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アルプスの山では見られないスイスの宝を求めて

ムール貝の形が目を引く交番は、チューリヒから電車で1時間、ザンクトガレンの街の名物である。スペイン人の建築家、サンティアゴ・カラトラバ氏の設計によるものだ。 swiss-image.ch

このたび、スイス観光局は「様々なスイスの芸術と建築を発見しよう」キャンペーンを新たに打ち出した。

2年間続くこの「芸術と美術」キャンペーンで、更なる観光客の増加を目指している。   

このキャンペーンは、スイスの26の町や都市を通して、スイスの様々な芸術と建築を世界の人々に知ってもらおうとする試みだ。また、スイスがいかに伝統と近代化をバランス良く組み合わせて来たか、ということを観光客に紹介する形にもなっている。

 ザンクトガレン州のバロック様式の大聖堂から、近代的な建築物まで、アルプスの山以外にも、スイスの宝は盛りだくさんだ。スイスの近代建築で代表的なものは、イタリア語圏ティチーノ州の大理石のチャペル(マリオ・ボッタ氏設計)やルツェルン文化・会議センター(ジャン・ヌーヴェル氏設計)、バーゼル州のバイエラー財団美術館(レンゾ・ピアノ氏設計)などが挙げられる。

 特にこのバイエラー財団美術館は、建築手法が芸術的で、宝石のように美しいと評されている。バーゼル市はチューリヒやジュネーブのように世界的な観光地というわけではないが、当地は非常に文化的に豊かな所であり、「果てしなく豊かな文化の街」という標語を掲げている。                                                                                                                                      

スイス観光局が人気テーマ別ツアーを発表

 今回のスイス観光局が打ち出した「スイスの芸術と建築を発見しよう」キャンペーンは、「スイスのおいしいものとワイン」、「贅沢とデザイン」に続く、テーマ別ツアーの第3弾である。過去に実施された第1弾、第2弾は大きな成功を収めた。

 スイス観光局のユルク・シュミット局長は次のように語る。「今回のように、スイス観光局とスイスの全ての地域が協力して、ハイライトの場所や知られざる歴史的建物を皆さんに紹介するのは初めての試みです。さらにこのコラボレーション(共同作業)には、芸術の専門家も参加しています。また、スイスにはあまりにも沢山、すばらしい建築物があるので、全部を網羅することができませんでした。今回私たちは都市の建築物のみ対象にしましたが、当然アルプスの地域にも素晴らしいものが見られます」

古いものと新しいものの共存

 スイスの建築デザイン雑誌「ホッホパルテール(Hochparterre)」のコービ・ガンデンバイン編集長によると、今回のテーマに沿って観光客がスイスの建物を廻っていくと、建築と芸術の新旧がバランス良く溶け合っていることを目にすることができる。例えば、イタリア語圏ベリンツォーナの中世の城、カステルグランデは、1980年代にスイスの建築家アウレリオ・フェッティ氏によって見事に改築された。

 「スイスは心を砕いて古い建築物を保護し、一方でこれを上手に生かしている好例を沢山持っている。伝統と近代のハーモニーというのがスイスの目標である」と同編集長は語る。また、彼がスイスの建築の魅力ある特徴として強調したのは、典型的なスイス建築というものは存在せず、形式はいつもバラエティに富んでいる、という事だ。

テーマ別ツアーの高まる人気

 前述のスイス観光局・シュミット局長によると、このようにテーマを絞ったツアーの人気は毎年高まっており、観光客は休暇の内容をそれぞれの興味や趣味に応じて選んでいる。「彼らは観光ガイドに載っているすべての場所を訪れるよりも、いくつかのテーマに沿った観光地を選択したいのです。まさにこれが私たちのツアーガイドブックのゴールです。つまり“単なるガイドブックではなく、お客様のインスピレーションの源泉となるべし”」

 「私たちは、どれだけスイスという国が素晴らしい芸術や建築物を持っているか、ぜひ紹介したいのです。アルプスは有名ですが、このような分野は観光地としてあまり知られていませんから」と、シュミット局長は語る。スイス観光局のターゲットは教養ある女性客である。具体的には55歳以上の女性客とアジアからの観光客の増加を期待している。


swissinfo カタリン・フェケーテ  遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

‐スイス観光局、「芸術と建築」キャンペーン開始。これまで行ったテーマ別ツアーの第3弾。

‐スイスへの観光誘致を目的とした2年間の対外キャンペーン。

‐スイス国内には980もの美術館がある。

‐スイス観光局は、スイスの各地方の特色や芸術に関し、観光客が興味を持ってくれる事を期待している。 

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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