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ディズニー、スイスに協力要請 

コンピューターの「魔法」がアニメーションを生き返らせる

ミッキー・マウスやドナルド・ダックで名を馳せた映画製作会社ディズニーは、複雑な技術を駆使する次世代のアニメーション製作を目指し、2つの新しい研究所の創設を発表した。その1つが、アメリカ国外では初めてのチューリヒ連邦工科大学内の「ディズニー・リサーチ」だ。

これで、多くのノーベル賞に輝く同工科大学が行う国際的ジョイントリサーチは、IBMとのナノテク研究協力に次ぎ、2つ目となった。

世界的レベルの革新的技術者の協力

 「複雑な技術を駆使する次世代のアニメーション製作には、長期的視野と世界的レベルの革新的技術者の協力が必要だ」
 と「ディズニー・アンド・ピクサール・アニメーション・スタジオ ( Diseny and Pixar Animation Studio ) 」のエッド・カタムル会長は「チューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) 」に協力を依頼した理由を語った。
 
 10月からスタートする、連邦工科大学内の「ディズニー・リサーチ (Diseny Research ) 」で、ディズニー側と同大学は、コンピューターグラフィックスとアニメーションの分野で専門知識を保持するリーダー格としてお互いの経験を共有することになる。
 
 具体的には、コンピューターアニメーション、コンピューター映像技術、ロボット操作などの研究を、連邦工科大学内の3部門、コンピューターグラフィックス、ビジュアルコンピューティング、コンピューター科学と連携しながら進めていく。

 ジョイントリサーチは、基本の共同研究のみならず、博士号のジョイントプロジェクト、ディズニー側から派遣される上級研究者の授業、連邦工科大学が出す研究成果のパテントの共有など多分野に及び、お互いが得る成果は多大なものになるという。

次世代の映像技術も開発

 「共同研究は、伝統的アニメーションや3Dコンピューターアニメーションの両方を次世代のレベルにもっていこうというもの。人間の手による芸術的なデータがコンピューターによる製作のためにいかに使えるかを研究することになる」
 と、連邦工科大学のコンピューターグラフィックスの部長とディズニー・リサーチ所長を兼ねるマルクス・グロス教授は説明した。

 「さらに、次世代の映像技術も開発しようと考えている。リサーチもその展開も探索中で、ほかの研究分野がジョイントする可能性も大いにある」
 と言う。連邦工科大学の学生がアメリカのディズニー本社に行って研究することも考えられている。

 ディズニー・リサーチでは、教授、博士号取得の学生やコンサルタント、ディズニー本社からの技術者など、およそ20人が人工知能 ( AI ) などのさまざまな分野で小グループに分かれ働くことになる。

 「ジョイントすることで、すべての研究参加者が潜在的な可能性を伸ばすことができる。また、ディズニーのヨーロッパの基点として選ばれたことは、ビジュアルコンピューティングやコンピューター科学におけるチューリヒ連邦工科大学の世界的評価の再確認にもなった」
 とディズニー・リサーチの副所長になるペーター・チェン氏は喜ぶ。

 10月から、5カ年計画で進められる同ジョイント研究の予算は、今のところ明らかにされていない。

swissinfo、マシュー・アレン 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

ディズニーは、複雑な技術を駆使する次世代のアニメーション製作を目指し、2つの新しい研究所の創設を発表。その1つが、チューリヒ連邦工科大学内の「ディズニー・リサーチ ( Diseny and Pixar Animation Studio ) 」で、もう1つはアメリカのピッツバーグにある「カーネギー・メロン大学 ( Carnegie Mellon University) 」内。

チューリヒ連邦工科大学内のディズニー・リサーチはメインキャンバス内に10月からオープンする。

ウォルト・ディズニーは、世界的規模のフィルムスタジオの1つで、1937年の「白雪姫と7人の小人」などの古典的作品から1994年の「ライオンキング」などに至るまで、多くの作品を世に送り続けている。

ウォルト・ディズニーは2007年の総収入を380億フラン ( 約3兆8000億円 ) 計上し、世界中に13万7000人のスタッフを抱えている。

チューリヒ連邦工科大学は1855年に創設された、科学技術に関するリサーチと教育に当たる工科大学。2007年の学生数は1万4000人 ( 2006年より500人増 ) で、16の学科に368人の教授陣を抱えている。トータルで21のノーベル賞が同大学の研究者や研究に対して授与されている。

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