によると、1年後では手遅れになる。
もっと読む 秘密口座を整理するなら今がチャンス!?
おすすめの記事
税の情報交換制度 拡大めぐり賛否両論
このコンテンツが公開されたのは、
各国が協力して個人の銀行口座に関する情報を自動的に提供しあう「自動的情報交換制度」。脱税を厳しく取り締まるには効果的な措置だが、国家が市民に政治的な圧力をかけるために制度を利用するとしたら?といった懸念は拭えない。
もっと読む 税の情報交換制度 拡大めぐり賛否両論
おすすめの記事
クレディ・スイス、外国為替取引の不正行為で罰金150億円
このコンテンツが公開されたのは、
米ニューヨーク州金融サービス局(DFS)は13日、銀行大手クレディ・スイスが外国為替取引で不正行為を働いていたとして、同銀行がDFSとの同意審決に基づき、罰金1億3500万ドル(約151億2千万円)を支払うことで合意したと発表した。
もっと読む クレディ・スイス、外国為替取引の不正行為で罰金150億円
おすすめの記事
「パラダイス文書」で浮上したスイスの大物たち
このコンテンツが公開されたのは、
タックスヘイブン(租税回避地)をめぐる膨大な量の投資関連データがリークされた。いわゆる「パラダイス文書」の関係者にはスイスの政治家や企業経営者、企業も含まれている。これまでのところ、違法行為を証拠づけるものは何もない。
もっと読む 「パラダイス文書」で浮上したスイスの大物たち
おすすめの記事
盗まれた銀行顧客情報でも法的支援可能に、スイス最高裁決定
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦最高裁判所は13日、フランス国内にあるスイスの金融大手UBSフランスから盗まれた顧客データについて、盗難であっても脱税が疑われる場合はスイスがフランスに必要な法的支援を行うことを認める決定を出した。
連邦最高裁は、2015年に連邦行政裁判所が出した決定を破棄。フランス国内で盗まれた顧客情報にはスイスの法律が適用されないため、二重課税をめぐる両国の合意が法的支援を供与する可能性を排除することはないとした。
UBSフランスでは10年、元従業員が盗まれた約600人分の顧客リストを仏当局に転送。スイス税務当局の法的支援を求める2件の申し立てが含まれていた。
行政裁判所は法的支援を一時的に停止する判決を出したが、顧客の1人が不服として上告していた。
顧客情報を自動的に交換
連邦財務省によると、法的支援を求める申し立ては昨年、6万6500件を超え最多を記録。申し立ての大半がフランス、スペイン、ポーランド、スウェーデン、オランダからだった。
スイスと合意を締結した国は今後、スイスに対し、自国民の口座情報を開示するよう申請する必要がなくなる。データは1年に1回、自動的に提供されるためだ。
用途は税の徴収に限り、公開できない。スイスは17年以降、データの収集を開始する予定で、翌18年から一部の国と情報共有する。
もっと読む 盗まれた銀行顧客情報でも法的支援可能に、スイス最高裁決定
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。