コロナ無利子融資、不正受給はごく少数

新型コロナウイルス危機で影響を受けた企業に対する無利子融資申請のうち、詐欺目的の不正受給は少数にとどまった。しかし捜査当局は氷山の一角に過ぎないと警戒する。

このコンテンツは 2020/06/09 10:02
コロナ緊急融資を最も申請・受給した部門は自動車セクターだった Keystone / Alessandro Della Bella

資金の流動性がなければ、企業に破産の危険が生じる。スイスの中小企業(SME)がそれを最も身に染みて感じている。この国の中小企業は59万事業所、被雇用者は450万人に上る。これらのうち、53万事業所は社員9人までの小規模企業だ。これらの企業がスイス経済のバックボーンを支えている。

このためスイス政府(連邦内閣)にとっては、コロナ危機による企業の破産を防ぎ、国の経済を安定させることが絶対的な優先事項だった。

連邦内閣は2020年3月、パンデミック(世界的大流行)による経済損失を抑えるための広範な財政支援措置をまとめた。主には国内企業への橋渡し融資で、総額400億フラン(約4兆4千億円)の財政出動を行った。政府はこれにより、企業が固定費を賄うのに十分な流動性を確保できるとした。

「最初の10日間で、申請件数は飛躍的に増加した。この規模では足りなくなるのではと危惧した」

マルティン・ゴデル、SECO

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政府の支援措置は同月始動し、あと2カ月間有効だ。これまでに、計150億フランが12万4824事業所に行き渡った。

SECOの中小企業政策部門の責任者マルティン・ゴデル氏は、この数字に特段驚きはしない。「この決定を出す前に、複数のシナリオを検討した。具体的な件数の予想がつかないので、とにかく多く見積もった。重要なのは迅速に対応することだった」

残余金はまだ250億フランある。「最初の10日間で、申請件数は飛躍的に増加した」とゴデル氏は語る。数字にすると、1日あたり約8万件の申請が寄せられたという。

連邦内閣の最初の経済支援パッケージは200億フランだった。ゴデル氏は「この金額では足りなくなるのではと危惧した。政府は即時に200億フランの追加融資を決めた。企業は営業を再開したが、申請は右肩上がりに増えていくとみている。ただ400億フランで足りると考えている」という。

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スイスには約59万の中小企業がある(従業員数250人未満)。つまり、これらの企業の5分の1が橋渡し融資を申請したことになる。

50万フラン超の融資申請は、500件を超えた。融資額は平均260万フランだ。 「大企業は通常、十分な流動性を数カ月間維持できるため、支援の必要が少ない。そのため、こうした企業からの申請は比較的少ない」とゴデル氏は指摘する。

また別の理由として「銀行は50万フラン超の融資申請はより厳重にチェックする。処理にも時間がかかる。政府保証は100%ではなく85%だ」という点も挙げる。

融資先で多いのは?

これまでに支給されたコロナ融資のほとんどは、経済活動が活発で、新型コロナウイルスの影響を最も受けている5州(チューリヒ・ヴォー、ベルン、ジュネーブ・ティチーノ)に渡った。連邦統計局によると、国内中小企業59万事業所のうち、36万事業所がこの5地域にある。

影響の大きい経済セクターは、主に自動車(販売から修理サービス、部品製造まで)、製造産業、建設だった。これら3つの部門が、橋渡し融資の52.7%を受給した。

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融資詐欺への罰則

2000万フランまでの融資であれば、申請はオンラインででき、時間も数分で済む。政府はあえて手続きを簡素化したが、これが皮肉にも不正受給事件を誘発した。

5月25日、ヴォー州検察庁が詐欺、背任、偽造、マネーロンダリング、コロナ緊急融資の不正受給などの事件として捜査を始めたことを発表した。150万フラン超が不正受給されたという。しかも、これが唯一のケースではない。

「融資の受給は比較的簡単だが、詐欺の特定も簡単だ」

マルティン・ゴデル、SECO

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ヴォー州検察庁のアントン・リューシュ検事は、フランス語圏のスイス公共放送(RTS)に対し、こう断言した。「あらゆる手段を使って詐欺を特定する。連帯基金を不正に受給した者は、かならず摘発する」

ヴォー州の事件は確かに孤立した事例ではない。チューリヒ州でも不正受給が疑われるケースがあった。チューリヒの検察庁は5月中旬、約30件の融資事案(総額約250万フラン)を詐欺容疑で捜査したという。

州検察協議会は、これらの事件は氷山の一角にすぎないと危惧する。

SECOは、不正が疑われる事案は現在12万4824件の申請のうち117件だと述べた。ゴデル氏は 「これらの統計は、銀行自体からではなく保証機関の報告件数に過ぎない」と強調する。

これを多いとみるか、少ないとみるか。「それは問題をどちら側から見るかによる。不正受給が疑われるケースは多いだろう。これらは検証が必要で、私たちはまさに今それをやっている。告訴事案はまだいない」

SECOは約10日前、不正受給のリスクを抑え、詐欺事案の特定を可能にする措置などを盛り込んだ計画を発表した。

ゴデル氏は「融資の取得は比較的簡単だが、対策を講じれば、不正受給した人を確実に追跡できる。誰も罪を逃れられない。警告は明白だ」と断言する。

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犯行手段には主に2つある。1つは、複数の申請を異なる銀行に送ることだ。こうすれば、企業は多額の融資を無利子で受けられる。

2つ目は、昨年の売り上げを不当に多く改ざんすることだ。これは受給資格が2019年の売り上げの10%を超えないこと、と決められているため。一部の企業は、会社が破産している、債権者との和解中、清算手続き中などと偽って融資を受け取ろうとした。

申請の簡素化と監視の限界

連邦内閣があえてこうした簡単な申請制度にしたのは、中小企業が橋渡し融資を迅速に受け取れるようにするためだった。合計50万フランまでなら、短期間で受給できる。しかも政府の100%保証が付く。金利は現在0%だ。

返済は5年以内に完了しなければならない。コロナ融資の申請は、企業ごとに1つの銀行だけと決まっている。

本当に簡単なのだろうか?もちろん。詐欺師もそう思うだろう。ウェブサイトに行き、フォームに記入して、それをリストにある123の上場銀行のどれかにメールするだけ。10分もあれば終わる。

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