スイスの視点を10言語で

800の視点から見た「エアポート」

写真集「エアポート(Airports)」は、スイス人写真家ペーター・フィッシュリ氏とダビッド・ヴァイス氏が、1987年から2011年まで撮影した素晴らしい空港写真800点を収める。ほかのシリーズと違い、「エアポート」は常に拡大してきた。シリーズ全集がこのたび初めて、完全版として出版される。

アメリカの映画監督ジョン・ウォーターズはこの写真集に対し次のようなコメントを寄せている。「飛行機の中で暇だったり、イライラしたり、疲れていたりして窓から外をのぞくたびに、フィッシュリとヴァイスの写真よりも、もっとつまらなく、くだらなく、特に注目すべき点もない平凡な静物画が見える。私は90年代の新しい美をちらりとこの目で見たのだ。ポップの平凡さとミニマリズムの腹立たしさの上に根を下ろし、驚くほど退屈な、日常的に平凡な、これといって特筆するところもない新しい傑作の形を。

見知らぬスカイライン、生い茂る緑、ましてやロマンチックな夕暮れさえも、このナンセンスな写真家たちに壊されてしまう。クレイジーかつ抑え気味に怒りながら、いやいや任務をこなす、絵はがき会社の社員のような写真家たちにだ。彼らの作品を見てみると、自分が夏の渋滞にはまってしまった飛行機のエコノミークラス後方部にいるかのような印象を受ける。その飛行機の添乗員は3カ国語でこう機内放送をするのだ。空調がうまく機能しなくて申し訳なく思うと。そしてこう言う。『当機は18番目に離陸予定でございます』

照明のついていない格納庫に面白げもなく止まっている空っぽの旅客機は、文字通りつまらない。素晴らしく中心にフォーカスを合わせた、ルフトハンザの窓なし貨物輸送機のミディアムショットを見ると、我々はその内部に積まれた貨物よりも良い境遇にいるとはいえないのではと思えてくる。だが、この平凡な眺めを満喫するには、特別に感受性の鈍い目がいまだ必要なのだ」

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部