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40歳超のトップアスリートたち 年齢の壁を超える鍵は

トム・ブレイディ選手は45歳まで現役を続行するという。妻はブラジル出身のスーパーモデル、ジゼル・ブンチェンさんだ 2018 Invision

43歳のトム・ブレイディ選手が7日、自身10度目となる米NFLスーパーボウルに出場する。スポーツ医学や栄養学の進歩に伴い、40歳を超えて活躍するトップアスリートは珍しくなくなった。年齢の壁にはどこまで抗えるのか。

このコンテンツは 2021/02/07 06:00

米国最高峰のアメリカンフットボールリーグ、NFLの選手生命は平均3~4年と言われる。現役選手の平均年齢が約26歳という中で、20年のキャリアを持つブレイディ選手は異色だ。

世界的に有名なスイス人アスリートでは、男子プロテニスのロジャー・フェデラー選手が今年40歳を迎える。23年のキャリアで獲得したグランドスラム(4大大会)タイトルは史上最多タイの20勝。昨年は2度にわたる右ひざの手術で戦線を離脱したが、最近になって3月のツアー復帰を発表した。

男子テニスのロジャー・フェデラー選手 Keystone / Ali Haider

スイスにはほかにも、2002、10年の冬季五輪で4個の金メダルを獲得し、その顔つきから「ハリーポッター」の愛称で知られるスキージャンプのシモン・アマン選手が今年40歳になる。アマン選手は1月末のワールドカップ・ヴィリンゲン大会(ドイツ)で、上位10位に入るジャンプを見せた。2022年の北京冬季五輪まで現役を続行するという。

スキージャンプのシモン・アマン選手 Ap / Terje Bendiksby

世界を見渡せば、日本のプロサッカー1部リーグ(J1)には53歳のストライカー三浦知良選手がいる。三浦選手は54歳の誕生日を前に、所属する横浜FCとの契約を更新したばかり。スキージャンプ五輪メダリストで、自身通算9度目の22年冬季五輪出場を狙う葛西紀明選手は現在48歳だ。葛西選手とアマン選手はお互いを認め合う仲でもある。

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また、10代で選手としてのピークを迎えると言われる女子体操では、45歳のオクサナ・チュソビチナ選手(ウズベキスタン)が東京五輪への出場権を手にしている。

強さの秘密

フェデラー選手を始め、第一線で長く活躍するトップアスリートには共通点がある。持って生まれた素質はもちろん、そのあくなき向上心だ。

フェデラー選手は20年間、フィットネストレーナーのピエール・パガニーニさんの下で、加齢に応じて量から質に焦点を当てたトレーニングに変えた。連邦スポーツ省スポーツ研究所で教鞭をとるスポーツトレーナーのアドリアン・ローテンビューラーさんは、パガニーニさんの卓越したフィットネストレーニングシステムがフェデラー選手の身体能力維持に大きく貢献していると指摘する。

またその他のトレーニング、ツアー出場のプランニングなど「キャリア後半における『チーム・フェデラー』のマネジメントが非常に優れている。フェデラーによる人選も完璧だ」と評価する。

チューリヒ拠点のスポーツ心理学の専門家、ハンスペーター・グーベルマンさんは、心理・物理的な要因が大きいと分析する。特にフェデラー選手、アマン選手に関しては「キャリア後半まで大きなけがを免れた。さらに決定的なのは、この2人がたゆまぬ情熱を持っていること」と話す。

フェデラー選手のテニスへの情熱は、パガニーニさんも舌を巻くほどだ。パガニーニさんは以前、スイス公共放送(SRF、独語)のインタビュー他のサイトへで「フェデラーが『ピエール、もう十分やった」と言ってくるのを待っている。でも、彼はいつもきらきらした目でやってくるんだ」と語っている。

延びる選手寿命

アスリートを支える環境も向上している。スポーツ医学・心理学、トレーニング理論、リハビリテーション、栄養学の発展により選手寿命が延び、35歳、40歳超のアスリートがトップレベルで活躍することは珍しくなくなった。

グーベルマンさんも「アメリカンフットボールなど一部の競技を除き、これは大半のスポーツに当てはまる」と指摘する。ベルン大学スポーツ科学研究所の研究者がスイス国内のトップアスリート344人を対象に行った調査では、男子選手の現役期間は1988年~2012年の間に7年1カ月延び、女子選手では4年延びた。

グーベルマンさんは「トップスポーツのプロ化で競技環境が改善され、それが選手生命の延びに貢献した可能性がある。トップスポーツの商業化で収入面がアップしたことも大きい」と話す。

一方で、キャリアを短命にし、最悪引退につながる要因も存在するという。「多くのスポーツではトップアスリートが身体の限界に達したり、ラグビーやアイスホッケーなど過酷な競技では深刻なけがを負ってしまう。ドーピング違反で競技人生に幕を引くケースも増えている」

年齢の壁にどこまで抗えるか

加齢に伴い、人間の運動能力は減退する。持久力はある程度ピークの山を遅らせることができるが、スピード、筋力は25歳ごろを境に下降線をたどると言われる。

ローテンビューラーさんは「精神的な強さや経験値は、一定の状況で決定的な要因になりえるが、長期的には大きな意味をなさない。身体能力がものをいうスポーツでは、時計の針は戻せない。大半のスポーツで瞬発力、スピードが求められるようになった現状を考えればなおさらだ」と話す。

その中で選手寿命を延ばすには、トレーニングの負荷を管理し、オーバーロードを防ぐことがカギだという。技術革新で機能が向上したトレーニングモニタリングシステムを活用すれば、その時々の選手の身体的状況に応じた栄養補給、医療ケアができるという。

クーゲルマンさんは「心身の健康が第一だ」と話す。「これは、キャリア初期に投資できる部分でもある。 ゆっくりと負荷を増やし、最適な回復方法を取る。健康的な食事を取り、サステナブルな社会的ネットワークを築く。この段階では、特に両親による影響が大きい」

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