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第41回ローザンヌ国際バレエコンクール


同級生に、世界に、福島からもがんばったよとメッセージを届けたい


里信邦子(さとのぶ くにこ)


参加者全員のなかで2番目に若いので、102(1番若い生徒は101)のゼッケンをもらった佐藤理央さん。3日目の得意なクラシックのレッスンで (Prix de Lausanne 2013 – photo Gregory Batardon)

参加者全員のなかで2番目に若いので、102(1番若い生徒は101)のゼッケンをもらった佐藤理央さん。3日目の得意なクラシックのレッスンで

(Prix de Lausanne 2013 – photo Gregory Batardon)

福島市からローザンヌ国際バレエコンクールに参加した佐藤理央(りお)さん、15歳。出場者の中で2番目に若い。小柄な体に強い意志を秘める佐藤さんに、バレエへの想い、福島からの参加の意味などを聞いた。

 「ローザンヌの雰囲気は特別。舞台もきれいで驚いたけれど、誰もいないところで練習していてもなんかとても緊張感がある」と、静かに考えながら話す。

 第1日目のクラシックの練習。コーチの先生が説明する足の動きを、佐籐さんは手を動かしながら素早く頭に入れようとしている。次の瞬間、第1グループなのですぐ踊り出さないといけない。が、動きはピタリと音楽に合い優雅で一つの間違いもない。すごいですねと言うと、「クラシックはやっぱり緊張しない。小さいとき(3歳)からやっているので、理解するのは早いと思う。楽しんで踊れる。でもコンテンポラリーは苦手」との答えが返ってきた。

 コンテンポラリーでは、課題のバリエーションでも教えられる新しい動きでも、音楽無しだとできる。ところが、特に早いリズムの音楽だときちんと動こうとすると音に遅れ、逆に音に合わせようとすると一部動作ができなくなってしまう。「でも、日本では外国のコンテンポラリーの先生に指導を受ける機会があまりないので、ここで大きく踊るやり方とかを学べて勉強になる。うれしい」と言う。

 とにかく、バレエが好きだ。「人の踊るのを見るのも感動するし好きだけど、やっぱり自分で(その人に代わって)踊りたいと思ってしまう」

第41回ローザンヌ国際バレエコンクール

同コンクールはローザンヌで1973年、ブランシュバイグ夫妻によって創設された。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクール。

若いダンザーの登竜門と言われる。その目的は伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。

第41回コンクールは、ローザンヌで2013年1月27日から2月2日まで行われる。

今回のコンクール出場者を決める予選は、2012年10月にビデオ審査で行われた。その結果、世界32カ国からの応募者254人(女子189人、男子65人)中、75人(女子38人、男子37人)が選ばれた。

日本からは、昨年に続き最多の14人(女子10人、男子4人)が選ばれた。14人のうち直接日本から参加するのは7人、残り7人は外国に留学中。

日本に次いで参加者が多いのは、中国からの12人、アメリカからの9人。

 昨年と同様、二つの年齢グループ(15、16歳と17、18歳)に分かれて4日間の練習を行い、この練習の採点合計と2月1日の選抜の採点の合計で2月2日の決勝進出者が選ばれる。

決勝進出者の中から7~8人の入賞者が最終的に選出される。順位は一応あるものの、7人は同格とみなされ同額の奨学金を受け取る。

同級生を勇気づけられたら

 福島市出身の佐籐さん。低線量被曝が続く環境での精神的ストレスを、どう調整しここまでバレエに集中してこれたのだろうか。単刀直入に聞いてみた。すると、「今はもう線量も低くなっているので、まったく気にせず普通に生活してる」との答え。

 「でも、原発事故後は息をするのが怖かった。放射能を吸い込むと、がんになったりするという話を聞いていたので。また、帰宅すると手から肘ぐらいまできれいに洗っていた。そんな状態が1年位続いたかな・・・。ただ、バレエの練習は屋内だったので、以前と変わらず練習に集中できた。外に出るとまた怖かったけれど」

 「福島の人は我慢強いと言われるけど、そうかもしれない。同級生の男の子が2、3カ月たったとき、もう大丈夫だよと明るく教室の中で言った。みんなを励まそうとして。本当は心配なのにそれを隠しながらそう言った」と語る目が少し潤む。だからこそ今回、難関を突破してローザンヌに選ばれたことを「私、がんばったよ」というメッセージとして同級生に伝え勇気づけられたらうれしいと言う。

 それと、もう一つは「福島からも(ほかの所から来た人と同じように普通に)ローザンヌに来れたこと」をスイスの人、世界の人に知ってもらいたいと言う。

 今回同行してくれた「竹内ひとみバレエスクール」の竹内美和先生も、「福島は東日本大震災で世界の多くの人に助けてもらった。本当にうれしかった。お返しは何もできないけれど、福島からもこうして(今は立ち直って)コンクールに出場できたということをお伝えすることで、ある種のお礼が出来るのではないかと思った」と話す。

客観的に自分を見つめる

 竹内先生は佐籐さんを「よその先生から、理央ちゃんってすごく努力しているんでしょうとよく聞かれるが、実はそういうタイプではない。もちろん練習は毎日学校の後5時間はしているが、むしろ短期で集中して覚えられる子だ」と高く評価する。

 佐藤さんは、客観的に自分を見つめる力も持っている。「小柄なので、欠点をカバーするよう大きく動いて大きく見せる努力をしながら、好きなクラシックバレエの道に進みたい」と将来もしっかりと決まっている。

 憧れは、英国ロイヤルバレエでプランシパルだった吉田都さんやアリーナ・ゴジョカルさん。そして究極の目的はこの2人のダンサーのようにロイヤルのカンパニーで踊ることだ。

 だがその道は少しずつ開かれているように見える。ローザンヌへの参加が決まった直後の昨年11月、アメリカンユースコンクールの日本予選女子の部で1位に入賞。その場でロイヤルバレエスクールで1年間勉強するオファーをもらった。「でも分からない。ローザンヌできちんと踊ってみせないとキャンセルされるかもしれない」と、慎重だ。

 だからこそ、2月1日金曜日の決勝進出者20人を選ぶ準決勝に残れたらと願っている。「準決勝ではがんばりたい。でも、楽しく踊りたい。それが今の目標です」



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