スイスの農薬会社シンジェンタは、2016年に化学大手の中国化工集団(ケムチャイナ)に430億ドルで買収された
© Keystone / Gaetan Bally
スイス連邦政府は25日、外国企業によるスイス企業の買収をめぐる規制強化の基本方針を発表した。国有企業による買収を政府の承認制とする。中国企業による買収を念頭に、技術流出やセキュリティー上のリスクを防ぐ狙いがある。
このコンテンツが公開されたのは、
政府案によると、外国の国有企業やそれに準じる投資家による買収は全て、業種に関係なく、連邦政府に申告し承認を受ける必要がある。
私企業による買収については、どの範囲に申告・承認を義務付けるかは未定。焦点の1つは、外国企業がスイスに置く子会社を、被買収企業の対象に含めるかどうかだ。
連邦経済省経済管轄局(SECO)が制度を所管する。来年3月までに詳細を詰め、連邦議会で法案審議する。
政府は新規制の目的を「公的秩序やセキュリティーが脅かされるのを防ぐ」とする。また国有・国営の外国投資家がスイスの資産を取得することで生じる競争の歪みを防ぐことにもつながるとした。
政府が懸念するのは、インフラサービスを提供する企業が破綻したり、スイス軍が特定の兵器メーカーに依存したりする事態だ。政府部門のITセキュリティーが特定のシステム業者に依存したり、データが漏洩したりすることも念頭に置く。
中国企業を警戒
買収規制を強化する動きは、2016年に農薬大手シンジェンタと機内食事業のゲートグループが相次ぎ中国企業に買収されたことに端を発する。スイスの技術が中国に流出したり、重要産業が中国に依存するようになったりするのを恐れる声が高まった。
スイス連邦議会は昨年3月、外国企業によるスイス企業の買収を承認制にする動議を採択。連邦政府は、承認制は費用対効果が悪く、既存の法体系で十分だとして反対してきたが、議会の圧力に抗いきれなくなった。
連邦政府は25日の声明で、「海外からの投資を広く受け入れることは、ビジネス拠点としてのスイスにとって中核となる政策で、国民の繁栄にとっても重要だ」と強調。開放的な政策は「スイス企業に多くの資本と知識をもたらし、価値の創造や雇用の維持・創出にもつながる」と釘を刺した。
おすすめの記事
スイス、メートル法準拠から150年
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは150年前にメートル条約に調印し、メートルやキログラムを導入した。それまでスイスの測定単位は地域や使途によって大きく異なっていた。
もっと読む スイス、メートル法準拠から150年
おすすめの記事
中国の人身売買組織を摘発 スイス・ベルン州警察
このコンテンツが公開されたのは、
ベルン州警察は19日、大規模な人身取引事件を摘発したとい発表した。容疑者は中国籍の5人で、146人の中国人女性をスイスに誘い出し、性労働に就かせていた。
もっと読む 中国の人身売買組織を摘発 スイス・ベルン州警察
おすすめの記事
まるで曲芸師 ダムの絶壁を歩くアイベックスたち
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ヴァレー州エヴィオナにあるダムでは今月中旬、約60頭のアイベックスが高さ50メートルの絶壁を伝い歩く姿が観察された。毎年この時期に天然塩を探し求める姿は、スリル満点の曲芸さながらだ。
もっと読む まるで曲芸師 ダムの絶壁を歩くアイベックスたち
おすすめの記事
スイス軍、長距離ミサイルの購入を検討
このコンテンツが公開されたのは、
スイス軍が長距離巡航ミサイルの購入を検討している。国境防衛を強化し反撃能力を保有することで潜在的な敵対勢力の攻撃を未然に防ぐ狙いだ。
もっと読む スイス軍、長距離ミサイルの購入を検討
おすすめの記事
CO₂ 回収・除去のスイス新興企業クライムワークスが人員削減へ
このコンテンツが公開されたのは、
大気中の二酸化炭素(CO₂)回収・除去を専門とするチューリヒの新興企業クライムワークスが、大規模な人員削減の危機に瀕している。
もっと読む CO₂ 回収・除去のスイス新興企業クライムワークスが人員削減へ
おすすめの記事
ルツェルンのラフマニノフ別邸の庭園が一般公開に
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ルツェルン州はロシアの作曲家セルゲイ・ラフマニノフの別荘「ヴィラ・セナール」の庭園を15日から一般公開する。ルツェルン湖畔ヘルテンシュタインにあるこの邸宅に、ラフマニノフが1932~39年暮らしていた。
もっと読む ルツェルンのラフマニノフ別邸の庭園が一般公開に
おすすめの記事
関税協議「スイス最前列に」、米財務長官
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブで行われた貿易問題を巡る米中閣僚級協議の成功を受け、ベセント米財務長官は12日、「スイスは貿易協定締結の最前列に躍り出た」と語った。
もっと読む 関税協議「スイス最前列に」、米財務長官
おすすめの記事
スイス・ニトヴァルデン準州の小学校、スマホ禁止へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス中部ニトヴァルデン準州は5日、スマートフォンをはじめとするIT機器の小学校での使用禁止を発表した。授業目的や緊急時などを除き、全面的に学校でスマホが使えなくなる。
もっと読む スイス・ニトヴァルデン準州の小学校、スマホ禁止へ
おすすめの記事
ジュネーブ国連職員約500人が予算削減に反対するデモ
このコンテンツが公開されたのは、
メーデーの1日、ジュネーブで国連欧州本部職員500人近くが国連の緊縮財政に反対する異例のデモ活動を実施した。
もっと読む ジュネーブ国連職員約500人が予算削減に反対するデモ
おすすめの記事
バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
このコンテンツが公開されたのは、
5月11~17日の欧州国別対抗の音楽祭「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(ESC)」開催中、バーゼルでは「カラオケ・トラム(路面電車)」が運行する。ビンテージ車両で90分間かけて街を走る間、乗客は無料で歌い踊ることができる。
もっと読む バーゼルで「カラオケ路面電車」走行 欧州歌合戦に合わせ
続きを読む
おすすめの記事
シンジェンタの内側 相反する企業イメージ
このコンテンツが公開されたのは、
18世紀末のごくささやかな誕生から、今やアグリビジネス業界世界最大手の一つに成長したスイス拠点の多国籍企業シンジェンタ。ここで人々はどんな働き方をしているのだろう。
もっと読む シンジェンタの内側 相反する企業イメージ
おすすめの記事
中国化工によるシンジェンタ買収、中国農業の「現代化を促進」
このコンテンツが公開されたのは、
中国の国有化学大手、中国化工集団によるシンジェンタ(農薬世界最大手、スイス)の買収交渉が今月4日に終了した。中国企業による外国企業買収として 過去最高額での買収となる。シンジェンタは、中国の農業部門の現代化に寄与するが、同時に確固たる「欧州企業」としてのアイデンティティーを維持すると同社会長は話す。
シンジェンタのミシェル・ドマレ会長は英経済紙ファイナンシャル・タイムズに、同社は「中国政府のパートナーとなって中国の農業の現代化の原動力となり、大きな成長が見込まれる」と話した。
シンジェンタは今月5日、同社の株主が430億ドル(約5兆1600億円)での買収を承認したと発表。この買収計画が開始したのは1年以上前で、農家に種子と作物保護製品を供給する国際ビジネスで現在起きている、大規模な合併の波の一部だ。
中国は食品の輸入に大きく頼っており、中国の農業生産高は欧米諸国に比べて3〜4割低かったとドマレ氏は言う。アジア太平洋地域は現在シンジェンタの地域売り上げの約15%を占めるにすぎないが、売り上げ拡大の目標数値は設定されていない。「目標は農業を現代化し、生産高を増やすことだ」
もっと読む 中国化工によるシンジェンタ買収、中国農業の「現代化を促進」
おすすめの記事
スイス通信相 中国による企業買いあさりに懸念
このコンテンツが公開されたのは、
ドリス・ロイトハルト通信相は、スイス紙とのインタビューで、中国企業がスイスの「戦略的に敏感な」企業を買収する可能性について懸念を表明した。
もっと読む スイス通信相 中国による企業買いあさりに懸念
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。