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ローザンヌ国際バレエコンクール 日本人の受賞者はなし

「今日はとても楽しく踊れました」賞は逸したが微笑みながらインタビューに応えた門沙也香さん。 Shunki Ogawa

ローザンヌ市で23日から8日間にわたって開催された「ローザンヌ国際バレエコンクール」で日本から参加した36人のうち、門沙也香(かどさやか)さんと木本全優(きもとまさゆ)さんは決勝まで進んだが、惜しくも賞は逃した。

コンクールの主旨は、若いアマチュアのダンサーを育成すること。準決勝での審査はクラシック、コンテンポラリー、フリーの3つのバリエーションについてそれそれぞれ4、4、2の割合で点数を付け、決勝ではこの3つを総括して見る。

世界の一流のバレエ学校へ授業料免除で1年間留学できる上、生活援助費として16,000フラン(約140万円)が与えられる「スカラシップ賞」を受賞したのは、韓国のキム・ユウジンさん(16歳)、ウクライナのヌディ・ジェルリンさん(17歳)、韓国のハン・ソーヘさん(16歳)、アルメニアのカレン・アザチャンさん(17歳)、フランスの・ゲゼー・アドリヌさん(16歳)だった。  
「プロ研修賞」は韓国のワン・ジニャンさん(17歳)が受賞した。プロ研修賞は欧米、カナダなどの一流バレエ団の活動に研修生として1年間参加でき、同じく16,000フランが与えられる。 

海外に羽ばたく若いダンサーたち

 コンクールへは例年、日本から多くのダンサーが参加し、高い評価を受けている。本年も日本人7人を含む26人が準決勝に進んだが、決勝まで進んだ日本人は男女それぞれ1人に留まった。しかし、受賞はなかった。一方、国立バレエ団を持ち、国を挙げてバレエを支援する韓国からのダンサーたちの感情表現の成熟ぶりは特に本年目を見張るものがあった。

 門沙也香さん(17歳 東京出身 渡辺郁子バレエスクール)は、クラシックで「眠れる森の美女」のオーロラ姫、コンテンポラリーで「Snakesense」、(レジナ・ファン・ベルケル振り付け)、フリーで「Inner Layer」(ハルバート・キミホ振り付け)を踊った。「賞は逃しましたが、絶対外国のバレエ学校へ行きたい」という門さん。すでに2、3校からの誘いを受けているのでじっくり考えたいという。フリーバリエーションで振り付けを担当した、ハルバート・キミホさんは、「すべてにおいて誠実で気持ちが真っ白な門さんの魅力を引き出せるような振り付けを考えた」という。

 3歳の時から踊っている木本全優さん(17歳 姫路市出身 仏国立パリ・コンセルバトワール)は、クラシックで「ラ・シルフィード」のジェームスを、コンテンポラリーで「July」(ケイス・デリック・ランドルフ振り付け)、フリーで黒沢明監督の映画「7人のサムライ」を思い起こさせる「8人目のサムライ」(Le Huitième Samuraï)(ジョセリン・ボッサー振り付け)を踊った。裾の長い着物をまとって踊るフリーは、「衣装に負けず力強さを出すように心がけたつもり」と言う。昨年9月から自費でパリ・コンセルバトワールで学んでいるが、「(パリでの)環境は日本とは違うことを感じます」と語る木本さん。日本とは違うレッスンを受けてきたことが、コンクールでも役立ったという。

過渡期にあるローザンヌのコンクール

 25年前にローザンヌ・コンクールを広める目的で創設された日本事業部は、本年4月で閉鎖される。コンクールに参加を希望するダンサーは、来年からは直接ローザンヌの事務局に申し込むようになる。これのほど多くの日本人の参加者、受賞者を出したことから当初の目的は達成された。「いまやインターネットの時代。コンクールの情報はたやすく手に入るようになった」と日本事業部の山田博子氏は、参加者が来年から急激に減少するといった懸念はないと言う。

 これまで、コンクールに参加したい人は、200フラン(約1万8,000円)の参加費と旅費、宿泊費を払えば、誰でも参加できる上、世界一流の先生の指導を受けることができた。しかし、来年からはまずビデオによる審査で、80人まで絞込まれることになった。また、コンテンポラリーのバリエーションでは、与えられた1曲をコンクールの期間中に初めて、振り付け師から直に指導を受け、踊りを現地で一から完成させ、審査を受けるようになる。参加の方法や審査が変化する来年だが、日本から参加するダンサーに期待を寄せたい。

swissinfo 佐藤夕美 (さとうゆうみ) ローザンヌにて

第33回ローザンヌ国際バレエコンクール
05年1月23日から30日まで
参加資格 アマチュアで15歳から17歳まで
世界28カ国から100人以上が参加。
日本からは女子30人、男子6人が参加。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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