アイガー氷河の内部透視で浸食理論に新説 日本人らベルン大研究チーム

三大名峰(アイガー、メンヒ、ユングフラウ)とアイガー氷河(写真左部分) Keystone / Alessandro Della Bella


日本人を含むベルン大学の研究チームが行った氷河内部観測プロジェクトの研究成果が6日、英ネイチャー誌の「SCIENTIFIC REPORTS 」に掲載された。宇宙線を利用してアイガー氷河の内部をレントゲンのように映し出すことで、氷河の浸食がこれまで考えられていたよりも標高の高い場所で起こりうることを実証した。

このコンテンツは 2019/05/08 12:30

ベルン大学の日本人研究者を中心とした研究チームによるプロジェクト「Eiger-mu GT」は2015年に発足。宇宙から降り注ぐ「ミュー粒子(ミューオン)」を利用して巨大な物質の内部をレントゲン写真のように写す測定方法「ミュオグラフィ」で、これまで難しいとされてきた、融解する前のアイガー氷河の内部観測に成功した。

プロジェクトではまず測定方法の有効性を氷河で確かめるため、2016年秋~17年にかけてユングフラウにあるアレッチ氷河の最上流部分で小規模の内部観測を行った。

>> ユングフラウ・アレッチ氷河の内部観測はどのように行われたのか?

2016年、ユングフラウ鉄道のトンネルの壁に、ミュー粒子をとらえる写真フィルムを付けた検出器を設置する研究チーム Bern University

アレッチ氷河の観測成功後の2017年、登攀が困難なことで有名なアイガー北壁の近くにある、アイガー氷河の測定を開始。アレッチ氷河での実験よりも大きな撮影フィルムを使い、また長い時間をかけて測定することで、分析の精度が増した。

測定結果を含む研究成果は6日付けで、英ネイチャー誌のオープンアクセスジャーナル「SCIENTIFIC REPORTS 」に掲載された。

チームの一員として撮影フィルムを手作りし、測定に取り組んだ博士研究員の西山竜一さんは、「結果として、氷河が山を削り出していく様のスナップショットを撮ることができた。これまで氷河浸食は氷の融解が顕著な、標高が低い領域で起こると考えられてきたが、今回の実測で標高3000メートルを超える領域でも、基盤岩を鋭くえぐり出すことがあることがわかった」と説明。


アイガー氷河内部の測定結果 Scientific Reports / Bern University

チームの中心となってプロジェクトを進めた物理学者の有賀昭貴さんは、「今まで観測されていなかったことがわかったのも大きな成果。この方法が氷河学に有効だということも実証されたので、研究は今後、さらに発展する可能性がある」と期待を語った。

同プロジェクトはベルン大学の物理学と地理学の教授、同大のThe Laboratory for High-Energy Physics (LHEP)、The Institute of Geological Sciences(GEO)の研究員と学生約10人(スイス、日本、イタリア、オーストリア、ウクライナ)が行った。国際交流財団ユングフラウヨッホ・ゴルナーグラート研究ステーション(HFSJG)、ユングフラウ鉄道、スイス連邦基金(SNF/FNS)が支援した。

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