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スイスの女性参政権は世界をどう変えたか

スイスはリビアなど国外でジェンダー平等を積極的に推進している Mahmud TURKIA / AFP

男女平等の参政権が導入された半世紀前、スイスは男性優位のジェンダー後進国と言われていた。だが現在は女性の権利を広めるためにグローバルな取り組みを行っている。

このコンテンツは 2021/04/11 06:00

リビア南部のオアシス都市セブハでこの春、歴史的な出来事が起きた。3月中旬の住民集会で、地元政治での男女同権を目指す行動計画が初めて採択された。チュニジアのリビアで長年取材してきたジャーナリスト、ラシッド・ケシャナ氏によれば、集会には多数の参加者が集まり、女性参加者は45%を占めた。

またリビアの他の43の自治体でもこの数週間で同様の集会が開かれ、女性も多数参加した。これらの集会はスイスも支援している。内戦が数年続いていたリビアから政界、市民社会、経済界の代表が最近、ジュネーブで暫定政府樹立に合意し、暫定首相と暫定統治評議会メンバーが選出された。外務大臣に就いたナジラ・マンゴーシュ氏と、法務大臣に就いたハリマ・イブラヒム・アブデラマネ氏は、初の女性主要閣僚だ。

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「和平プロセスでは、女性が市民社会の一員として、紛争当事者の代表として、そして調停者として交渉に参加することが重要だ」と、ジュネーブ国際開発高等研究所(IHEID)の研究員(政治学)で、ベルン出身のサラ・ヘルミュラー氏は語る。同氏は2011年、リビアの元最高指導者ムアンマル・カダフィ大佐の死亡からわずか1週間後に、首都トリポリで市民社会の代表が参加する未来フォーラムを開催した。

同氏は19年までスイス平和財団「スイスピース」に勤務。コンゴ、ダルフール、シリアなどの紛争地域で和平プロセスに同行した。3月8日の国際女性デーに発足した連邦外務省のネットワーク「和平プロセスにおけるスイス人女性他のサイトへ(SWiPP)」のメンバーも務める。同氏は「女性の方が性質上、男性よりも平和を好むというわけではない。しかし、女性としての共通のアイデンティティは人と人とのつながりを強め、皆が受け入れやすい新たな解決策に貢献できる」と強調する。

この新しいネットワークには現在、外交官、またはNGOや国際機関の職員として世界のさまざまな地域で平和構築活動に従事するスイス人女性15人が参加。スイスがジェンダー平等を推進する国として国際舞台で存在感を強めていることを示す例は他にもある。ニューヨークで現在開かれている国連女性の地位委員会で、スイスが男女間の賃金格差を取り上げたことだ。

「女性の権利は人権であり、人権がなければ平和も開発も空約束に過ぎない」と連邦外務省平和・人権部門を率いるジモン・ガイスビューラー大使は強調する。同氏によると、スイスはフェミニスト外交の世界的な柱とされる国連決議1325号を指針にしている。

こうした流れは連邦外務省の人事にも表れている。現在、同省に6つある主要ポストのうち4つを、そして111ある大使ポストのうち22を女性が占める(ちなみに、スイス初の女性大使はフランチェスカ・ポメッタ氏で、1987年から駐イタリア・スイス大使を務めた)。

チリの憲法議会は男女半々に

ジェンダー平等分野でスイスが共同支援する国際組織の1つが、民主主義・選挙支援国際研究所他のサイトへ(IDEA)だ。「IDEAは、選挙や投票のプロセスに女性をもっと参加させたい世界中の選挙管理委員会を支援している」と語るのは、ジンバブエ出身で、33カ国が加盟するIDEAの政治的権利・市民参加部門責任者ルンビザイ・カンダワスヴィカ・ンフンドゥ氏だ。同氏は「IDEAはスイスの協力の下で男女平等な政治参画を促している」と話し、チリの憲法制定プロセスを例に挙げる。チリでは4月11日、男女半々で構成される憲法議会の選挙が行われる。

スイスは西アフリカのベナンで公職に立候補する女性を支援している。連邦外務省開発協力局の報告書によると、ベナンでは市町村レベルの議会に選出された女性の割合が過去4年間で倍増した。一方、サウジアラビアなどの国では女性の政治参加は厳しい状況だ。「私たちの国ではいまだ女性の自由と権利が家父長制の規範に縛られている」と、サウジアラビアの女性人権活動家で、08年から首都リヤドのキング・サウード大学教授(女性史)のハトゥーン・アル・ファッシ氏は語る。

中立国スイスにとっても、権威主義的な国で人権や女性の権利を推進することには限度がある。「このような場合は舞台裏での粘り強さが相当必要であり、他国と共同で問題提起しなければならないこともある」と前出のガイスビュラー氏は言う。スイスが昨秋、国連人権理事会でサウジ政権を強く非難する決議を共同提出したのはそのためだ。この決議は、アル・ファッシ氏をはじめとする女性人権活動家が投獄されたことを受けて取りまとめられた。

サウジアラビアのような絶対王政であっても、こうした市民社会や国際社会の圧力から完全に逃れることはできないようだ。サウジ政府も00年には女性差別撤廃条約を批准した。「イスラム教における平等と正義の原則の上にこの条約が加われば、女性の影響力はある程度強化されるだろう」とアル・ファッシ氏は語る。同氏の母国サウジアラビアは、世界では最も遅く15年に女性参政権を導入した。

(独語からの翻訳・鹿島田芙美)

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