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COVID-19 「全ての国に新型ウイルス検出・アラートシステムの整備を」

infirmière

キャプション:新型コロナウイルス関連患者に対応するヴァレー(ヴァリス)州シオン病院の医療コンテナ。撮影2020年3月4日

(Keystone / Jean-christophe Bott)

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、各国の医療システムの限界と弱点が表面化している。それと同時に、2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行後から進められてきた国際的な対策計画の成果も見られるという。世界保健機構(WHO、本部ジュネーブ)で30年活動した経験を持つフランスの専門家、ジル・プムロル医師に話を聞いた。

WHOは、新たなパンデミック(世界的な大流行)が起きるたびに、対応が過剰だ、反対に不十分だと非難されてきた。国際公衆衛生を専門にするプムロル医師は、加盟国、中でも出資大国の要求と、国際的な保健医療政策コーディネーターという役割との間で板挟みになりながらも、WHOは新たな感染症への対応を一歩一歩向上させてきたと言う。


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国際公衆衛生専門家のジル・プムロル氏は、世界保健機構(WHO)の医師としてカリブ海諸島、アジア、太平洋諸島、アフリカで活動した。2005年の国際保健規則(IHR)改定時の責任者も務めた。その経験を活かして現在は、ジュネーブ安全保障政策センター(GCSP)で国際公衆衛生安全対策について講義をしている。

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swissinfo.ch:中国で発生した新型コロナウイルス感染症が急速に拡大し、世界は重大な脅威に直面しています。この新ウイルスはこれまでと何が違うのでしょうか?

ジル・プムロル:ヒトがかかるウイルス性感染症の6割が動物由来だ。2000年に始動したアプローチ「One Health(ワンヘルス)」は、全ての生物は共に関わり合いながら暮らしており、全生物の健康は密接に影響し合っているという概念に基づいている。

今、動物から人へのウイルス感染が深刻になっているが、この現象は私たちの社会が発展し、世界的な人口増加によって人間が野生の生態系へと生活圏を広げたことに関連している。

衛生の向上と、抗生物質の研究開発が進み、今ではコレラのような感染症の脅威は減った。だが一方で、まだ特効薬のない動物由来の新しいウイルスの出現に常にさらされてもいる。

swissinfo.ch:ウイルスも他の生物と同様に、自然界の変化に応じて進化するということですか。

プムロル:その通り。ウイルスは宿主となる生物の細胞がなくては増殖できない。ウイルスの中には生物との間にバランスが生まれ、うまく共生している例もある。コウモリがそうだ。多くのウイルスを保有していて、人にそのウイルスを感染させることも可能だが、コウモリが病気になることも死ぬこともない。

swissinfo.ch:1世紀前から医学と衛生が著しく発達しました。保健衛生が向上した今の感染症の状況は?

プムロル:私たちが平均80歳まで生きられるのは、確かに、衛生政策、ワクチン、抗生物質治療などが進化したおかげだ。多くの感染症を阻止することができている。

昨今の流行の原因となったウイルスは以前から存在していた可能性もある。だが今日では、ウイルスをより早く検出することも、より的確に監視することも可能だ。そのため私たちは、定期的に新たなウイルスの脅威にさらされているような印象を受けるのかもしれない。また、新しいワクチンの製造が進んでいても、治療がある種の限界に達することもある。

リアルタイムで見る新型コロナウイルスの感染拡大状況(米ジョンズ・ホプキンス大学作成)

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(Johns-Hopkins University)

新型コロナウイルスの出現で、別の問題も表面化している。多くの国がまだ流行リスクに対する対策を取っていないことだ。早期検出のシステムや、新たな感染を阻止する迅速な対策システムを持っていない。

swissinfo.ch:WHOの反応は?

プムロル:私たちはここ数年WHOと共に、新たなウイルスに備える必要があると各国に警告するため、国際保健規則の整備に多くの努力をしてきた。この新たな規則は、迅速に抑制されたにもかかわらず、経済にかなりの打撃を与えたSARSの流行を受けて、2015年にまとめられたものだ。感染症の国際的伝播を阻止するための情報共有や、相互援助、適切な対応策において、どう協力していくかについて合意するために各国と協議がなされた。

エイズ(HIV)やSARS(重症急性呼吸器症候群)などの流行を受けて2005年に改定された国際保健規則(IHR)には、世界保健機構(WHO)全加盟国を含めた196カ国が署名し、世界的な衛生上の安全保障のための協力を誓った。署名国は、公衆衛生上の問題の検出、評価、通知における対策強化に合意した。WHOがコーディネーターとなり、関連機関の協力を受けて各国の対策強化を支援している。

同規則の採択と、2009年の豚インフルエンザ(H1N1)の発生を受けて、スイスは感染症に関する連邦法を改定し、13年に国民投票で可決された。スイス政府は、16年1月1日に発行したこの法律に則して現在の感染症対策を進めている。

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そして一歩ずつ前進している。新型コロナウイルスの流行で経済が大打撃を受けている今、全ての国がウイルスの検出・アラートシステムを備える必要がある。各国がそういったシステムを整備できれば、新型コロナウイルスのような感染症の拡大を阻止するためにもっと迅速な行動ができるだろう。

これは、消防署と同じことだ。ほとんど使用されていない署もあるが、火災の際にはいつでも出動できるように備えている。そのおかげで延焼を防ぐことができるのだ。

swissinfo.ch:システムの欠如は貧困国にのみ見られることですか?

プムロル:いや、資金はあっても、そういったシステムを整備し新たな感染症に備えるための十分な投資をしていない国もある。そのような国でウイルスが出現すると、世界中への拡散を食い止めることはほぼ不可能になる。感染拡大を鈍らせることはできても、止めることはできない。

swissinfo.ch:現状は「エピデミック(流行)」でしょうか「パンデミック(世界的大流行)」でしょうか?

プムロル:現時点ではまだ、ウイルスは各国内の大部分には広がっておらず、多くの国では大規模感染もない。だがそれが現実味を帯びてきている。パンデミックに向かっていると言えるだろう。

swissinfo.ch:大流行が続く期間を予測できますか?

プムロル:このウイルスはまだ未知の部分が多い。症状が出る前も他人に感染させる可能性があるのか?恐らくそうだ。では何日前から?無症状の人から感染することもあるのか?

致死率は2%と言われている。だが全データが出そろえば数字が修正される可能性はある。

中国では、12月末の発生確認から2カ月後に感染のピークを迎え、2月末から減少傾向にある。それも、5千万人もの人を隔離するという徹底的な措置が取られたからだが。

この措置がどれほど有効だったのか、他の国でも感染が2カ月でピークを迎え、停滞した後に減少するという経緯をたどるのかを知るにはまだ早すぎる。同じ経緯をたどるのであれば、欧州や北半球では5月か6月頃には落ち着くだろう。多くのウイルスは気温の上昇に耐えられない。

冬に向かう南半球では流行が続き、来年の冬にまた北半球に戻ってくる可能性もある。もちろんこれは仮定の話だが。

swissinfo.ch:では新型コロナウイルスが恒常的な感染症になりかねないということですか?

プムロル:その可能性はある。6~12カ月のうちにワクチンが開発され、重症化するリスクの高い人々の多くを守れるようになることを願っている。


(仏語からの翻訳:由比かおり)

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