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「消費者」への二つの議題 11月27日の国民投票

27日の議題は二つとも承認されると事前調査で出ているが… Keystone

11月27日の国民投票の議題は二つ。一つは「駅や空港の商店での日曜営業の合法化」に関して。二つ目は「遺伝子組み換え食品、動物の栽培や飼育の5年間凍結」が問われる。

「日曜の営業許可」に関しては、現在は特例で営業しているこれらの商店の営業を連邦労働法を改正することで合法化することを政府が提案。「遺伝子組み換え作物」(以下GMO)に関しては環境団体が提案した議題である。

 投票の10日前に行なわれた調査では「日曜営業」は可決され、「GMO栽培の5年間の凍結」も承認されると出たが… 

日曜日は安息日であるべきか

 キリスト教では、教会に行く日曜日は「安息日」として規定されている。しかし、日曜日には街中の商店が休業しているスイスでも、駅や空港などのスーパーや商店は賑わっているという現状だ。

 現行法では「旅行者に役立つサービスを提供している店のみ営業できる」として連邦経済管轄局(SECO)が特例で許可を与えている。この時代の変化に見合った法改正をするようにと、政府は連邦法の労働法改正を提案した。

 この案に反対する団体には勿論、プロテスタント、カソリックの教会団体や左派の政党や労働組合などがある。「日曜労働の通常化への第一歩である」と危惧しているからだ。

 文化人類学者のファブリツォ・サベッリ氏によれば「社会が宗教離れしてきたわけではありません。宗教的な儀式を行なう代わりに、消費という儀式に入れ替わっただけです。家族で教会に行く代わりに、スーパーに行くようになっただけ」と解説する。

欧州諸国での現状は如何に

 欧州諸国と比較するとどうなっているのだろうか。日曜でも24時間営業が許可されているのは米国、カナダ、アイルランド、チェコにハンガリーだ。スウェーデンは5時から24時まで、フィンランドでは9時から20時まで、英国では小さな商店にのみ24時間営業を許可している。

 この他の欧州諸国では主にカソリック国を中心に許可されていない。スイスと同様に日曜営業が禁止されているのは、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スペイン、フランス、ギリシャ、オランダ、イタリア、ノルウェーとまだ多い。幾つかの国ではクリスマス前などに限り「1年間で何回」と規定されているところもある。

遺伝子組み換え食品に懐疑的なスイス人

 スイスでは現在のところ、GMOの生産・栽培はされおらず、栽培許可申請もない。それにも関わらず、2003年の9月に「GMO栽培の5年間の凍結」を求めるイニシアチブで12万人の署名が集まり、今回の国民投票となった。

 環境団体や消費団体を中心とするGMO凍結派は「現在の科学では、GMOが自然に与える影響について定かでない」というものだ。GMOが一度、自然に介入して蔓延してしまったら、後戻りできないため慎重であるべきという立場だ。

 これに対し、GMO凍結に反対派は「これまで何年間も行なわれた研究により、GMOが及ぼす悪影響は証明されていない」。そのうえ、「スイスの法手続きを考慮すると申請があってから許可が下りるまで最低5年間は掛かるので同じことだ」と主張している。また、多くの科学者達がこのモラトリアムが通れば、今後のGMO研究の発展を妨げると危惧し声明を出している。

 欧州では、つい最近、オーストリアでGMOの栽培を禁止したモラトリアムに関して、欧州裁判所(EC司法裁判所)がEU法に「違法」すると判定を下している。


swissinfo、 屋山明乃(ややまあけの)

11月27日に行われる国民投票では「駅や空港にある商店の日曜営業を認めるか」と「遺伝子組み換え作物の5年間栽培禁止」の二つの議題が問われる

- 現在は日曜日でも、スイスの大きな駅や空港にある商店は営業しているが、この投票が否決されれば、チューリヒ、バーゼルやベルンで営業している150件ほどの商店が日曜には休業になる。

- GMOに関してはスイスでの栽培や飼育を5年間行なわないというもので、承認されても他国からGMOの輸入は今後も可能だ。また、承認された場合はスイスでGMO栽培を始めるのは早くとも10年後となる。

- スイスで2003年にGfs研究所が行なった調査によると、67%の人が農業でGMOを栽培するのに反対し、65%の人がGMOを食べたくないと答えている。

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