The Swiss voice in the world since 1935
トップ・ストーリー
スイスの民主主義
ニュースレターへの登録

スイス、コモディティ企業向けに人権ガイドラインを発行

protest
ガイダンスでは労働者の安全や地域社会での採掘が与える影響、政府機能の弱い国での事業のあり方を強調した Keystone

スイス連邦政府は鉱物採掘など商品(コモディティ)取引に携わる企業向けの人権ガイドラインを世界で初めて発行した。

スイスは先週ジュネーブで開かれた国連の第7回ビジネスと人権に関するフォーラムで、「国連ビジネスと人権に関する指導原則の導入のためのガイドライン外部リンク」を発表した。

ガイドラインでは、商品取引に関わる企業が人権や社会的権利に与える影響を十分配慮すべきだと指摘。労働者の安全や地域社会での採掘、「政府機能が弱い」国でのビジネスなどでは影響が大きくなるという。

企業は投資先にリスクがないか事前に調査するデューデリジェンスをどの国でも行うべきだとし、人権に配慮することをはっきりと宣言したり、今ある取引関係を見直して有害な事業を改めたりするよう促した。

スイスの商品取引企業は石油や金属、穀物などの輸出入において国際的なハブの一つになっている。途上国での事業方法に対する批判も出る。

「責任ある商慣習の推進を」

ガイダンスの作成は連邦外務省と連邦経済省経済管轄局(SECO)が主導し、商品企業やNGO、ジュネーブ州政府から意見を募った。経済協力開発機構(OECD)のまとめた多国籍企業ガイドラインや国連のビジネスと人権に関する指導原則を元に草案を作成。企業がデューデリジェンスを導入する際に参考になる事例集もまとめた。

序文で「スイスの主要な経済主体が責任ある事業活動とは何かを理解する助けとなり、スイスの商品市場関連企業が責任ある商慣行を推し進めるのに役立つと確信する」と記した。

スイス貿易・輸送機構は「ガイドラインは企業が最も優先すべき課題の一つである人権に焦点を当て、国連の指導原則が求める内容を、実例を挙げて解説するものだ」と評価した。

ただ、このガイドラインは、人権侵害を回避するための企業の指針であり、法的拘束力はない。考案プロセスに関わったスイスのNGO「パブリック・アイ」は、「商品企業は問題の根本的な解決を図るよりも、イメージを取り繕うとすることに熱心だ」と批判した。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

煙の立ち上る原子力発電所

おすすめの記事

スイスの政治

スイス・ゲスゲン原発、再稼働はさらに半年延期

このコンテンツが公開されたのは、 スイス北西部のゲスゲン原子力発電所の運転再開がさらに6カ月間遅れることになった。定期検査が行われた5月下旬以降、発電を停止している。

もっと読む スイス・ゲスゲン原発、再稼働はさらに半年延期
会見に応じるスイスのカシス外相とイタリアの外相

おすすめの記事

スイス、ロシア・ウクライナ首脳会談の「準備は万全」

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府のイグナツィオ・カシス外相は19日、ウクライナ情勢を巡る和平交渉について、スイスはロシアとウクライナの首脳会談を開催する「準備は万全」と述べた。

もっと読む スイス、ロシア・ウクライナ首脳会談の「準備は万全」
ドナルド・トランプ大統領

おすすめの記事

世界貿易

トランプ氏、スイス大統領に金銭支払いを要求 関税発表前日の電話会談の詳細が明らかに

このコンテンツが公開されたのは、 スイスに対し39%の関税を発表する前日の7月31日、ドナルド・トランプ大統領がカリン・ケラー・ズッター大統領との電話会談で、米国への「投資」ではなく直接的な金銭支払いを要求していたことが分かった。大衆紙ブリック日曜版が報じた。

もっと読む トランプ氏、スイス大統領に金銭支払いを要求 関税発表前日の電話会談の詳細が明らかに
大西卓哉飛行士

おすすめの記事

宇宙研究

国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献

このコンテンツが公開されたのは、 日本製とドイツ製のロボットが、国際宇宙ステーション(ISS)で「宝探し」をして遊んだ。スイス・ルツェルン応用科学芸術大学(HSLU)もこの実験に貢献した。

もっと読む 国際宇宙ステーションでロボットが「宝探し」に成功 スイスも貢献
ジュネーブのトラム

おすすめの記事

気候適応

ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増

このコンテンツが公開されたのは、 ジュネーブ州では13日、バスやトラム(路面電車)など公共交通機関が終日無料となった。オゾン濃度が急増したことへの対応で、スイスでは初めての措置だ。

もっと読む ジュネーブ州、バス・路面電車を13日のみ無料に オゾン濃度が急増
湖に飛び込もうとする男性の後ろ姿

おすすめの記事

スイスで記録的暑さ 政府が警告

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで全国的に気温が上昇し、猛暑への警戒が強まっている。11日にはスイス西部と南部ティチーノ州の一部地域に対し、熱中症など健康被害を受けるリスクが大きい「危険度3」の警報が発令された。

もっと読む スイスで記録的暑さ 政府が警告
作家のアドルフ・ムシュク氏

おすすめの記事

文化

知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞

このコンテンツが公開されたのは、 ハンス・リンギエ財団は9日チューリヒ在住の作家アドルフ・ムシュグさん(91)に欧州政治文化賞と賞金5万ユーロ(約860万円)を授与した。同賞がスイス人に授与されるのは初めて。

もっと読む 知日スイス人作家のアドルフ・ムシュクさん、欧州政治文化賞を受賞

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部